220話 ゾンビとは②
茨城の洞窟拠点と病院拠点で、全員を集めて清掃をかけていった。その後に道内の各拠点でも同じように。しかし外の避難民までは手が回らない。今は先送りだ。スマン。
自衛隊のサンバ達にもリアルタイムに状況を連絡してあるそうだ。まずは稚内、千歳、それとカンさんの旭川でも同じように清掃をかけた。
さすがの俺もMP枯渇で途中休みながらだ。
自衛隊のチョーカンとショーグンから、駐屯地もお願いしたいとの要望が来た。もちろん深く深く頭を下げてお願いされた。
日本の防衛の偉い人にここまで頭を下げられたらやらないわけがない。チョロいと思われたかもしれないが、俺は自分のためにやった。
自衛隊がゾンビ化せずにいてくれた方が色々と頑張ってもらえるからだ。北海道のため、苫小牧のため、俺らの拠点のため、俺らの仲間のためにも感染せずにいてほしい。
「はーい、並んでくださーい。部屋に入れるだけつめてください。清掃しますよー」
うーん、ギッチギチの漢くさい部屋になった。ゾンビ臭いよりはマシだ。
そうしている間にカンさんが6基目を作り終えた。
俺たちはそれを持って、福島へ向かう。今度は茨城から南へ上がっていく。
設置が終わった。
そして、茨城と北海道が無事に繋がった!
俺たちは自分の拠点へと戻った。苫小牧拠点のゲーム部屋が大盛況だ。
皆が待ちに待っていたようだった。
春ちゃんや良治はもちろん、子供達もわいわい言いながらゲームをやっている。
カセ達や、新しく来たカイホさんらもだ。拠点に来た他のメンバー達も。
とりあえず、『ハケンの砂漠』の血盟員を充実させる。1〜5班の追加メンバー達から血盟加入の申請が来たので了承をした。
前もって名簿をキヨカが用意してくれたので間違える事はなかった。
どの班もエルフのレベル上げが凄い。
一応レベル45を超えたらセカンドキャラの作成を許可している。セカンドからは好きなクラスを選ぶ。
キッズ班のレベル上げがエグい。大人よりも速いんじゃないか?流石、生まれた時からスマホがある世代だ。
操作が速すぎて見ているとなんか悲しくなる……。いいさ。
それに比べて大人は……。良治や芳樹は息子(孫)に聞いて教わっている。春ちゃんは何でそんなにスラスラとやってるんだ?春ちゃん、やはり異世界転移してたんじゃないか?
目があったらニヤリと笑われた。やはり何か秘密が……。
他の拠点も似たり寄ったりで、まずは仲間達のゲームの充実を行なっているようで、マス鯖が賑わっていた。
ゲームの最盛期には、ゲーム内の全体チャットで物の売り買いも盛んに行われていた。
自分が使わないアイテムを売り、現金にして必要な物を買う、と行った感じだ。
しかし現在はチャットでの売買は全くと言っていいくらい行われていなかった。
「皆さんアイテムは持ったままなんですよ。リアルステータスが出た時にもしかして自分のアイテムボックスに入っているかも知れない、そう考えているみたいですよ」
タウさんに聞いたらそう言われた。
実際にリアルステータスが出た人は皆、アイテムボックスは空っぽだったんだがな。
だが、夢を見たい気持ちもわかる。
でもなぁ、俺は神様はそこまでアフターフォローはしてくれないと思ってる。異世界戻りの転移の際にアイテムボックスに物が入ってた、あれが神様の最後の大サービスな気がする。
だが夢を見てる者達に無理に売買はさせられない。
しかし単騎が出来ないウィズは消耗品で稼いでチャット売買で欲しい物を入手するしかないんだ。
自分で欲しいアイテムを入手するために敵を倒すなど無理なのだ。
前にパラさんともその話をした事がある。その時にパラさんが言ってた言葉が忘れられない。
「ウィズはレベル90超えるのも無理ゲーだし、仮に頑張って越えても、結局MPの関係で単騎は無理だからな。LAFじゃ要らん職だよな」
ずっと忘れられない『ウィズは要らん職』。あのゲームを結局5年でやめたのも、それが原因だ。ウィズは必要とされないゲーム。
ただ、異世界でもこっちに戻った現在でも、本当にウィズで良かったと思っている。自分にあった職、LAFでは要らなくても、今は周りから必要としてもらえる。
だから俺もゲームでウィズのレベル上げをしようと思ったのだが、やはりキツイなぁ。
現在の俺のウィズはレベル58だ。レベル58のウィズを必要としてくれるパーティはない。
45を目指しているエルフ軍団にウィズは不要なのだ。
何となくだが、そのうち45を超えたみんなに俺は気がついたら抜かされている気がする。
でもさ、ふと思ったんだが、リアルステータスにはレベルとか出てないじゃんか?
ゲームでレベル上げをしてもリアルに反映するのか?
異世界転移した時に、レベル90超えだったタウさんやパラさんは強かった。
それは転移の元情報とした時点のデータがソレだったからな。
でも、その後はどうだろう。
俺、パラさんらとよくダンジョンに潜ってたけど、レベル上がったか?経験値増えたか?
パソコンゲームじゃないんだから、それは見えなかった。目にも目なかったし、感じたりもしなかった。
ええと、レベルアップした時のエフェクトとかも無かったからな。
確かに狩りに慣れたとかダンジョンで同じ種類の敵は簡単に倒せるようになった。でもそれは『経験値』ではなく『経験』だよな。
今、この世界へ戻って、ここでは魔物が居る森もダンジョンもない。狩りにも行かない。経験値どころか経験も積めていないよな。
ゾンビだって『モンスター』よりも『ウイルス』だもんな。
『ゲーム』を推奨するのは、俺ら異世界戻りの血盟に加入する事でリアルステータスが表示される可能性が高いからだ。
ただゲームをするだけでは、もしかしたらいつかは出るのかもしれないが、今のところ聞いた事はない。
タウさんが『レベル上げ』を推奨するのは、選んだ職のスキルが使えるようなる事を考えてだ。
しかし未だにリアルでスキルが発生した者はいない。俺らの身内でレベル45になったウィズでも未だに魔法は使えないままなのだ。
けれどエントの件もある。ゲームが全てに無関係とは言い切れない。エルフでいる事でエントの恩恵も受けられるのだ。
それを考えると、やはりゲームからの恩恵はあるのだ。
いや、だからね、俺がなにをグチグチ言ってるかってぇと、使わない物は全チャで売ってくれよう。
ウィズがアイテムを入手するの、本当に大変なんだからね!
「父さん、一緒に狩りに行こう?」
「香、僕も一緒に行くよ」
「カオさん、私も行きますから。ウィズ2、エルフ1、ナイト1、バランス良いですね」
あれ、俺また心の声が出ちゃってた?
「カオさん、俺らもうすぐエルフ45になりますから待っててください! いや、今は先に行っててください。明日中には!」
カセ君らにも聞こえちゃったか。
「香、どこに行きたいの?」
「飽満の塔なんだけど、レベル40〜50台だと難しいかな」
「塔の何階?飽満って100階あるね」
「レベル高そうですね」
「うん、あ、でも飽満2階はギリ大丈夫かな。俺、鉄ゴレからミスリル獲りたいんだよ」
「飽満2階か……なるほど。最奥のゴレ湧き狙いか」
春ちゃんはタブレットで何かを確認していた。まさか、攻略サイトとかあるんか?
「お父さん、ミスリルで何をするの?」
「矢を作る。ミスリル矢だ。エルフの皆のレベルが上がったらミスリル矢が売れる。けど、今手持ちにミスリルがほぼ無いんだ。ひとりで飽満に行くと2階とはいえあっという間に死ぬからな」
あ、俺、真剣にゲームを楽しもうとしてた。スマン、皆はリアステのためのレベル上げだったか。
やめようと言おうとしたが、マルクもキヨカも春ちゃんも楽しそうだったので、そのまま行く事にした。
「みんな、帰還スクは持ったか? 死んだらだめだ、経験値が減る。窮地に陥ったら即帰還だ。誰かを助けようとして死なない事。全員が自分を守れば誰も死なない、いいな?」
「「「はーい」」」
俺たちは飽満の塔へ向かった。あ、勿論ゲーム内でだ。




