215話 洞窟で①
ハケンの砂漠の拠点である苫小牧港拠点の内側の湾は、今盛り上がっている。あ、地面が盛り上がっているのではない。皆の気持ちがハイ状態だ。
新メンバーのカイホさんらの要望で、結構な数の船を湾内に浮かべている。
1番大きなものは豪華客船だ。カイホさんらの話によると、災害直前に横浜港あたりに停泊していたのではないか、と言う話だ。
あまりに大きいので、うちの湾から海へ出る通路は通れない。なので、湾の最奥に停めて拠点の一部として使おうと言う話になった。
船内の点検はカイホさんらが行ってくれるそうだが、もっと人手が欲しいと言う。
現在、ハケンの砂漠のメンバーは盟主の俺、血盟員にマルク、キヨカ、翔太、洸太、カセ、ナラ、クマ、河島、ウカワ、他カイホさん5名で合計15人。
おっと、そうだ、親戚のみんなも居た。と言っても拠点に来た全員が『ハケン』に入ったわけではない。とりあえずゲームでエルフ作成をしてもらったが、良治達の奥さん達は血盟に加入はしていない。そこまでゲームに力は入れていないようだ。雪姉さん一家もだ。
血盟に加入済みなのは、春ちゃん、良治、芳樹、尚樹、朝陽、湊斗の6人だ。
血盟の人数は50名がマックスだ。まだ29人分の空きはある。
しかし俺はコミュ症…まではいかなくとも、あまり社交的ではない。本来は『盟主』なんてものに不向きなのはわかっている。
50名マックスにすべきなのはわかってるが、知らない奴が沢山居るのもなぁ。リアルステータスを表示させるためにも『血盟』は足掛かり的な通り道ではあるのだが、どうしたもんか。
でもなー。仕切れないよなー。うーん。
…………!良い事思いついたぞ。
班を作ろう。俺が学級委員だとして、各班の班長に班員をまとめてもらおう!
学級委員長:俺
副委員長:マルク、キヨカ
1班班長:カセ
2班班長:クマ
3班班長:ナラ
4班班長:河島
5班班長:ウカワ
キッズ班:翔太、洸太、朝陽、湊斗
親戚班:春ちゃん、良治、芳樹、尚樹
新しく入ったカイホさん5名は4班の河島の下に付けよう。
早速、会議室に皆を集めてこの話をした。皆、賛成してくれた。
「各班長は自分の班の班員を適宜増やしてくれ」
「班員の人数制限はありますか?」
「そうだな、5名程度を目処にしてくれ。絶対にではない。越える時は班長間で話し合いだな」
「班員はゲームでもハケンの砂漠に限定しましょう。その方が混乱しなくていい」
「ゲームで血盟未加入や他の血盟員はこの拠点には入れないと言う事でしょうか?」
「いや、そんな事はない。拠点内の個室が空いている限りになるが、この拠点に家族や友人知人をよんでくれてかまわない。ただ、拠点の運営に関わるのは1〜5班がメインになる」
「では、班の下に、セカンドチーム、サードチームを作り、作業に参加してもらうのはありですか?」
「もちろんだ」
「ファーストの班員でもステータスが表示されたらセカンド、サードと交代していこう。ステータス持ちを増やしていきたいですね」
皆がどんどんと意見を出してくれてありがたい。キヨカがホワイトボードへ記入し、マルクはパソコンへ入力していた。
「拠点のメンバーは今後も充実させていくとして、移動手段も考えていきたい」
「この拠点が港型なのもあるので船が充実していますが、地上の乗り物もそれなりに欲しいですね」
そう言ったカセが俺をジッと見つめた。う、うん。わかってるぞ。車だな。
湾内には大型の客船の他、フェリーやボートも並んで(浮いて)いた。
港型拠点のタウさんとゆうごにも、幾つか船を選んでもらい渡してある。(動くのかどうかは俺は知らん)
この拠点の1階は地上にあり、建物の前には広い駐車場もある。畑囲むようにエントも居る。
カセ達班長を連れて1階へ行き、駐車場に車やバイクを出した。タウさんらにも連絡をしておいたので、駐車場には他の拠点からタウさん、ミレさんのふたりが来ていた。
カンさんは自室で作業中だ。
アネからは欲しい車種を言われて検索して『あった』場合に渡した。ゆうごはそこまで車にこだわりはなかったようで、バス系を所望した。流石にバスの運転手までは俺のアイテムボックスに入っていない。
タウさん、ミレさん、カセとクマに言われるがままに検索をかけてアイテムボックスから次々と出して行く。
まずは『壊れていない』や『ガソリンの入った』を頭に付けての検索だ。
出した物で欲しい人が被った場合はジャンケンで決めてもらう。あとは勝手にやりとりしてくれ。
「タウさん、前に言ってたガレージセールはいつやるんだ?セールつーか、ゴミを出したいんだよな」
「ゴミ……壊れている、や、ガソリンの無いものですね」
「うん、車に限らず、津波初日にゴミを拾いまくったからなぁ」
「そうですねぇ。やりたいのは山々ですが、もう少し時間をください。今は必要な物を分けていただいています。それにまだ各拠点の整理や人材確保でごたついています。各拠点が落ち着いたら、西へ向かう予定です。小型基地の配置がある程度済んだあたりで出来たらやりたいですね」
「寒中水泳はいつやるんだ?」
「フジさんのリングですね。もう終わりました」
うえぇぇぇっ?いつ?いつ行ったの?知らんかったぞ?
「フジさん、サンバさん、ミレさんと私の4人で、人魚の涙の検証に行ったところ結構潜れる事がわかりまして、それでそのまま潜水艦まで行ってみました。フジさんに場所の特定はしていただいていたので、サクっと潜りました」
サクっとって、凄いぞ、それ。
だってこのどんよりした冬の海、きっと暗かっただろうに。サメとかクジラとかシャチとかマグロとかイカと……大王イカが居たかもしれん。それにゾンビ魚…ゾンビぎょ?とかクラーケンも、あぁ!ゲームだと巨大なカニとか居たな。
そんな海によく潜ったな。……海パン一丁で?
「カオるーん、海パンでは潜らないぞ? ちゃんと潜水服は着たからな。それとクラーケンもカニも出なかった」
「沈んでいた艦内へはフジさんの案内で入りました。潜る前にリングを何処にしまっただろうか、どこから探すかなど色々と話し合いまして、とりあえず一回艦内へ入ってみようと言う事で穴のあいた所から入りました」
指輪探し……確かに大変そうだな。指輪という小さいモノが潜水艦のどこにあるのか、見つけ出すのに苦労しそうだ。
船長室とか、あ、上官って船長だったのか?上官の居た個室のベッド横の引き出し……とかか?
「リングの発見は簡単でした」
タウさんが下を向いて少しだけ悲しいような顔をした。
「指に付けていたんです。操縦席に座って亡くなられていました。
「捜してたフジの上官がさ、潜水艦の操縦席に座ったまま亡くなってた。その指にさ、リングがはまってた」
「え……リアルステータス無い人だったんだよな?」
「そうですね。最後まで、それが使える事を願ったのか、それとも誰かが探しに来た時に見つけやすいようにしたのか。今となってはわかりません」
そうか……。その上官は本当にフジからリングをただ『借りた』だけだったのかもしれない。そうだといい。
そして最後まで、返そうとしたのかも知れない、そう思いたい。
「フジ達は顔に出さないようにしていたけど、ショックを受けてたな。一度はリングをがめられたって思っちまったからな」
「それでカオるん、フジさんから人魚の鱗をお返しいただいたのですが……」
「ああ、ソレ、タウさんが持っててくれ。そんで必要な時に必要な人に渡してほしい」
タウさんがにっこりと微笑んだ。
「ええ、カオるんならそう仰ると思っていました。預からせていただきます」
「おねっしゃす」




