167話 ホワイトですから③
新発田の駐屯地へ向かったサンバ達と別れた。
元の計画では、ここ新潟のクマの実家を訪ねる予定だった。しかし現在クマは茨城の第2拠点である病院に妻子と共にいる。
どうするか。
「大まかに聞いていた辺りまで行きブックマークをしておきましょうか」
「そうだな、本人が居ないのに実家を訪ねてもな。そんでその後は群馬のカセの実家へ向かおう」
俺はエリアテレポートで群馬のブックマークポイントへと飛んだ。
ここからはカセの地元と言う事で、完全にカセ任せで進んだ。車もランドローバー5人乗りに替えた。今はカセ、ナラ、キヨカ、マルク、俺の5人だからな。小さい方が小回りがきいて良いらしい。あ、でもあまりバウンドさせないでくださいー。俺、吐くからね?
カセに家族の事を尋ねた。両親が住んでいる家。すぐ近所に兄一家。兄、兄嫁、子供3人。
それから車で30分の場所に祖父母、その敷地内に叔父一家。
嫁に行った姉貴は隣の市だそうだ。こちらも車で3〜40分。
「何かある度に親戚一同がお互い行ったり来たり、盆正月は祖父さんちに集まるなぁ。なんだかんだ今の時代でもあそこは田舎だからな」
家族や親戚が微妙に近い位置でバラけているな。
「ふむ。どうする?どこまで回る?」
「一応、無事が確認出来ればいいかなぁ。諦めていたからそれが出来れば充分です。近所付き合いが結構密な地域だし、うちだけ茨城に連れて行くのは嫌がるだろうな」
「第一目的としては無事の確認ですね」
「そうだな。それからブックマーク。それと何かあった時に駆けつけられるように連絡先の交換、まぁ、繋がるかわからんが」
「家族とか親戚の中にステータス出せる人いないの?念話出来る人がいればいいねぇ」
「俺がまだステータス出てないのに、実家の誰かが出来てたら俺が発狂するぜ」
「そうなの?加瀬さんまだなの? 毎日ステータスオープンって唱えてる?」
「やってるよ…あっ、今日はまだやってねぇ! ステーーータス!オーープーーン!」
ガッコンっ!
前のめった!
突然急ブレーキで車が止まったのだ。シートベルトをしていたが俺は助手席のシートに顔面を軽くぶつけた。慌てて真ん中に座っていたマルクを見たが大丈夫そうだった。
「何やってんだよ!加瀬ぇ、危ないじゃないかよ」
助手席のナラが運転席のカセに怒鳴った。だがカセは全く聞いていないようにハンドルを握りしめた手がブルブルと震えていた。
どうした!発作か?
「でででで……」
「で?」
「出たあああああああ」
何が?と思ったら助手席のナラも素っ頓狂な声をあげ出した。
「何だよ! 出たってまさか、まさか、アレかあ? ス、オ、オープちゃう、ステーーータス、オーープン! 俺も出たあああああああ」
えっ?えっ!ふたりともステータスが出たのか?
キヨカがクマにスマホで連絡をしたようだ。運良く繋がったようでクマも病院で試したようだ。何とクマから血盟念話が届いたのだ。
クマ、カセ、ナラもハケンの砂漠だからな。リアルステータスが出れば血盟欄からの念話やメールが使えるのだ。
「一瞬だが病院拠点へ戻るか。血盟は一緒だが念のためフレンド登録しておこう。それと拠点に置いてある個人の荷物で重要な物はアイテムボックスにしまっておけ。あるよな?アイテムボックス」
「ある!あります、アイテムボックス……これが夢にまで見たアイテムボックス!」
「だな〜。カラだけどな。あ、これ入れよう」
ナラは足元に置いてあった自分の荷物を入れていた。ブックマークも確認してもらった。ステータスが無い状態での最近のブックマークが表示されていたそうだ。
「やはりブックマークの方が先に実行可能なんだな。ステータス表示の方が遅い。理由は不明だが……」
「いつくらいからのブックマークが表示されていますか?」
「ええと、昨日……2〜3日前ってとこか。それ以前はない。おおう、カオさんの部屋も消えてる。結構前に仮ブクマしたから油断してた。あの仮ブクマは失敗してたのかぁ」
「とりあえず今日はもう戻るか。主要のブクマを済ませたいな」
「そうですね。加瀬さんの実家巡りと球磨さんの実家は後日にしましょうか」
「あ、カオさん、俺の実家もブックマークしたいです」
「おう、勿論だ。北海道の実家な」
俺たちは洞窟拠点へと戻った。クマの病室へ訪れる前にキヨカが主要なブックマーク先を書き出してくれた。
それを持ってクマ一家の元を訪れた。
病院拠点の『診察病棟』の2人部屋にクマ一家3人が入っていた。
2人部屋と言ってもそこそこ広い部屋で、ベッドをくっつけて3人で寝るそうだ。
ベッドの枕元には巨大なアアンパパンマンのぬいぐるみが座っている。邪魔そうだな。3人で寝られるのか?
診察病棟は一応定期的に往診もあり、何かあった時のナースコールもある。そこに1週間ほど入院をして特に問題がなければ第1拠点の洞窟へ移る予定だ。
息子くんはクマの膝に座っていた。懐かしい、ムゥナの街に居た頃を思い出した。俺もよくマルクを膝に抱っこしたっけ。
奥さんはまだ半信半疑のようだったが、アイテムボックスへの出し入れを目の前で見せたら、信じざるをえなくなったようだ。
俺らに深く頭を下げてお礼を言われた。
親子の団欒の邪魔をして申し訳ないが、主要な場所のブックマークをする話をした。
奥さんは頷くと息子君をクマの膝から抱き上げようとした。が、息子君は嫌がって余計にしっかりとクマに抱きついた。
そこで奥さんはベッドの頭元に置いてあったぬいぐるみをクマの横に並べた。
息子君は、アアンパパンマンを見て、クマを見て、アアンパパンマンへと直ぐに移っていった。
クマがアアンパパンマンに負けた瞬間だった。
ほら、クマコウ、床で項垂れていないでさっさと行くぞ?
「奥さん、すみません。1時間ほど旦那さんをお借りします」
奥さんは息子君を見た。息子君はアアンパパンマンの膝に座り機嫌が良さそうに歌っていた。
アアンアアン♪パパンパパン♪と歌っているのでアニメの主題歌なのだろう。
「どうぞ、1時間と言わずにうちの旦那を使ってやってください。出来れば夕飯頃に一度戻してもらえると有難いです」
カセが半泣きのクマを引き摺って病室を出た。キヨカは奥さんに、何かあったらドクターかナースに言えば連絡が取れると説明をしていた。
奥さんの許可が出たので(正確にはクマがアアンパパンマンに負けたので)、実家廻りの続きをする事にした。
しかし折角拠点に戻ったので、先にブックマークをする。
まずは病院及び洞窟、それから村の主要な場所、この地域のまだ取り切っていないショッピングモールなど、キヨカが選び出してくれたブックマークポイントだ。
トントンと進めて行く。次は茨城県内の主要な場所のブックマーク。
「カオさん、1時間の予定でしたので、県内のブックマークしか予定していませんでした。どうしますか?」
「まずは、実家廻りの続きをやっちまおう。他のブックマークポイントは、その後でもいいな」
そして俺たちは群馬へと飛んだ。




