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【書籍化決定】本の虫令嬢は幼馴染に夢中な婚約者に愛想を尽かす  作者: 初瀬 叶


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第44話

そんなつもりは無かったのだが、嬉しそうなフェリックス様に私は手を離す事を諦めた。


その間にも殿下とステファニー様の婚約解消劇は進んでいく。



「言い忘れていたが、今回の婚約解消に伴い新しい婚約が整った事を此処に知らせておこう。ミリアンヌ」


殿下が隣に居たミリアンヌ様の腰に手を回すと、会場に響き渡る声で言った。


「先程紹介したソーランダー帝国の皇女ミリアンヌが私の新しい婚約者だ。彼女は他国からの輿入れの為、慣れないことも多いと思うがここに居る者達とは歳も近い。是非仲良くしてやってくれ」



「ミリアンヌと申します。皆様、仲良くして下さいませね」


美しく微笑んだミリアンヌ様に男性陣の溜め息が漏れる。私はついフェリックス様の方を確認してしまった。

しかし、先程の鼻の下を伸ばした顔と打って変わって、今度は苦虫を噛み潰したような表情だ。


「こんな所で宣言して……。流石に陛下も頭を抱えそうだ」


「フェリックス様はこの事を事前に知らされておりましたの?」

私の問いにフェリックス様は緩く首を横に振った。


「はっきりと言われた訳ではないが、殿下がここに来ると言った瞬間、何か企んでいるのだろうとは思った。

婚約の事もはっきりと確認した訳じゃない。だが皇女の荷物の多さが輿入れのそれでな。それに、二人の様子を見ていれば、何となく感じるものはあったよ。二人の関係性をな」


鈍いと思われるフェリックス様に勘づかれるぐらいだ。きっとこの場よりイチャイチャしていたに違いない。


そんな雰囲気をぶち壊すかの様に、ステファニー様が叫んだ。


「どういう事です?!私は生まれてからずっと殿下の為に尽くしてきましたのに、こんな女に横から掻っ攫われなければならないのですか?!」


「『こんな女』か。流石に他国の王族や皇族に使って良い言葉かどうか分からないのか?」


ハッとしたステファニー様の顔色が変わる。

殿下は続けて言った。


「今のではっきりと分かったよ。やはり君を選ばなくて良かったと。感情に任せて礼節を重んじる事なく暴言を吐く様な女性は王妃に相応しくない」


しかし宰相も黙っていない。


「こんな場で馬鹿にされて、黙っていろと言う方が難しいに決まっているではないですか!!」


「こんな場だからダメなんだよ。貴族には感情を殺す事も時に必要だ。もう少し娘の躾を厳しくするべきだったな。まぁ、後悔しても時すでに遅し、だ。ステファニーとの婚約解消並びにミリアンヌとの婚約成立の書類は全て承認された」


「こちらの都合を無視してですか?!」

宰相も相手が殿下であっても黙っていられない様だ。言葉もどんどんと荒くなっていった。



「王族の良くない所だが……正直に言おう。国の為と考えるなら、ミリアンヌとの結婚が一番メリットがある。それ以上のメリットをステファニーとの結婚に提示出来るかな?出来るなら教えて欲しいんだが?」


王族の結婚。これは国が栄える為のものであるべきだ。

他国との結びつきを強固にする為の婚姻は今までの歴史の中でも何回も行われてきたものだが、ここ数代は国内のご令嬢との婚姻ばかりだった。


王太子殿下がお生まれになった時にも『他国の王女との婚姻を』という声があったと父が言っていた事を覚えている。結局はステファニー様が婚約者に決まったのだが、それはアンダーソン公爵の力が大きかった事は周知の事実だ。


「グヌヌ……」

宰相の歯ぎしりが聞こえてきそうだ。それほどソーランダー帝国との婚姻関係はメリットが大きいという事の現れだろう。



「フェリックス様……このままステファニー様は婚約解消されてしまうのでしょうか?」


ほんの少しだけステファニー様が不憫に感じられて、私は思わずそう尋ねていた。


「あぁ。そうなるだろうな。手続きは済んでいる様だし、ここでステファニーがいくら嫌だと言っても、結論が変わる事はないだろう」


「そうですよね……」


「お前が暗くなる必要はないだろう?言っておくが、お前に『婚約解消して貰っても良い』と言われた時の俺の気持ちも今のステファニーと同じ、絶望に近かったからな!」


「その節は……申し訳ありません」


「いや……お前を蔑ろにした俺のせいだ」


「フェリックス様……」



「何、二人の世界に浸っているのよ」

私とフェリックス様が見つめ合っていると、頭上から呆れたような声が降ってきた。


「アイーダ様!」

「ジェフリー殿!」


思わず私達は握り合っていた手をパッと離す。

つい二人して赤面してしまった。



「大変な事になったね」

ジェフリー様は難しい顔をしていた。


「ステファニー様には正直『ざまぁみろ』としか思わないけど、これからどうなるのかしら?」


素直に口にするアイーダ様にジェフリー様は苦笑いだ。


「ソーランダー帝国に実は皇太子は居ない。第一皇女が帝国を継ぐ様になると言われている。そう考えると、帝国との繋がりは強固になるし、属国になり下がる事もないミリアンヌ様は適役だ。ステファニー嬢に勝ち目はないな」


ジェフリー様の言葉にフェリックス様も頷いた。


「婚約解消は回避できない。……加担していた様で少し心苦しいけどな」


フェリックス様の言葉に、


「フェリックス殿がステファニー嬢の側に居たのはそういう理由か」

とジェフリー様は納得がいった表情だ。


「だからと言ってマーガレットを蔑ろにした事は許せないけど」

アイーダ様は腕を組んでフェリックス様を睨んだ。


「そ、それは……反省している」

大きな体のフェリックス様が小さくなっている。


「反省なさいな!マーガレットを幸せにしなきゃ一生許さないから!」


「大丈夫だ。幸せにする」


そんなアイーダ様とフェリックス様との会話を見守っていると、



「今日はもう失礼する!!ステファニー、来なさい!!」

という宰相の大きな声が聞こえた。


一瞬忘れていたが、私達はまた殿下達の方を見る。宰相がステファニー様の手を引いて、会場を後にしようとする所だった。


「流石にもうここには居づらいわよね」

そのアイーダ様の言葉に私達は同時に頷いた。

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