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【書籍化決定】本の虫令嬢は幼馴染に夢中な婚約者に愛想を尽かす  作者: 初瀬 叶


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第10話

「気にせず楽しもう」


私の気分が顔に出ていたのだろうか?デービス様はそう言うと、


「さぁ、もうすぐ入場だよ。はい」

と私に腕を差し出す。私は笑顔に戻ってその腕をとった。


会場は幾つものシャンデリアに彩られ、さすが王宮といった感じで全ての調度品が豪華だった。


父と数回夜会には参加したが、今日の方が全てがキラキラして見える。

気分が違えば見える景色も違って見える……という事の様だ。


今回は若者中心の為、陛下と妃陛下は簡単な挨拶のあと、席を立った。

本当なら、王太子殿下と婚約者であるステファニー様が中心となってこの夜会を盛り上げるのだろうが、殿下は不在。そして、その婚約者は遅れてくるらしい。しかも別の男にエスコートされて。


陛下が立ち上がったのを合図に演奏が始まり、アイーダ様とジェフリー様がフロアの真ん中に出て踊り始めた。


「わぁ……素敵ですね」

「さすが公爵家のお二人だ。皆の視線を独り占めだね」


二人は息の合ったダンスで、皆を魅了した。

そして、それに倣う様に皆も踊り始める。


「メグ、ダンスは得意?」


「得意……ではありませんが、人並み程度には」


私がそう答えると、デービス様は手を差し出した。私はその手に自分の手を重ねると、二人してフロアへと向かった。


皆が次々に踊り、フロアにはドレスの花が咲く。

皆の笑顔に私も同じ様に笑顔になった。久しぶりのダンスに少し息が上がるのは、運動不足だからかそれとも高揚した気分のせいか。

盛り上がりも最高潮になったその時、会場の扉が大きく開かれた。


「皆様、お待たせいたしました。あら……もう始まってましたの?」

とステファニー様が現れた。エスコートするのはもちろんフェリックス様。


皆はダンスの足を止め、二人に注目した。一瞬シン……となった後にステファニー様が通れる様、左右に分かれて道を空けた。


ステファニー様はそこを当然の様に堂々と歩いて中央へと向かう。フェリックス様は真っ直ぐ前を向いたまま、ステファニー様をエスコートする……というより、連れられる様にして一緒に前へと進み出た。


ステファニー様が目指すのは中央に居るアイーダ様達の場所だ。


「ご機嫌よう、アイーダ様。私が遅くなってしまったせいで、お二人にお任せしてしまってごめんなさいね」


「ステファニー様、別に貴女の代わりに最初に踊った訳ではないわ。貴女が王族なのであれば話は別だけど」


傍から見ればアイーダ様の雰囲気も相まって、彼女が喧嘩を売っている様に見えるかもしれないが、先日ステファニー様の裏の顔を少しだけ覗いてしまった私には、最初のステファニー様の言葉の方が引っかかる。

二人はお互い笑顔なのだが、火花が散っている様に見えるのは私の気の所為だろうか?


そこでフッと空気を変える様にジェフリー様が口を開いた。


「ステファニー嬢、ちょうど良かったよ。僕達も少し踊り疲れていた所だ。アイーダ、喉が渇かないかい?少し休む良い機会だよ」


ジェフリー様の柔らかな声にアイーダ様も表情を緩める。


「そうね。喉も渇いたし休みましょうか?それにここは少し暑いわ」


「バルコニーに出て夜風にあたろう。じゃあ、僕達は失礼するよ。後はよろしく」

ジェフリー様はステファニー様とフェリックス様に声を掛けると、アイーダ様に腕を差し出した。


二人が笑顔で歩き始めると、また人々は二人へ道を空ける為、サッと左右へ別れた。


二人の背中が見えなくなる。すると、


「皆様、中断させてしまってごめんなさい。さぁ、夜はまだまだ、これからですわ!」

とステファニー様が周りの人々へ高らかに声を掛けた。それを合図に演奏が始まる。


「フェリックス、踊りましょう」


「あぁ」

その声にフェリックス様が手を差し出した。その時初めてフェリックス様は周りを見た。

ふと……『パチッ』と一瞬、私とフェリックス様との視線が合う。


するとみるみる間にフェリックス様は目を丸くして、口をワナワナと震わせた。


……フェリックス様……どこか体調でも悪いのかしら?皆が注目しているのに、あんな表情……。


私がそう考えていると、フェリックス様が大股で一歩前に踏み出そうとして、グン!と引き戻される。


「フェリックスどうしたの?ダンスよ?向き合わなきゃ話にならないわ」

とステファニー様がフェリックス様の手を掴んで引っ張った。


「いや!……その!!」

フェリックス様はステファニー様に向かい合うより何か気になる事でもあるのか、アワアワしていた。……やはり具合でも悪いのだろうか?


しかし、ステファニー様はそんな事お構いなしに、フェリックス様の手を握ると無理矢理向かい合い、ダンスを踊り始めた。

フェリックス様も無意識に体が動くのか、ステファニー様に合わせてダンスを踊っているが、心此処にあらず。ダンスでクルクルと回る度にキョロキョロとしていた。


「何だか……様子が変です」

私が呟くと、隣のデービス様は高い背を曲げて私の口元へと耳を寄せた。


「ん?」


「あ……いえ。何だかフェリックス様がいつもと様子が違う様なので、体調でも悪いのかと……」


と二人で揃って踊るフェリックス様を見ると……


「本当だね。顔が真っ赤だ」


「熱でもあるのでしょうか?」


真っ赤な顔で何とも言えない表情を浮かべたフェリックス様がクルクルと回っていた。


「メグ、どうする?僕達も踊るかい?」


ステファニー様が踊り始めたのをきっかけに、また周りも徐々に踊り始めた。


「いえ……少し疲れたので、一旦休みませんか?」


「賛成。僕も無意識に体に力が入っていたみたいだ」

と首をコキコキと回した。

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