エピローグ
4月。
僕はワクワクしながら、初めての授業に向かっていた。
後期で何とか合格を決めてからまだあまり時間がたっていない。
入学手続きやらなにやらをしていたら、いつの間にか今日になっていた。
「いや今日から授業が始まるな。一ヶ月くらいはまじめにうけたい」
「いや初めから目標低すぎだろ」
となりの基哉にそう言った。
宅浪していた基哉も無事合格。体育祭に来ても勉強してしまったあの時をを思い出す。
僕と基哉は同じクラスだった。
「いやー、お前と同じクラスで嬉しいわ」
「うそだな。どうせ榎咲と仲良くなりたいだけだろ」
「それもある。なんてったって首席だろ。わかんないところ聞きまくれば俺でもフル単目指せる気がしてきた」
「まあ、それはたしかにそうだな」
そう、榎咲は首席合格で、入学式でもなんだか頼もしい挨拶をしていた。
いやすごい。
すごすぎる。
そして僕と基哉は、すごすぎる榎咲の知名度をなめていた。
入学式であいさつしたということは、みんな知っているということなのだ。
「おい……めっちゃ女子に囲まれてるけど」
「それな」
いやそれはそうな気がするわ。榎咲イケメンだし、サッカーもうまいらしいし、モテる要素しかないもんな。それで、首席でみんな知ってる状態なわけだから大変だな。
ちなみに、榎咲に話しかけてる女子の集団の中に奈乃さんもいた。
おかしいな、一カ月くらい前は優しいお姉さんキャラだったはずなのに、のりのりの陽キャになってるけど。
「やっぱ、俺らはおとなしくしてるのがよさそうだな」
「高校の時と同じになってしまう」
「まあいいだろそれで、ていうかお前ぜいたくいうな。お前には幼馴染で彼女な女の子がいるだろ。ほらあそこに」
「え?」
な、なんでいんの?
榎咲を囲んでいる女子とはまた別の小さな集団のなかに、沙音華がいた。
「あ、たいせ!」
「え、沙音華なんで? いる?」
「あ、ま、まあそれはですね。再履修というやつですね!」
「単位落としたのかよ」
「そう!ここにいるのは単位落とした組」
「まじかよ。留年は……」
「してないよ。あぶなかった~」
沙音華はのんきに笑う。
ま、まじか、沙音華でも落とした単位を僕は一発でとれるのか……?
しょっぱなから自信ないんだけど……。
そんな僕のうろたえを無視してチャイムが鳴り。
なんかすごそうな教授が入ってきて。
僕の大学生活が、ゆったりとスタートしていた。
お読みいただきありがとうございます。
一年ぴったり作中時期を合わせて連載するつもりがずれてしまいました。ごめんなさい。
そんなこの作品を最後まで読んでいただけて本当に嬉しいです。
もしよろしければ評価などをしていただけたら幸いです。
本当にありがとうございました。




