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好きなんだ

 僕と奈乃さんは、だいぶ前に来た見晴らしのいいところにやってきていた。


「たいせいくん、まだチャンスあるんだね」


「はい。それより、奈乃さん合格おめでとうございます」


「私のことは今どうでもいいでしょ。どうでもいいと思わなきゃ」


「は、はい……」


 そうは思えないけど。だって合格したんだし。


 でも、奈乃さんはきっと僕に言いたいことがあるんだな、と思う。


「私さ、二回も落ちて、二年も余分に時間使っちゃって。それでさ、ずっと思ってことがあるんだよね」


「……」


「私、友達がいてね、その友達とはずっと小学校の頃から仲が良かったんだけど、勉強も運動もおしゃれも、全部その友達の方ができたんだよね」


「だから私が大学受験で足踏みすることになっちゃったら、もう疎遠になっちゃうかなって」


 なんだか僕と沙音華みたいだ。


 というより誰でもあるのかもしれない。


 自分よりもなんでもできる人のそばにいて色々と考える。


 なんでもできてしまう人を除いては、きっとそんなことを考えながら、生きる時もある。


「でもさ」


 奈乃さんは都会にしてはさわやかな空気を吸い込んで続けた。


「その友達は、ずっと励ましてくれたんだよね。それでね、最近やっと気づいたの。ほんとに私、その友達ことが好きなんだなって」


「好きだって思った……のですか」


「うん。だってね、たいせいくん。なんでも自分よりもできるなあって思ってるってことは、その人のいいところを、全部認めてるってことだよ。心の奥底でね」


「……!」


「それにね、自分で言うのも図々しいなあって思うけど、その友達もきっと私のこと好きでいてくれてて。だってね、大学生って新しい世界だと思う。高校生の時にはできなかったことが色々できるし、きっと忙しい。それなのに立ち止まっている人を振り返って励まし続けてくれるなんて、どんだけその人のことが好きなんだろうって、ね」


 僕は奈乃さんが僕に語りかけているということに、今更気づいた。

 

 僕は思い返す。


 この一年、沙音華は、僕のためにどれだけ時間を使ってくれたのだろう。


 そして、やっと気づいた。


 僕は沙音華に置いていかれるのが、いやでたまらない。


 それは僕は沙音華が……



 本当に、大好きだからだ。

 

お読みいただきありがとうございます!


あと二話の予定です!

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