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3月 合格発表

 それから、僕はどんな問題を解いてどんな手応えだったか、覚えていない。


 ただ、明らかに、数学のミスを引きずっていた。


 模試の時は引きずらないメンタルを手に入れたつもりになっていたけれど、本番には全く使えない、見せかけのメンタルだった。


 


 三月になった。


 合格発表は、三月九日。


 まだ後一週間以上もある。


 僕は、ひたすら小説を読んでいた。


 遊ぶ気にもなれないけど、勉強する気にもなれない。


 すごく、謎の感覚だった。だから純文学系の小説を読むのが、一番よかった。


 沙音華とはおつかれとメッセージでやりとりしただけ。


 うん、なにも話してない。


 果たしてこれでいいのか。


 このまま僕が不合格だったら、一生沙音華と会わないかもしれないと思った。




 そんな日が過ぎて僕は本をたくさん読んで。


 そして、九日となり、僕は本も読めなくなった。


 食欲もゼロとなり、飲料ゼリーをくわえながら、時の流れに流されるだけ。


 なんだ今の僕。


 そんな僕でも、合否発表を見る権利くらいはあって。


 だから見る。


 私立の時とは違い、「あなたは合格しました」とか出るのではなく、番号の一覧から探す。


 よし、行け。頼む人生全ての僕。


 そう願いつつ見たんだけど、


 あ、うん、なかったんだよね。


 おちたわ。

 


 ⭐︎  ◯  ⭐︎


 

「うるさいな……」


 僕は10回目の電話を告げているスマホにつぶやいた。


 沙音華からだ。


「くそ、どうしようかな……」


 正直そろそろ察してほしい。


 もう無視だ無視。


 ピーンポーン


 おい、嘘だろ。


 直接くるなって。


 ……仕方ない。


 電話越しに言って帰ってもらおう。


「……もしもし」


「あ、たいせ元気?」


「……ごめん。しばらく連絡とらないでくれ」


 僕は電話を切った。


 そして、少し、古びた糸を切ったような感触を味わった。


 振り返れば、僕は、今に限らず、沙音華を一歩か数歩か知らないけど、遅れて追いかける側だった。


 沙音華は小さい頃から運動だって勉強だってできてモテてたし。


 平凡な僕がよくここまで一緒にいれたと思う。


 はあ。


 くそ。


 と、その時、11回目の電話が鳴った。


 沙音華……ではなかった。


 僕はその電話をとった。

 

お読みいただきありがとうございます。

この物語は、ここからが本番だと個人的には思っています。

ハッピーエンドにはなります。

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