年末と年明け
「よし……」
自己採点と復習を終えた僕はそう小さく言った。
生まれて初めて目標点に乗せることができた。
まぐれで当たってるのが多いのもあるけど、きっと成長したことあるはず。
時間配分を徹底的に研究した甲斐があった。
ほんの少し、達成感をかみしめて、僕はまた勉強に入った。
それからしばらくして。
最近沙音華もいない部屋で勉強漬けの生活を送っていた僕のもとに、電話がかかってきた。
「たいせー、最近どう?」
「まあまあ」
「マーク模試は?」
「マーク模試は一応Aだった」
「すごい! あとは落ち着いて体調管理してのぞもー!」
「うん」
「じゃ、頑張ってね」
「がんばる」
沙音華との短い電話は終わった。
共通テストまであと三週間弱。
今日は大晦日である。
去年に続いて、大晦日が特別な日ではなくなってしまった。
ただの予備校のない、勉強を一日中家でする日である。
年明けに予備校に行く予定はない。
外へのリフレッシュ散歩以外、共通テスト本番まで家から出ないつもりだ。
絶対、ここで結果を出したい。
そのために、自信を持って臨むために、それ相応の勉強をする。
ここまで、一応してきたつもりだ。
だから最後まで、ちゃんとやる。
本当にそれだけだ。
年明け。
年賀状の返事を俊敏に済ませた僕は勉強をしていた。年賀状は自分からは出す暇はなかったけど、まあきた分くらいは返事しようかと思って。
沙音華からはは気を遣ってか来てないな……と思ったら、インターホンがなった。
家にいた母親が対応しているようだ。
と物音で判断してシャーペンを動かしていると、母親が二階に上がってくる音がした。
「沙音華ちゃんから、お守りと消毒液のセットだって」
「セット……ありがとう」
一枚小さな手紙がついていて、
『あけおめ! がんばれ!』
と書かれていた。
十文字でこんなに嬉しくなるのが不思議。しかも書いてあることは普通のことなのに。
僕はお守りを見てみた。
合格祈願のお守りだった。同じのを持って入試に臨む人はいるかもしれない。
それでも、沙音華がくれたお守りは、きっとこのお守りだけの温かさをもっていた。
僕は大切に、それを筆箱の中に入れた。
お読みいただきありがとうございます。
ブックマーク50件を超えました。ありがとうございます。前話まではおおよそ実際の時期と小説内の時期を合わせて執筆していたのですが(ただの更新が遅い言い訳)、今後は実際の時期を追い抜いていきたいと思っています。次話は共通テスト本番の予定です。




