11月になった
11月になると、共通テストのことを考え始める時期になる。
もちろんもともと共通テストのことは考えてるんだけど、それまで二次試験のことを考える方が多かったくらいの状態から、共通テストのことを考える割合がどんどん高くなっていくのだ。
「たいせちゃんと古文と漢文と地理やってんの?」
今日も今日とて数学の難しい問題を解いていたら、沙音華がそう言ってきた。
「やってるよ、すこしはね」
「ならおっけー。で、どんくらい取れてんの?」
「半分くらい……?」
「え、それはやばい! 遅れとるよ」
「わかってるよ。でも他の教科なんて二次試験もあるんだからどうしてもそっちばっかり勉強しがちだろ」
「四月の頃は古文も真面目にやってたのに……」
「あの頃は全教科バランスよくやる余裕があったんだよ。でも志望校別模試の数学が爆死した今、数学の勉強量増やすしかないだろ」
「まあ……それは正しいかもしれないけど〜」
なんでそもそも数学ができないって話なんだよな。現役生なんて数三習ったばかりの人だってたくさんいるはずなのにあの問題解けるとか天才か? って感じなんだが。
……まあ、地道にやるしかない。
でもさすがに三時間くらい続けてたので少し休憩。
「ねえ、たいせ、暇ー」
「そうかよ、暇かよ羨ましいな」
沙音華は最近水着ではなくなった。
さすがに11月となると寒いからかな。
「……私暇で時間あってたいせ忙しいわけじゃん」
「うん」
「私がたいせのこといろいろしてあげるっていうのはどう? 例えばご飯食べさせてあげるからその間古文と漢文と地理の勉強するとか〜」
「……」
明らかに変な提案なのに、勉強に関する余裕がなくなりすぎていた僕は考え込んでしまった。
ああ、こうして常識も失うんだな浪人生は。
結局食べさせてもらうのはやばすぎるので、部屋の掃除を沙音華がしてくれることになった。
やましいものが部屋にないことがここに来て生きた。
優しい沙音華と純粋な僕に感謝。
沙音華はすごい掃除がうまかった。
掃除ができる人の方が頭の中も整理できてて勉強できる説があるけど、それあってる気がする。
とにかく、次の日の夜には、僕の勉強環境は大いに改善した。
でも、ここまで沙音華に支えてもらったら、受かんないとな。
そういう風に思った。




