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お好み焼き

「ああ〜たいせ、うまく行かなかったんだね」


 夜遅く、沙音華の声がした。


 ていうか模試が終わったのが夕方とはいえ、多分もう9時くらいだし、僕はどんだけ何もせずに机に頭をつけていたのかっていう。


「たいせ!」


「おお」


 沙音華に強めに言われ、僕は起き上がった。


「模試の自己採点と復習したの? 夜ご飯はたべたの?」


「どっちもしてない……」


 僕がそう答えると、沙音華は、あーあだめだめとつぶやいて、


「夜ご飯作ってあげるから、たいせちゃんと模試の復習して! ほんと時間もったいないから」


「ごめん……そうだな。ありがと」

 

 僕はカバンの中に乱雑に入れられた問題用紙と解答解説の冊子を出して、机に広げた。

 

 もう、本番まで何日とかカウントダウンを意識してもおかしくない時期だ。


 その時期に、特に何もするわけでもない時間を過ごしてしまうのはたしかにほんとにもったいない。


 沙音華はご飯を作りに行ってくれたのか、僕の部屋からいなくなった。


 僕は落ち着いてまずは英語から採点と復習をはじめる。


 いやほんと、沙音華に頼りっぱなしだなあ、と思う。


 まあずいぶん前からそうなんだけど。


 


 英語はあまりその日限りの大失敗をすることはない教科で、英語力が比較的そのまま点数にでるし、努力して覚えたぶんだけ成績が上がる気がする。


 だから少しだけど、ちゃんと勉強した効果が点数に反映されていた。


 少し、メンタルが回復した。


 それと同時に、下の階からいい匂いがして、沙音華が上がってくる音もした。


「はいたいせ! お好み焼き!」


「おお! うまそう」


「ふっふん。これは学祭で提供したスペシャルなお好み焼きだからね」


「ああそういうこと」


 大学は学祭の時期だ。そして、一年生は、必修授業のクラスのメンバーで模擬店を出すのが例年だ。


 沙音華のクラスはお好み焼きなのか。


「ではマヨネーズをかけます」


 沙音華が雑に「合格!」とマヨネーズで書く。


「青のりもかつおぶしもふりかけます……はいできた!」


 沙音華が僕の前にお好み焼きのお皿を置いてくれる。


 よし、なんか元気が食べる前から出てきた。


 僕は大きめの一口目をたべてみる。


 熱くておいしかった。


 こんな陰湿な雰囲気が抜けてない部屋で食べても美味しいんだから、大学のキャンパスで食べたら美味しんだろう。


 来年そうなってやるからな絶対。


 僕はお好み焼きを頬張りながら、折り目がついてしまっている模試の問題用紙を伸ばした。


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