数学が死んだ
十月も終わりの頃。
いよいよ来てしまった、秋の志望校別模試こと、第二回志望校別模試がある。
当たり前だが、夏と比べて秋の方が大事だし、ここで下がる浪人生も多いと思う。
何せもう学校行事も大方おわり、勉強を始めている人がたくさんいるからだ。
朝、僕はいつもと違うところへと行っていた。
なんと、予備校の近くにあるとある大学の講義室が試験会場なのだ。
なんでそうなったのかはよくわからないけど、本番の入試感が少し出る。
あと心の余裕がないけどもし余裕ができたら学食行って見たいなあ。
大学の正門までついた。
「おはよー、たいせいくん」
「あ、おはよう」
「がんばろう」
「だな」
短い会話だけどちゃんと思うところを伝えあい、僕と奈乃さんは歩く。
頭の中で各教科の時間配分に関する作戦を、思い出してみる。
大丈夫だとおもう。この配分で行けば、自分の実力で最も高い点数になるはずだ。
しかし、大学の講義室に入ったとき、なんとなく嫌な予感がした。
なんというか、去年落ちた時のパニクり具合を思い出すというか。
いつもと違う環境で受けるので、それが変に去年の失敗を思い出させる。
しかも偶然だとおもうけど、自分の座席の講義室の中での位置が、去年の受験の時と似ている。
そういうささいなことを気にするのは、どこか自信がないからだ。
しかし、自信を持つことはなかなか難しい。
でも、自分がこれまで勉強してきたという事実はあって。
だから……それを見せてやる!
……と思ってたのが六時間前でした。
手応えが死んでいる。
主に数学の。
というか、数学が一完もできなかった。
記述式の数学の出来具合は「完」と「半」で表す事がある。
完は完答のことで、その問題を経過、最終結果共に解き切ることを言う。
完答したつもりでも数点減点されたりするのはよくあるが、大きな得点が期待できる。
半は要はは部分点はもらえそうってことだ。しかし、結果としてただの勘違いが起こってたり、採点基準的にほぼ点数がこなかったりする。
で、僕は一完もできなかった。
最悪のケースを考えれば〇点だ。
何も初手の解法から降ってこなかったのがいくつもあった。
今までやってきたことが試験場で全てなぎ倒されてそこらへんに埋められてしまう。
そんな残酷な数学の試験を僕は体験してしまったのだった。




