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いつもよりしつこい

「という写真だからこれはね、つまりこの手は僕のではない」


「だよねー。こんなすべすべで子供っぽい手がたいせの手なわけないよね〜」


「そうそう」

 

 僕はうなずいた。


「しかもこんな綺麗な字たいせが書けるわけないか、たいせの字もう下手でゆがみまくり小学生レベルだもんねー」


「まあ、そう」


 僕は肯定した。


「しかもこんなにうまくたいせのノートがまとまってるわけないよね〜」


「そうだけど」


 僕はうなずいた。


「うー!」


「で、謎のうなり声」


 いや、どうした。


「なんかたいせとこの子が自習室でいちゃいちゃしている姿を想像したらうなってた勝手に」


「そんなことしてないけど……ていうか予備校ってさ、受験勉強ばっかりするところだからね、そこんとこ高校とも大学とも違うから」


「まあそうだね〜」


 沙音華は寝っ転がってうつ伏せになった。


 そろそろ水着だと寒い頃だろうけど、水着だ。

 

「あーあ、眠いなあ」


 沙音華はそのまま脱力した。


 僕は勉強を始めた。


 まずは奈乃さんからもらった板書の内容を写して理解しないと。


「その子ってさー、あの可愛いスタンプ送ってくる子でしょ」


「そうだよ」


「へー、ふほへーん」


 勉強始めたのに沙音華が話しかけてくるのは珍しい。


 なんかよっぽど奈乃さんのことが気になるみたいだ。さては友達になりたいな。


 まあタイプは違うけど気が合いそうではある。


 けど、奈乃さんが、沙音華の入ってるよくわからん水着ダンスサークルに入るのは想像できん。ていうかできたら奈乃さんを勧誘しないでほしい。


 まあでも恥ずかしがりながら水着になってる奈乃さんも良さそうだね……とか考えるとマジで集中できないルートに入る。


 奈乃さんの文字があまりに綺麗なので、活字だと思い込むことによってこれは奈乃さんのノートではなく印刷されたプリントだと暗示をかける。


 そうすると写り込んでいる奈乃さんの手もないような気がしてくる。


 おっけおっけー。


 勉強にのめりこんできたぞ。


「たいせー」


 おい、勉強にのめりこんだ僕を引っ張り上げる係になるのやめて。


「なんだよ」


「なんとなあく話しかけてみたあ」


 わざとらしくのんびりという沙音華。


 まあ前から時々こう変にしつこくなるときはあったからな。


 まあ幼馴染として理解しているのでほっといて勉強しよう。

 



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