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水着になり忘れた

「結局たいせも楽しめたみたいでよかった〜」


 次の日の夜に沙音華はいつものように僕の部屋に来て、床に寝そべりながら言った。


「うん、やっぱり行ってよかったっちゃよかったな。まあ綱引きで腕が痛いまんまなのが辛いところだけど」


「たいせ弱いな〜。私全然筋肉痛なってないよ腕」


「そうか、よかったな」


「あしらう感じがすんごい出てるよ」


「今むずい問題始めたところなんだよ」


「わかったよ、じゃあ静かにしてますー」


 沙音華は僕の後ろの低いテーブルに、パソコンを出した。


 沙音華も書かなきゃいけないレポートがあるみたいだ。


 お互い静かにして集中している時間が始まった。


 ……と思ってたのに、なんかすごい軽快な音楽がパソコンから流れ始めた。


「あ、イヤホンささってなかった〜ごめん邪魔して許してたいせ」


「いや別にいいけど……何見てんの?」


「アニメ!」


「うわ……そういや四シーズンくらいなんも見てないわ。過去作も含め」


 僕も沙音華もまあまあアニメ好きなので高三の夏くらいまではアニメの話とかもしてたんだけど。


 僕は高三の秋から今まで全く見ていない。


「大丈夫。たいせが全く興味なさそうなのにしたから。ほんとに。どーせ可愛い女の子がたくさん出てこないと見ないでしょ。このアニメほぼ男しか出てこないから」


「あ、そうなのじゃあいいわ」


 僕はあっさりと勉強に戻る。


 まあ沙音華は前も言った通り、僕の部屋では僕が誘惑されそうなことはあんましないからな。


 


 そのまままた今日も夜が遅くなって、沙音華は……いつの間にかおやすみになっていてアニメは垂れ流し、そいでもって沙音華のよだれも垂れ流しになっていた。


 なんかお昼寝園児みたいな可愛さが若干ある。まあまあ童顔なので沙音華は。


 画面を見ればなんか男たちが楽しそうになんかよくわからんスポーツをしている。


「沙音華……」


「あ、たいせ……」


 と沙音華が起きて、そしてすぐに自分のよだれを見つめる。


「わ、よだれ……ごめん……」


「いや別にいいけど」


「はずかしい……」


 沙音華はティッシュをしゅっと取ってしゅっと拭く。


「そういや今日は水着じゃないんだな」


「あ、確かに! 今日は脱ぎ忘れてた。はずかしい……」


「いやそれは恥ずかしくないな」


 脱ぎ忘れてて恥ずかしいってよくわかんないな。


「なるほど、やっぱりたいせの部屋では水着になんないとアニメ見てても寝落ちしちゃうってことか」


 沙音華は勝手によくわからない結論に向かい始めている。


 でも、沙音華は僕の部屋で水着になってリラックスするのは昔からやってるからな。僕の部屋ではそれが落ち着く体質になってしまったんだろう。


 

 


 


お読みいただきありがとうございます。

次話は予備校での話の予定です。

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