体育祭を見終わった
腕が痛いまま勉強を続けているといつの間にか周りの高三生たちが減っていた。
最後の全員参加の棒引きと全員リレーが近づいてきたようだ。
「そろそろ見に行くか」
「だな」
僕と基哉も勉強道具をまとめてしまい、図書室を出てグラウンド側の出口へと向かった。
「うわ、すごいな」
六学年が集合するとおそらく千人ごえ。
それに見にきている人を足すからすごい人だ。
「おおおおおお〜い!」
上から声がして、誰の声かといえば、もちろん沙音華の声だ。
そっちを見ると、体育館の二階から出れるベランダのようなところに、沙音華たちがいた。
「ここからだと見やすいよ〜」
なるほどな。確かに上からグラウンドを見下ろす形になって見やすいかも、さすが、校内を知り尽くした卒業生らしい場所取りだ。
「そっち行くわ今から」
僕は沙音華に聞こえるくらいの適度な声で言うと、基哉とそこへ向かった。
そこから見るとまるでスタジアムの観客になったようで、まあ人は小さく見えるけど、見ていて楽しかった。
棒引きあるあるなのかはわからないけど、試合が終わった時に明らかにとった棒が少ないチームが、意外と反則の個数が少なかったり点数が高い棒をとってたりして、勝ってめっちゃ喜んでたりする。
全員リレーは見てるとほんとに長くて、だからダントツビリのチームやダントツトップのチームが生まれて周回差ついたりする。それでも盛り上がる。まあ最後の競技だからだろうな。
そのまま体育館のベランダから表彰式まで見終わって、なんか楽しい高校時代なんてありましたねえとなって体育祭を見終わった。
で、ここからは僕が前もって想像した通りで。
「せっかく久々に集まったことだし飯行こうぜ」
と誰かが言い出し。
あ、僕ちょっと用事あるわ、と言い僕は帰る。
まあ用事はないというか、勉強するという用事があるというか。
沙音華は僕に予定がないことはわかってるだろうけど、何も言わなかった。
まあ多分勉強したいんだろうなって思っているはずだ。
一人での帰り道。
単語アプリをしながら電車に乗っていると、メッセージが届いた。
『今日はお疲れー、勉強頑張れたいせ!』
沙音華からそうきた。
短かったけど、嬉しい。
だから今日はやっぱり、楽しい思い出だった。




