勉強したくなってしまった
バレーボールは接戦なのか同じ試合がずっと続いている。
スコアを見ようと思ったが僕のいる位置からは見えない。
あー、この体育館で体育が始まるよりも早めに来て昼寝してた時代が懐かしい。
まあ当時の僕に浪人するぞって言ってやったら、もしかしたら飛び起きて勉強でもし始めたかもしれないな。
「そういや泰成はあの模試を主催している予備校通ってんのか」
「そうだよ」
「なるほどな。宅浪の俺に比べたら退屈じゃなさそうだな」
「宅浪は偉いな、マジで」
「まあお金は参考書代と模試代くらいだからあんまかかんないからな、ただしこれで落ちたら元も子もない」
「……まあそうかもしれないけど、尊敬する」
「尊敬って言ってもな、尊敬すべきは現役で受かったお前の幼馴染だろ」
基哉は、楽しそうにはしゃいでいる沙音華を見て、また言った。
「まあ……二浪はやばいから第三志望までには受かんないとな」
「……だな」
現時点での僕の第二志望は、国立後期で受ける予定のとある大学。ただしマーク試験が悪かったら一気に受かりにくくなる。
第三志望は、とある私立大学。なかなか立地も良くて自分も行きたいとそれなりに感じている大学ではあるけど、学費が高いので、割と真剣に特待生合格しないといけない。ただし特待生合格をするには、おそらく第一志望の大学に合格するのと同じかそれ以上の学力が必要だ。
というわけで結構やばい。
第三志望までが、いわゆる滑り止めというよりも、並んでるに違い状態なのだ。
まあ……つまりは妥協は許されない。
うん、だから勉強しなくてはいけないんだけど、なんで僕はここでのんびり体育祭を観戦してるんだっけ。
「ていうか、なんで俺ここでのんびりしてんだっけなー」
基哉が言った。僕と同じ思考回路になってる説がある。僕はパンフレットを広げた。そして図書室の情報を確認。
「今って、図書室は休憩室として解放されてるな。図書室で勉強しない?」
「え、まあいいぞ。まあ最後のくそ盛り上がる棒引きと全員リレーは見たいからそれまで勉強するか」
僕と基哉は体育館を出て、図書室に向かった。
スマホで沙音華に、図書室に行くことを連絡。
いや、やはりこうなってしまった。
別に勉強大好き人間ではないのに。
勉強していないと不安になり、勉強したくなる。
受験生を長々としているうちに、いつの間にかそういう性質になってしまっている。




