体育祭行く?
というわけで予備校が終わってもすごく集中して家で勉強していたら、今日は夜に沙音華がやってきた。
「あ、なんか今日のたいせ真面目度がいつもより高い」
「そんなの来てすぐわかるのかよ」
「わかるよー。たいせのことよく観察してるのはやっぱり幼馴染の私だからね〜」
沙音華はそう言って、床に座って壁に寄りかかってスマホを少しいじっていた。
僕は黙々と勉強を進めて、やっと一息つけそうなところまできた。
夜ももう九時くらい。
沙音華があ、そうだ、とスマホを置いた。
「たいせさ、高校の体育祭見に行く?」
「ああ……体育祭の時期なのか」
僕と沙音華の通っていた高校の体育祭は盛り上がる。
卒業生も多く見に行っていて、特に卒業したばかりの僕の代は今年はたくさん行くだろう。
「なんか結構みんな行くらしいから私も行こっかなって思ってー、最近会ってない人とも会えるし」
「なるほど」
「たいせは行かないの?」
「うーん。勉強したいなあ……でも久々に同級生にたくさん会えるわけだしなあ」
「そうそう、気分転換に行くのもいいと思うよ。もちろん勉強するのもいいと思うよ」
「どうしようかなあ……」
僕は考えた。
正直行って多分来る人のほとんどは、それぞれの進路にちゃんと進めた人たちだ。
なおさらうらやましくなって辛くなるかもしれないし、みんなで体育祭見た後夜飯行こうぜってなってる中で、「あ、僕流石に演習一セットは解かないとまずいから帰るわ」とか言って帰る寂しい未来が見える。
行かない方が総合的に考えてマシなのでは。
「ちょっと考えるわ」
僕はとりあえず今はそう答えた。
「わかったー、もし行くことに決めたら教えてよ〜一緒に行こ。茉里も一緒だよ」
「ああ茉里ねー、懐かしい」
「懐かしいはやばいよ、まだ半年くらいでしょ」
茉里は、沙音華との高校の親友だ。大学は沙音華とは違う大学だが、時々遊びに行っているみたいだ。
僕も楽しく高校の友達と遊びに行きたかったなあ。
まあそもそも友達が少なめの僕は、沙音華とその親友茉里以外に仲良かった人って言ったら男数人くらいだし。ていうかその数人の人たち、全員浪人してるんだよな。
みんなそれぞれ頑張ってるんだろうな今頃。
今更だけどあえて高校の同級生がほとんどいない予備校にして正解だった。
変に高校の時のだらだらさを引きずらずにすむ。
で、何を考えるんだっけ、そうだよ、体育祭だよな。
いやー、ほんと行くか迷うなあ。




