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榎咲がすごかった

 今日も演習から始まる予備校。


 昨日は、クモおおおおお! 事件があったので疲れた。


 今日は授業と授業の間に少し寝るか。


 そう思って、一つ目の演習が終わった後に寝ていたら、周りが騒がしくてすぐ起きてしまった。


 何があったんだろう?


 とりあえず、斜め後ろで休み時間も勉強している奈乃さんに聞いてみよう。


 勉強の邪魔をしてしまって申し訳ないけど、なんか起こったのかなと気になる。


「なんでみんなこんな騒いでるか知ってる?」


 奈乃さんはルーズリーフから僕に視線を移してうなずいた。


「あのね、演習の成績の上位者の名前が張り出されてるの」


「え? そうなの?」


 それでみんなあんな騒いでるのか。僕はおとなしく勉強しよう。時間の無駄ですね見に行くのは。


 と思っていたけど、実際気になってる。


 なのでトイレに行くついでに見に行ってしまった。


 あー、なるほど、一週間の演習の合計点の上位者が張り出される感じか。


 僕の名前は……ないな。


 まあそんな高くなかったしそうだろう。


 奈乃さんの名前もなかった。


 ていうかこれ他のクラスも含めた上位二十人か。


 それは結構上位だな。


 で、それで一位は……


 おいおいおい!


 一位榎咲なんだけど、すげええ。


 まあそもそも去年受かっても全くおかしくなかった人なのでここで一位でもあんまり嬉しくないんだろうな榎咲は。


 

 その予想は当たってそうで、榎咲の様子を見れば、黙々と勉強していた。


 いちいち騒いでなくて一位はかっこいい。浪人生の鑑だな。


 で、一方の僕。


 気になって見に行ってしまったくせにそもそも先週の演習はミスが目立った。


 このままでは秋の模試で急降下を果たす恐れがある。


 まじで努力は今のペース以上でないとダメだ。


 僕は急いで自分の席に戻ると、勉強を始めた。


 そして心のどこかで、榎咲よりもいい演習の点数を取りたいと思っているのが自分でわかった。


 そのような心理状態で勉強するのが正しいのか不明だけど、とにかく少しでもこの時期たくさん勉強しないと、ほんとダメ。


 見えないところで文化祭や体育祭を楽しみながらもそろそろ受験モード全開になり始めた現役生ももいるだろうし。


 正直自分の頭はあまり良くなくてミスも多い。


 たくさん勉強することでミスを減らし、時間配分を完璧にすることで、この前あまり何も考えずに解いてA判定だったあの模試の時の手ごたえを、毎回のものにする。


 これが必要だ。



 

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