夏期講習が始まった
沙音華と楽しい旅行に行く……前に残念ながら夏期講習第一期間がある。
ちなみに第九期間まであるので……まあ大変だね全部の期間に複数個講座を入れてる人は。
僕はそういうことはせずに少なめなんだけど、第一期間は二コマ入っている。
夏期講習は自由席。僕は大きな教室でどこに座ろうか迷っていた。
結構、どこに座るかって大事なのだ。
自由席と言っても、一日目に座った席とほぼ同じ席にみんな二日目以降も座る。
つまり始めの席をどこにするかは五日間の講習の快適さを決めるのだ。
最前列の方が集中できる人もいれば、雑に指名されたりするのが嫌な人で後ろが大好きな人もいる。
僕は真ん中くらいが好きだ。
というわけで真ん中らへんの席を探していた。
「うお……」
席を探している途中、ダメージを受ける。
JKの制服だ。
浪人生は基本的に現役生に追い上げられることを恐れている。
しかし、普段は予備校で浪人生クラスで授業を受けているので、敵の姿を見ることはあまりない。
しかし、夏期講習は、現役生と浪人生の区別はない。
つまり、敵がみんなで楽しそうに固まっている。
これは大問題すぎる。
僕のちょうど座りたいところらへんには、JKの制服がたくさんいた。
ここにとっこむ勇気はない。
僕は仕方なく後ろの方に座ることにした。
「あ、たいせいくんもこの講座とってたんだ」
JKがみんなで席移動したりしないかまだ諦めきれずに見張っていると、奈乃さんが隣に座ってきた。
僕は絶対ここから動かないことに決めた。
「あ、そう。とってるんだ」
「ここから見えるかな……? うん。だいじょうぶそう」
奈乃さんは眼鏡をかけてないけど少し目が悪いみたいで、黒板の端に書かれた「講習を受ける上での注意点」の方を見て確認していた。
僕は一応一・〇以上なので問題ない。
「ねえ、今日の午後講座とってる?」
「午後もあるよ、第一期間は」
「あ、そうなんだー! あのさ、お昼のちょっと空いている時にさ、お昼ご飯食べながら勉強しない?」
「え、あやりたいやりたい」
僕は机の上に出していた化学式チェックシートを端に寄せて、張り切って言った。
やばい。今週もしかしてお昼神の時間?




