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二人での散歩、変えられない結果

 次の日。少し暑い街並みを、僕と奈乃さんは歩いていた。


「たいせいくんはこの辺でお買い物したことはあるの?」


「うーん。あんまりないかな」


 予備校の近くは、楽器屋をはじめとする色々な店が並んでいる。しかし勉強重視で音楽はあまりやらない僕はここの辺りで時間を溶かしたことはない。


「私もない。だけど結構いいとこだなって思って」


「確かにそうだね」


 ギターを背負って楽しそうに話している大学生らしき集団をすれ違いながら僕たちは歩いて行った。


「たいせいくんは彼女とかいるの?」


「いないよ」


「いないんだ。私もいないよ彼氏」


「そっか。まあ勉強には集中できてお互い素晴らしいな」


「そうだけどー、そうなんだよね」


 少し否定気味な肯定をした奈乃さん。


 奈乃さんは恋愛をしたいのかな。


 確かに、僕も好きな人ができて、一緒に合格しようねなんて言って頑張りたかった。


 いや、少し嘘をついている気がした。


 僕は頑張っていたのだ。好きな人と一緒に。恋愛的な意味で好きかは自分でもわからないけど、僕は沙音華が好きだ。


 そして一緒に同じ大学を目指して頑張って、僕だけ落ちた。


 それは過去のもう変えられない結果の話で、僕はこうしてもう一年、周りに迷惑をかけながら頑張っている。


 隣の奈乃さんだって落ちているのだ。


 みんなつらい思いをしているのだ。


 番号がなくて、頭がぼんやりしたまま予備校の説明会に行って。


 だからこうして可愛い女の子と散歩をしていたって不安になる。


 番号がないことへの不安だ。


「あ、ところでさ。なんかこの先生すげえわかりやすいなって思う人とかいる?」


 僕はネガティヴになるのを防ぐためにお互いの共通の話題になりうる話を出した。


「うーん。淡山先生かな。板書が綺麗だし、プリントもわかりやすいなって」


「たしかにそれな。プリントわかりやすいよな。復習しやすくて、プリント順番にすると本みたいになるし」


「そうそう」


 奈乃さんがうなずいて笑ったところで、一番急な坂がきた。


「こんな急な坂あったんだねこの辺に」


「そう思うよな、結構登って下ると疲れるよ」


「つかれそうー、だけど運動になるね。こうやって楽しく喋りながらでも」


「そうだな」


 運動だけじゃなくてこうやって会話をするとさらに気持ちよくリフレッシュできるのかも。


 僕と奈乃さんは、予備校を見下ろすことができる坂を登っていった。


お読みいただきありがとうございます。


25話目になりました。ここまで読んでくださって本当にうれしいです。

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