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自由を求める婚約者様は恋におちた  作者: 木蓮


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「君のいとこは留学した婚約者殿に感化されたのか、ここのところ熱心に励んでいるそうだね」

「はい。寛大なポジート子爵家の方々のおかげでいとこもようやっと自分の立場を自覚したようです」


 機嫌の良い王太子にクロードも淡々と答えた。

 いとこのイザーク・ランゴ伯爵令息はクロードにとって長年頭の痛い存在だった。

 溺愛されて育ったイザークは人に好かれる愛嬌があり優秀だが、中身はわがままで飽きっぽく、自分が1番でないと気が済まない。

 伯父のランゴ伯爵に弟子入りしたクロードは、同じ齢のいとこであり何かと顔を合わせることも多いことから「助けてやっているんだ」とイザークに昔から見下され、利用されてきた。


 ランゴ伯爵は他人を利用して自分を良く見せようとする傲慢な嫡男を厳しく叱って矯正しようとしたが。狡猾なイザークは従うふりをしながら父に反発し、多忙な父の目を盗んで自分をただ褒めそやす友人たちと遊びまわるようになった。”困っている人への手助け”と称して気まぐれでちょっかいを出しているうちに、他人に褒めたたえられることに酔いしれ「親の決めた人生なんてつまらない。自分の力で自由に生きたい」と言い出した。

 そして、自ら望んで婚約したクロードの初恋の少女(ヴィオラ)が自分勝手なイザークを嫌って距離を置くとますますその幼稚な思い込みを拗らせ、気にくわない婚約者や口うるさい父に当てつけるように自分に好意を持つ令嬢たちと浮名を流すようになった。


 ランゴ伯爵は何度言っても息子が自ら望んだ婚約者を蔑む姿に激怒し、他者の好意や信頼につけこみ利用する嫡男など家の害にしかならないと切り捨てると決めた。そして、愛娘を蔑ろにするイザークに憤慨するトランクル子爵家に赴いて謝罪して婚約を解消し、イザークを廃嫡して領地に送ることを決めた。

 両家の間で密かに話がまとまった頃。ランゴ伯爵は王太子に密かに呼び出され、イザークを自分が目をかけるポジート子爵家のご令嬢の婿に欲しいと告げられた。ランゴ伯爵は王太子の提案に驚きながらも、恥を忍んで息子の不品行による婚約解消と廃嫡を打ち明けたが。王太子は笑って


「ポジート子爵家は代々社交よりも研究に熱心な一族でね。特にジュリエル嬢は素晴らしい才能と熱意の持ち主だが、幼い頃から領地で過ごしていたことで貴族社会に疎い。それを心配した子爵は次期当主のご令嬢が信頼する相手で、研究で多忙な彼女を支えられる相手を探しているんだ。

 その点、ランゴ伯爵令息は嫡男としてきちんと教育も受けているし、貴族社会に不慣れなジュリエル嬢の面倒を良く見ていて信頼されていると聞いている。何より、調薬師長を務めるランゴ伯爵家がポジート子爵家の後ろ盾になってくれると私としても心強い。

 トランクル嬢との信頼関係が築けなかったのは残念だが。ポジート子爵家のためにご令息に機会を与えてやってはくれないか」


 と語った。ランゴ伯爵は息子の愚行がそこまで詳細に知られていたことに青ざめながらも王太子の提案を受けいれた。クロードを呼んで事情を話し、ポジート家との婚約が無事にまとまるまでイザークを監視するように頼んできた。幸いにもイザークは自分を一心に慕うジュリエルに夢中で、王太子が自ら声をかけたこともあって喜んでポジート家への婿入りを受けいれた。

 王太子はなぜかクロードを気に入って話しかけてくるようになり、クロードの初恋を知ると応援してきた。彼に紹介された恋愛の達人たちの指導を受けたクロードはヴィオラにアプローチし、晴れて2人は婚約した。

 ランゴ伯爵は甥で愛弟子のクロードが信頼を失いかけたトランクル子爵家との縁を結んだことに感謝し、ランゴ伯爵家で婚約のお披露目をして2人の後ろ盾になることを約束してくれた。

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