ぎこちない毎日
それからクララは一切エリアスを見ないで過ごしていた。カルロス達は急にエリアスに対し態度を変えたクララに驚いたが、きっと事情があるのだとそっとして置いた。一方エリアスも同じようにクララに関わらなくなった。ただ時々遠くにいるクララを見つめる姿はどこか悲しみを秘めていた。
クララはタピア家の問題を解決するためにセリオを訪ねていた。「セリオ様、お忙しい中申し訳ありません、タピア家の問題を解決したいと相談に参りました。」クララはセリオの執務室に行き挨拶をした。セリオはクララをソファーに案内した。「タピア家の問題、ウーゴとレオンだな」セリオは言った。「セリオ様、私はタピア家が無くなっても良いと思っています。昔、フランシスカはそのために死にました。一族の罪は当主の罪、また私は当主ではありません。けれど同じ家のもの。責任は同じです。」クララの表情から覚悟を感じた。
セリオはクララが変わったと感じた。エリアス様とのことは聞いている。クララが過去を少し思い出したことも。でもセリオはクララを見守る事にした。クララが思うように生きられることが一番だから。
「クララ、この件はウーゴとレオン、あと義母の浅はかな考えで行った事件だ。被害者はクララと王家。この件ではタピア一族まで巻き込まない。なぜならクララが命をかけて忠誠心をみせた。」セリオは言った。「ならばウーゴとレオン、マカレナの首を差し出せばよろしいのでしょうか?」クララは淡々と言った。「その選択で十分だろう」セリオもクララの意見に同意した。
「セリオ様、私は、エリアス様が黒龍との戦いに行く前にこの問題を解決したいと思っております。戦いを終えお帰りになった際安心して四つの公爵家がエリアス様をお支え出来る土台を作りたいのです。だから一度公爵領に戻っても宜しいでしょうか?一週間で、戻ります」クララはエリアスが皇帝になった時に少しでも不安要素は消しておきたいと思った。私に出来る些細な行為だけど必ずエリアス様のために良い環境を整えたい。「わかった。エリアス様に相談し決め追って返事をする。」クララはセリオに礼を言い部屋を出て行った。
「で、どうなさいますか?よろしいでしょうか?」セリオは窓際に向かって聞いた。エリアスが姿を現した。「クララはタピア家が無くなっても良いと言った。無くなっても王家を支える公爵家が現れるから、クララは死んでも良いと、言ったんだ。」エリアスは片手で額を抑え厳しい表情をしている。「でも考えを変えました」セリオは言った。
「セリオ、私はこの歪な信頼関係に疑問を感じている。五百年前、私は命よりも大切なフランシスカを失った。そんな人生何の意味がある?帝国はそこまでして存続させなければならないのか?普通に信頼だけで存在できないものにどんな価値があるというのだ」エリアスは続けた「クララに、関わらないでと言われもう既に死んだと同じ毎日なんだ。セリオ、もう変えないとダメなんだこんな世界、壊さないといけないんだ」エリアスはセリオを見つめ言った。「エリアス様、私は地の果てまでお供します。」セリオもエリアスを見つめ言った。
その一週間後クララは数年ぶりにタピア領地に戻った。




