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薔薇と炎の物語  麗しの皇帝様、、私、訳あって男のフリしてますが可愛いリボンが大好きです。  作者: ねここ
第三章

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地下の世界


「セリオ、クララはどこに行った?」エリアスが城に戻ってきた。予定よりも三日早い。「エリアス様、予定よりもお早いですな」セリオは執務室の窓際にある大きな机でクララの筆記試験の解答を広げ採点をしながら執務室に入ってきたエリアスを見た。「そんな事はどうでもよい。クララに会いに行ったが部屋にいない。」エリアスは少し苛立ちながらセリオに言った。「クララは地下です」セリオはエリアスを見つめ淡々と言った。その言葉を聞き、エリアスは部屋を出ようとした。「エリアス様、我慢して下さいませ。これは必要な事なのです。クララなら大丈夫です。」セリオは部屋を出てゆこうとするエリアスに言った。「、、わかっている。だけど、、私がいない間に行うとは、、」エリアスはセリオを睨んだ。「ハハハ!いない間じゃないと邪魔されると思いましてな、今のご様子ならなおさらいない間で良かったと思っておりますわ」セリオはエリアスを見て笑っている。エリアスは黙ってセリオを睨みつけ部屋を出て行った。エリアス様は本当の自分に戻られてから、クララへの気持ちが抑えられなくなってきた。過去の記憶がある事もわかるが、同じ過ちをしてはいけない。セリオはクララの解答を見つめた。全て完璧に答えている。

 才能のある人物が幸せになる為に何をすれば良いのか。窓の外に見える神殿を見つめた。


 クララは森の中にいた。その森は薄暗く、一本一本の木がとても高い。その為木と木の間に二、三メートルほどの空間があり歩くのにも、戦うにも問題のない場所だ。辺りを見回していて気がついた。この世界には音がない。葉が揺れる音も、虫の音も、風の音もない。聞こえるのは自分の呼吸音だけ。まったく音は聞こえてこない。この静寂がこの世界に自分一人しかいないのだとわかる。クララは寂しく思った。自分が出す音以外の音を聞きたい。こんな世界、ずっといたら気が狂いそう。クララは早く戦って帰りたいと思った。


 少し歩くと開けた場所に出てきた。大きな木は無く、くるぶし位の長さのある芝生のような草が生えていた。歩くとカサッと音がするがその音だけしかしない。この世界の唯一の音が自分が歩く音だなんて、、それが恐ろしいほど孤独を倍増させる。星も月もない暗闇、もしかして敵はこの暗闇とか?孤独とか?精神的なものと闘うの?、、「エリアス様」クララはエリアスの名前を呟いた。するとますます寂しくなってきた。このまま会えないかもしれない。怖い、どうしよう、セリオ様がかけてくれた首のネックレス。呪文を唱えれば戻れる。だけど戻っても、またここに来なければならない。それならこんな思いは一度だけで十分。そう思った時、あの壁に書かれていたフランシスカという文字を不意に思い出した。フランシスカ。タピア家の当主。過去の罪人の名前があの壁に?しかもミラレス王家の神聖なる神殿の壁に。クララは立ち止まり空を見上げた。


 ウーゴとレオンはタピア公爵邸から一歩も外に出られない。帝国の兵士が取り囲んでいる。私が眠った後からずっと。話によると何度も何度も弁明の書簡を送っているそうで、ようやくことの重大さに気がついたようだとセリオ様は笑っていた。私がその度に謝ると「クララには罪はない、心配しなくて良い」とおっしゃって下さる。エリアス様も一緒に考えようと仰って下さる。でも責任を取らないと、、「ハァ」ため息が出た。


 突如自分以外の音が聞こえた。、、、ズズッ、、、ズズッ、、、考え事をしていて警戒を怠ってたわ!!!音は背後から聞こえる。クララはゆっくり振り向くと大きな壁が動いているように見えた。その壁にはたくさんの鱗があり、その色は燃えるような赤。まさか、サラマンダー?

クララの真後ろ、スレスレの所をサラマンダーは横切っている。サラマンダーは攻撃力は高いが目が悪い。だからクララの存在には気がついていないのだ。このまま息を殺し通り過ぎるのを待つしかない。クララは息をひそめサラマンダーが通り過ぎるのを待った。サラマンダーはゆっくりとクララの真後ろを通りすぎて行く。おそらく全長五,六メートルほどある。一見オオトカゲのようだが長い尻尾まで入れると十二、三メートルはあるだろう、尻尾の先は炎が燃えている。サラマンダーは炎を操る魔獣、炎の中で生きている。戦うとしたら同じ炎を使うもの同士、どれだけの高温度で相手を攻撃できるかが鍵となる。尻尾の炎の温度はおそらく二千度位の熱さ。クララの魔法温度は魔法によって違うが今扱える魔法の最高温度は太陽の表面温度の六千度位。炎の温度で勝つにはこの差は心許ない。なぜならサラマンダーの体内の温度は表面に出ている尻尾の温度よりも高いのだ。心臓はおそらく七、八千度はあるだろう。戦っても勝てる見込みがない。イフリートを召喚し戦わせるには不安がある。イフリートの炎は数百万度あるが、その前に私の魔力が尽きそう。イフリートを召喚するならもっと魔力が無いとダメ。薔薇の魔法と、物理攻撃を織り交ぜて戦うしかない。ああ、こんな時グロリアや、カルロスやダフネがいたら、。サラマンダーなどわけなく倒せるのに。エリアス様がいたら召喚獣ですぐに勝負がつくのに。一人だとできる事は限られるうえに同じ属性だとさらに難しい。これが試験なのね。クララは頭を抱えた。

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