乱高下する気持ち
エリアスは後ろを振り向きクララを見た。クララは戸惑った表情でエリアスを見上げている。エリアスはすこし屈みクララの耳元で言った。「クララに誰一人手出しはさせない。」クララは驚きエリアスを見つめた。エリアスはクララの手を取りキスをした。多くの人が見ている中でそうするということは今後クララに興味を持ってもエリアスがクララに言いよる男を見ていると言う牽制力になる。カルロスはその様子を見て感心した。流石エリアス様だ。
エリアスはそのままクララを離したくなかった。しかしアリーナ姫をエスコートしている最中だったこともあり、クララをカルロスに任せアリーナ姫のところに戻った。
クララ達は突然の出来事にテンションが下がりかけたが、エリアスのお陰で気分は上がった。グロリアとダフネはエリアスが言った言葉に酔いしれていた。「ちょと、あの言葉、、たまらないわ、、私を差し置いてって、すごい言葉よね、、」グロリアが言った。「あれ、運命とは私たちのことだって意味に聞こえたわ」ダフネが言った。「グロリア、ダフネ、違います。あれは私を助けようとして言ってくれただけよ。」クララは食後のケーキを一口食べて言った。「おい、クララ、ほっぺについてるぞ」カルロスはハンカチで頬についたクリームを拭いてくれた。「カルロス、もはやお母様ね」ダフネは爆笑した。「もう,なんでも良いよ、クララってどうしてこんな事に巻き込まれるんだ?」カルロスはため息を吐いた。「類い稀な才能を持っている人って穏やかな人生じゃないって聞いたけど,正しくクララがそうね。」グロリアが言った。「諦めよう。私達は一生この子の心配をすることが決定されたわ」ダフネが言った。「何それ?でもみんな巻き込んでごめんね、、。」クララは三人を見て苦笑いした。その後クララ達はエリアスよりも先に店を出た。クララは出る時にエリアスを見るとエリアスはクララを見つめた。クララは微笑み会釈をして出て行った。その時エリアスと一緒にいたアリーナとも目があった。クララはアリーナにも会釈をした。
その後四人は城に戻った。皆と別れクララは部屋に戻る前に図書室に寄った。カルメラには部屋で待機するように言った。図書室でずっと待たせるよりは部屋で待たせたほうがクララが戻ってきた時カルメラも仕事がしやすいからだ。今日一日遊んだからせめて復習だけでも、、そう思い勉強を始めた。無駄かもしれない勉強でも、やっぱりセリオ様に教えていただいている以上、いい加減な気持ちで投げ出したくない。ちゃんと応えよう、自分に今できることはこれしかないと思い直した。これも今日のお出かけのおかげ。みんなありがとう。クララは集中して勉強を始め、気がつくと夜になっていた。時計を見ると8時過ぎている。四時前に街から戻ってきたからそろそろ部屋に戻ろう。でも、この勉強しかけた数冊の本を借りて部屋で続きを読もうと重い本を四冊抱え図書室を出た。廊下は暗くランプが灯され雰囲気がある。この感じ、、好きなんだよね、、。クララは廊下の雰囲気を楽しみながら中央のエントランスに戻り階段を上がり始めた時、二階からエリアスとアリーナ姫が降りてきた。クララはすぐに端に避け立ち止まり頭を下げた。エリアスはクララを見て声をかけた。「クララ、勉強をしていたのか?」クララは顔をあげエリアスに言った。「はい。」「そうか。ほどほどに、、」エリアスはそう言ってアリーナと共に階段を降りて行った。クララは頭を下げてまた階段を上がり部屋に向かった。「はぁ、、」南の塔に入り長い廊下を歩きながらため息が出た。アリーナ姫、意識しないようにしていたけどエリアス様と一日中一緒にいらっしゃったんだ。王国の至宝、、美しい姫さま。それに比べて私はどうしようもない父親と義理の弟を家族に持ち、たまたま魔法の能力と忠誠心があるから未だに処分されず温情で勉強させてもらっている身分。比べるまでもないわ。クララは気分が下がった。「ハァ、、」またため息が漏れた。早く部屋に戻ってカルメラにお土産を渡そう。気分を変えようと思った時「クララ」後方から名前を呼ばれ振り返るとエリアスが現れた。




