取り戻す日常
クララが二年間眠っている間にカルロス達はさまざまな勉強をしあと数ヶ月で魔力が最大に引き上げられる器が出来ると聞いた。その器ができたら公爵家に戻り魔法石に力を注ぎ込む儀式ができる。いわゆるここを卒業するのだ。クララはその二年をどうやって埋めれば良いのか、ウーゴ達の件と並行してやらなければならない事に頭を悩ませていた。問題は山積みだ。
セリオに相談し、必要な知識は頭の中に叩き込む為、授業が終わった後に図書室で山積みにされた本をひたすら読み、頭に叩き込んでいた。エリアスはもうほとんど授業に出ることはなく、成人した皇子としての勤めがあり会えない日が多くなった。寂しいといえば寂しいが、立場が違う為仕方がない。クララ自身も二年のブランクを埋める為に頑張って毎日勉強していたがとうとうストレスが溜まり爆発した。
「グロリア、ダフネ!!私ずっとずっと外に出ていないの!この帝都さえ歩いたことがないの!!!私を街に連れて行って!!」クララは昼食の時とうとうストレスが爆発し二人に言った。「クララ、、まさか四年前から一度もプライベートで城の外に行っていないなんて、無いよね」グロリアは恐る恐る聞いた。「グロリア、そのまさかよ。私一度もないの。だって男の子の格好してどこに行けば良いの?!」クララは叫んだ。「あははは!!笑っちゃいけないけどお前可哀想だな」一連の会話を聞いたカルロスが言った。「クララ、一緒に行こう、明日休みだし。ね。」ダフネが言った。「本当に?本当に連れて行ってくれるの?!嬉しくて今晩眠れないかも」クララは立ち上がって喜んだ。「じゃあ、明日思いっきりオシャレして出かけましょう!」グロリアが言った。「うむ、心配だから俺もついていくよ」カルロスは髪をかき上げながら三人を見て言った。「カルロス,ありがとう」クララはお礼を言ってグロリアとダフネとどんなドレスを着て出かけるか相談した。
「クララ様楽しそうですね」カルメラが楽しそうにドレスを選んでいるクララを見て声をかけてきた。「カルメラ、私ね、ここにきた時本当に悲しくて、男の子の服を着て髪も短く赤茶色に染めて絶望していたの。でも今はこうしてドレスも着れるし、お友達と出かける事も出来る。本当に嬉しいの。夢みたい」カルメラはクララのその言葉を聞き、年頃の女の子がどれほど我慢させられたのか心底不憫に思った。カルメラは徐にクララを抱きしめ「明日は楽しんでくださいませ!」と言って優しくクララを見つめた。クララはあれ以来心から支えてくれているカルメラの気持ちが嬉しかった。「カルメラ、ありがとう、いつも心配かけてごめんね。大好きよ」クララもカルメラを抱きしめた。眠り続けた二年間ずっとそばにいてくれたカルメラはクララにとって大切な人になった。
翌日四人は街に向けて一台の馬車に乗り出かけて行った。その際、カルロスはモリアーナ公爵家の騎士を三人連れて行った。正直言えばこのメンバーで襲われたとしても返り討ち出来る。だがクララはきっと普通の女の子として過ごしたいんだと思ったからだ。
嬉しそうにおしゃべりをする三人を見つめカルロスはそれぞれが自分の領地に戻っても時々こうして会う時間を作ろうと考えた。




