第三章 プロローグ あれから一年
あれから一年が過ぎた。
白ミモザの花が咲き乱れ、リアナはその花をもってクララの部屋に入った。カーテンは開けられ、窓も少し開けられておりクララの眠る部屋の中は心地よい風と光に溢れていた。ベットに横たわるクララは今にも起きるのではないかと思うほど血色も良く、微笑んでいるような寝顔で、リアナはいつもその柔らかく閉じた瞳にそっと触れ長いまつ毛の感触を指先で感じそれから頬のふれ色づいた唇に触れる。それから長くなった髪に触れその髪に毎日リボンを結んであげるようになった。グロリアからクララはリボンが好きだったと聞いたからだ。
こんなに可愛い年頃の女の子が自分の意思に反して髪を短く切り、ドレスを燃やし、あの場所に立っていたと思うだけでウーゴ・タピアに対する怒りが湧いてくる。それにあのレオンと言う男、あの日子供騙しのようなバカみたいな魔法を私に見せつけ自慢げに見るあの目を私は忘れない。殺すチャンスがやってきたらまずあの目から潰そうと決めている。それにあれから何を思ったのか長文の、言い訳が書き綴られた文章と,意味がわからない恋文。あまりのセンスの無さに驚きセリオに見せると珍しくセリオは大笑いをしていたが、クララがあんな男の身代わりをさせられ追い詰められたと思うと今すぐに殺してしまおうと思う気持ちを抑えることが時間を追うごとに難しくなってきた。
クララ、君は十九歳、私は来年十八で成人を迎える。その時にクララが目覚めてくれたら私も私の抱えているものの話をクララに話したいんだ。そして私たちは薔薇の誓いを行わなければならないんだ。リアナは持ってきたミモザの白い花をクララの手に握らせた。
カルロスはクララにドレスを持ってきた。グロリア、ダフネ,そしてカルロスが順番にクララの為にドレスを持ってくる。三人はクララを眠り姫のように思い眠るクララに見合うドレスをそれぞれが持ってくるのだ。カルメラに渡すと着替えさせてくれ、その後三人で可愛く仕上げてあげる。でも髪は毎日リアナ様がリボンを結んでくれるのでそれはそのままにしている。クララはリアナ様が大好きだから。いや大好きという言葉は軽すぎる。忠誠心を伝える為に死を選んだのだから。
「クララ?いつまで寝てるの?早く起きて」グロリアはクララの手を握りながら言った。今日のドレスはカルロスが選んだ白のシンプルなシルクのドレスだが、真珠があしらわれておりとても美しい。ダフネは自分の真珠の腕輪を外しクララの腕につけながら言った。「眠り姫は王子様を待っているんじゃない?」「王子、、俺のことか?」カルロスが言った。「面白くない冗談ね」グロリアは自分の真珠のイヤリングを外しクララの耳につけた。「完璧じゃない?」ダフネが言った。「おお、キスしたくなるな」カルロスが言った。「カルロス、許嫁に言うわよ」グロリアが言った。「勘弁して下さい」カルロスは両手を合わせ謝った。
「こんな可愛い子に男のマネさせて、ウーゴ、レオン殺したいわ」ダフネが言った。「同意」グロリアとカルロスが言った。
夜遅くリアナがクララに会いにきた。リアナは朝夕に会いに来るが今日は忙しく遅くにあらわれた。部屋に入ると朝と雰囲気が違い暖かいランプの光が部屋の中を柔らかく幻想的に見せている。その中で眠るクララは三人からプレゼントされた美しいシルクと真珠のドレスを纏い真珠の装飾品を身につけて静かに眠っている。手には朝握らせたミモザがしっかり握られていた。
リアナはクララが眠るベットに腰掛けてクララを見つめた。ランプの光は有機的に揺れクララの顔にときどき薄ら陰影をつくる。リアナはクララの頬に手を当てて言った。
「クララ、白ミモザの花言葉を知っている?、、花言葉は死に勝る愛情、、」リアナはクララを見つめその瞼にキスをし部屋を出て行った。
第三章が始まります。
末永くよろしくお願いいたします。
ねここ




