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薔薇と炎の物語  麗しの皇帝様、、私、訳あって男のフリしてますが可愛いリボンが大好きです。  作者: ねここ
第二章

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裏切りと薔薇の誓い


 あれから五年が過ぎ、ルカスは二年前に結婚した。まだ子供はいない。

 ナバス帝国は平和で穏やかな日々が続いていた。一方でフランシスカは結婚をせずルカスとの子供を密かに育てながら当主として忙しい毎日を過ごしていた。ルカスの結婚はフランシスカを苦しめた。お互いにこの人しかいないと確信した中での別れ、五年過ぎてもフランシスカはルカスの愛溢れる眼差しを思い出し涙を流した。


 そんなある日、帝都のタピア公爵邸で大規模なお茶会が開かれた。そのお茶会はタピア領地にしか無い貴重な茶葉を使用する特別なお茶会で多くの貴族が集まった。主賓は十三歳のルカスの妹アデリナ皇女だ。そこで事件が起きた。お茶会に紛れこんだ敵国カンタン帝国のスパイにアデリナ皇女が拉致されたのだ。ナバス帝国の宿敵であるカンタン帝国は卑劣にもアデリナ皇女の命と引き換えにルカス皇帝に降伏を迫ったのだ。

 この事件の黒幕はフランシスカの義理の弟ラミロだった。ラミロはカンタン帝国の王パシリオにナバス帝国を裏切りミラネス王家の皇女を拉致したあかつきには公爵家の地位をカンタン帝国で与えると唆され犯行に及んだのだ。その事実を突き止めた各公爵家はタピア公爵家を包囲した。フランシスカはタピア公爵家を取り囲むモリーナ公爵、アドモ公爵、アンヘム公爵の前に現れラミロの首を差し出した。義弟の罪は当主の罪、本来ならこの場で処刑されてもこの命は惜しくは無い。が、死ぬのなら帝国のために使いたい、皇女を取り戻す為にこの命を使いたいと言った。その為に皇帝に会い絶対なる忠誠を、命をかけた忠誠の誓いを立てたいとフランシスカは願い出た。三つの公爵家当主は仲間であるフランシスカの想いを汲み、すぐにタピア一族を処刑するというルカスを説得し、ルカスとフランシスカは会うことが決まった。


 フランシスカは久しぶりに王城に行った。馬車の中から城を見つめながら初めてここに来た日を思い出していた。あの日、ルカスと初めて会い一瞬で恋に落ちた。お互いこの人しか居ないと深く愛し合った日々。けれど神は二人が結ばれることを許さなかった。神はルカスの愛する気持ちを奪った。だけど神はフランシスカの記憶を消すことはしなかった。癒えることのない心の傷。苦しい人生を歩み、死ぬ時までも試練を与える。そんな人生を歩むことになるとは想像もしていなかった。白い奇跡と呼ばれる城は私にとって奇跡の城ではなかった。神聖な監獄のような場所。感情の無いルカス、古の誓いに逆らえない王家と公爵家。誰もこの神が定めた運命から逃げられないのだとフランシスカは思いながら城に入った。

  

 タピア公爵家は王家とナバス帝国を裏切った。罪人に成り下がったタピア公爵家当主であるフランシスカは城内に入ることはできないとし、庭園にあるルカスの薔薇の前で跪きルカスを待った。その二時間後ルカスは現れた。フランシスカはルカスに義弟の罪は当主の罪、必ず皇女を取り戻すと言い、三ヶ月時間が欲しいと願い出た。そしてナバス帝国に対する忠誠心を誓うために薔薇(いばら)の誓いを願い出た。薔薇の(いばら)の誓いとは自分の心臓に薔薇(いばら)の蔓を巻きつけ誓いの約束を守ることが出来なかった時その蔓にある棘が心臓を刺すという命をかけた誓いだ。それに加えて薔薇(ばら)の誓いも願い出た。ルカス皇帝個人に対する絶対的な忠誠心を誓いその忠誠心を失った場合薔薇の誓い同様に棘が心臓を刺す誓いだ。その忠誠心が揺るぐ事なくアデリナ皇女を連れ帰る約束を守れた時、ルカスの剣で殺して欲しいとフランシスカは言った。皇帝自らの手で処分される事は唯一の温情なようなものだ。どうせ死ぬなら皇帝自ら処分するという名誉ある死をフランシスカは願ったのだ。ルカスはどちらも了承した。

 

 フランシスカはロサブランカを呼び出し二つの誓いを誓った。その瞬間ルカスの薔薇が逆転し花びらが白、中心が真紅のフランシスカの薔薇に変わった。この薔薇はフランシスカの心、忠誠心と愛を表す。万が一フランシスカが裏切った場合薔薇は枯れる。ロサブランカは悲しみをたたえた眼差しでフランシスカを見つめた。ルカスの薔薇はルカスがフランシスカを忘れても枯れずずっと咲き続けていた。心が死んだルカスのフランシスカへの愛、フランシスカのルカスへの愛。運命はより残酷な方向に進んでいった。

 

 ルカスの妹アデリナ皇女は十四歳から神殿に入り神の使いとして十八歳まで仕えることが決まっていた。絶対に行わなくてはならない儀式なのだ。なんとしてもその前に取り戻さなくてはならない。


 ルカスは以前から不思議に思っていた。世界中でただ一人タピア家当主のフランシスカにだけ興味が湧かない。そんなことがあるのかと思うほど興味が湧かず顔さえ覚えていなかった。けれど今日改めてフランシスカを見た時、不思議な気持ちになった。けれどその理由もわからぬままフランシスカは帝国から姿を消し、三週間後にはカンタン帝国の皇帝の目に留まり側室になっていた。そのまた三週間後には悪女と噂され始めその四週間後、皇帝が死にカンタン帝国は内部分裂をし,あっけなく国が滅びた。その一週間後フランシスカはアデリナ皇女を連れてナバス帝国に帰ってきた。


 

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