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薔薇と炎の物語  麗しの皇帝様、、私、訳あって男のフリしてますが可愛いリボンが大好きです。  作者: ねここ
第二章

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ルカスの愛


 十四歳から共に成長した仲間はもうすぐ成人を迎える。成人を迎えた王は一年位内に黒龍を倒し次期公爵家当主に魔力を与えなければならない。ルカスは黒龍との戦いに向け準備を始めていた。フランシスカ達は自分の精霊石を手に入れる為神殿の地下にある音のない世界で戦い自らの分身となる精霊の魔法石を手に入れていた。それを使いそれぞれが公爵家にある家宝の精霊石に新たな魔力を与え、その後新しく即位した王に渡す。その精霊石は不慮の事故などで当主である公爵が死ぬと輝きが消え王家の色、白になる。その瞬間に一族の誰かに当主の能力が移転され公爵家にある精霊の魔法石の光は消えない。


 ルカスは黒龍との戦いを躊躇していた。戦いに使う聖剣ダーインスレイフは別名忘却の魔剣といわれミラレス王家の魔力を最高値に上げることが出来る最強と呼ばれる剣だが、その剣を使うと命よりも大切な何かを無くすと言われている。だが失くしたことにも気が付けないので、本人は悲しくはない。けれどルカスは自分が無くす「何か」をわかっていた。


 命を捧げても惜しくないフランシスカを忘れてしまう。


  ルカスはこの運命から逃げたくなった。けれど自分の気持ちをだけを押し通し今まで忠誠を誓ってくれた各公爵家を蔑ろに出来ない。ルカスはフランシスカを忘れたくなく、ある夜想いが募りフランシスカの部屋に現れた。眠っているフランシスカにキスをし、そのままフランシスカを抱いた。フランシスカは突然ルカスが現れ驚いたがルカスの苦しみを理解し、それはフランシスカ自身の苦しみでもあり二人はそれを打ち消すように何度も抱き合った。


「フランシスカ、君にはわかったはずだ。私たちが出会ったのは今回が初めてでは無い事を。長い時を経てお互いを愛する気持ちが熟し今回の出会いでようやく私たちは愛しあえる関係になった。けれどその結果君を忘れてしまうかもしれないという絶望的な状況になった。やっと愛しあえたのになぜその気持ちを取り上げられてしまうのだ、、。私はこの運命を呪いたい」ルカスはフランシスカを抱きしめながら言った。「ルカス様、あなたに忘れられるのは苦しい、、。けれどそれを受け入れるしか無いのも事実です。ルカス様が私を忘れるという事は私を真に愛してくれたという事実。こんな形でルカス様の想いを受け取ることはしたくありません。けれどこの運命から逃れる事もできないのも事実です。私はルカス様に忘れられても死ぬ瞬間まで,ルカス様だけを愛し続けます。もう逃げられない宿命,運命ならばお互いを思う一瞬一瞬を永遠にしましょう。愛しています。」

 

 その一ヶ月後ルカスは黒龍との戦いに行った。ルカスは神殿の階段を降りる時、先程まで腕の中にいたフランシスカを忘れたくなく短刀を使い壁にフランシスカと彫った。私が唯一愛した女性、命を捧げても惜しくない人。ルカスは階段を降りあと三段で地下に到着するその場所にもう一度フランシスカと彫った。自分が彼女を忘れてもいつか誰かがこの文字を見つけ王が命よりも大切な女性がいて大切だからこそ忘れたのだと気がついてくれたら,この心は救われるかもしれない。神は王が命を捨てても惜しくないものを奪うことによりこの世界の王が安定した状態で君臨できるようにしたのだ。命をかけるほどのものがなくなった王は死を選ぶことは無いからだ。大切なフランシスカを忘れてしまうなら生きていても死んだと同じ。この先死ぬまで感情を揺さぶられる事なく淡々と人生を送るのだろう。フランシスカ、君を忘れた瞬間から本当の私は死ぬのだ。だから私が永遠に愛しているのはフランシスカだけだ。

 

 

 二日後ルカスは戻ってきた。ルカスは一番大切な人、フランシスカへの愛を忘れた。忘れられた者だけはその記憶が残るが、それ以外の人間は王と同じく二人が強く愛し合っていた事実を忘れた。ルカスに忘れられたフランシスカは全てを受け止め何も言わず公爵家次期当主としてルカスに接し,それ以上踏み込むこともせずその想いを胸にしまった。どんなに嘆いてももう二度とルカスはフランシスカを思い出さない。ただ一人になった時にだけルカスへの想いを吐き出すようにフランシスカは泣いた。こんなに苦しい想いをしなければならないなら生まれ変わっても、もう二度と誰かを愛したくない。フランシスカは苦しみの中でそう思うようになった。けれどフランシスカへの愛の象徴であるルカスの薔薇は枯れることなく孤高の美しさを放ち咲き続けていた。


 その後、ルカスより魔力を与えってもらったフランシスカ達はそれぞれの領地に戻り一連の儀式をし,自分の分身の精霊石をルカスに渡した。ルカスはフランシスカに対し穏やかな微笑みを浮かべ対応している。瞳の奥に何の感情も無い。魂が抜けたようなルカスを見ることはフランシスカにとって心をえぐられるように辛いことだった。

 

 程なくし、ルカスは隣国の姫と婚約をした。フランシスカは静かにその事実を受け入れていたがなんとフランシスカはルカスの子供を妊娠していることがわかった。元々生理不順があり忙しさもあり気にしていなかったがお腹に子供がいるとわかった時、驚きと同時に愛する人と愛し合った結果できた大切な命をなんとしても守ろうとフランシスカは秘密裏に子供を産んだ。その子は金色の髪に深い紺色の瞳を持った女の子だった。ルカスそっくりな紺色の瞳を見た時フランシスカは声を上げて泣いた。そしてこの愛すべき娘にエリカと名づけ誰にも見つからない安全な場所に信頼できる乳母に預け育てた。フランシスカは出来るだけエリカに会いに行き深い愛情を注いだ。ルカスを失ったフランシスカにとってエリカは唯一の光だった。


 

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