第一章最終話 忠誠心
炎のと薔薇の物語を読んでくださって本当にありがとうございます。
このお話を持って第一章は終了いたします。
ありがとうございました!
邸宅の表に出た。ウーゴとレオンは遅れて外に出てきたクララを睨みつけている。クララは二人を見つめた。私の家族はこの人たちではない。真実を知っても家族だと言ってくれた友達がいる。優しく,時に厳しく導いてくれたセリオ様、大好きで命を捧げても惜しくないリアナ様、あの頃と違って私には大切な人が出来た。この約二年間、本当に幸せで満たされそして苦しかった。でもその苦しみはウーゴ達に感じていた苦しみとは全く違う、愛するが故の苦しみだった。そんな私が唯一皆に示せるのは忠誠心しかない。
セリオがレオンに言った。「魔法を見せてくれ」レオンは一歩前に進みウーゴの顔を見て「チスパ」と唱えた。その瞬間大きな花火が冬の透き通った青空に上がった。その色は赤黒かった。レオンは「どうだ!」と言わんばかりにクララを睨みつけた。ウーゴは「レオン、今日の魔法はいつもよりも冴えていた。花火の大きさが桁違いに大きかったな」と花火を見て満足そうにレオンの肩に手を置いた。その様子を見ていたリアナは相手にする価値もないと思った。こんな人間にクララが苦しめられていたとは。もっと早く助けてあげたかった。リアナは両手を握りしめた。
クララはレオンの魔法を見つめながら初めてセリオ達に魔法を見せた日の事を思い出した。あの日城の裏にある草原でセリオ様とリアナ様からどんな魔法でも良いから見せるよう言われた。カルロスもグロリアもダフネも今のレオンと同じ家族が喜ぶような楽しい魔法を見せた。だけど私だけが攻撃魔法だった。ウーゴから魔法を見せろと言われ、見せなければならない魔法はそんな魔法だった。それをセリオ様に指摘された時、本当に悲しかった。今目の前にいるレオンは楽しい魔法を躊躇なく選ぶ。私の時の攻撃魔法とは違う楽しい魔法。あの頃私が家族だと思っていた人達は私を家族だと思っていなかったとあらためて思い出させてくれた。
クララは「フフ」と悲しげに笑った。セリオはそんなクララを見て初めて自分達に魔法を見せた時のことを思い出したんだとわかり胸が痛んだ。
リアナは少し離れた場所に一人立っているクララを見つめた。クララはもう泣いていなかった。魔法を使うため瞳を閉じ集中しているように見えた。その姿は美しくどこか儚げで冬の透き通った青空にクララが溶けてしまうような漠然とした不安を感じた。
「次はクララ」セリオはクララに言った。クララはセリオをみて頷いた。セリオはそのクララの瞳を見て心がざわついた。何をする気だ?一抹の不安がセリオの頭をよぎる。
クララはリアナを見つめ目を細めた。リアナ様、私はあなたを裏切らない。私の忠誠心を捧げます。「イフリート」クララはイフリートを召喚した。ウーゴとレオンはクララがイフリートを召喚できることを知らない。イフリートの迫力に二人は思わず後退りをし、ウーゴは毎晩イフリートが夢に出てきたのは偶然じゃなかったとわかり恐怖で腰を抜かした。クララは両手を上げイフリートの顔に触れて言った。
「私を殺して」
リアナはクララがこちらを見て目を細めた時、嫌な予感がした。クララは何をするんだ?イフリートを召喚した瞬間クララは忠誠心を証明するため命を差し出すとわかった。
リアナはすぐに薔薇の精霊を呼び出しクララを守ろうとした。それと同時にイフリートはクララの心臓を炎の剣で突き刺した。目の前で崩れゆくクララをリアナは走り抱きとめた。リアナのネックレスが一瞬赤く光りその光が消えた。そしてまた赤く光り出した。
「セリオ!!クララは生きている!」リアナは倒れたクララを部屋に運んだ。間一髪でクララの心臓を薔薇の蔓が守り一命を取り留めた。すぐに治癒魔法を使い傷を塞ぐ。けれどクララの意識はない。リアナは横たわるクララを見つめた。
クララ、そんなことをしなくてもその忠誠心はわかっていた。だけどそこまで追い詰められていたのか、あのウーゴとレオンに!!「リアナ様、クララは?!」セリオはクララの顔を見つめながらリアナに聞いた。クララは先程まで青白い顔をしていたが今はうっすらと頬の赤みが差している。「クララは私の薔薇の防御で一命をとりとめた、、。あんな方法で、、私に忠誠心を示すとは、、、」リアナはクララの頬を触り言った。「クララは間違いなくタピア家の長女クララ ・タピアです。しかしあのウーゴ、レオン、、クララを追い詰めたタピア家、、いかがしますか?」セリオはリアナを見つめ聞いた。リアナはクララを見つめ言った「この子が目覚めるまで公爵家で謹慎、一切の活動を許さない」セリオは大きく頷いた。「妥当な処分ですな、この先苦しんでもらわねば。」その言葉にリアナも頷いた。
合宿は中断されタピア親子は強制的に領地に戻されナバス帝国の兵士がタピア公爵家を取り囲み、クララが目覚めるまで謹慎と命令が下った。罪状は王家に対し虚偽の証言、公文書偽造、王家に突然乗り込んで来た不敬罪、王家のメイドに手をあげた罪などもろもろだ。
クララはいつも過ごしていた白ミモザの部屋に戻った。ベット上に寝かされているクララの傍にはカルメラがいる。カルメラは意識が戻らないクララの手を握り泣き続けた。一番近くでクララの苦しむ姿を見てきたカルメラはクララが目覚めるまでお世話をさせ下さいとセリオに頼んだ。
カルロス,グロリア,ダフネは詳細を知り、目覚めないクララを抱きしめ泣き崩れた。「クララは何も悪いことをしていないのに!!」グロリアはウーゴとレオンの話を聞き許せないと思った。「クララは自分の命を持って忠誠心を示した公爵家の誇りだ、そんな人をあいつら!!」カルロスもタピア家を憎んだ。「クララ、、目を覚まして、、私たちあなたを待っているのよ」ダフネはクララの手を握って涙を流した。それから三人は毎日目覚めぬクララの元に行き色々と話しかけるようになった。
「リアナ様、こちらでしたか。」セリオはクララの枕元に腰をかけクララの髪を撫でるリアナに声をかけた。「セリオ、クララはいつ目覚める?」リアナはクララの長くなった金色の髪を触りながら聞いた。「わかりません、だけど私たちは何年でもクララが目覚めるのを待たなければなりません。彼女は正当なタピア家当主だと精霊石が認めています。いや、、そんなことより、、クララの笑顔をみたいと、、個人的に願っています。」セリオは初めて自分の気持ちをリアナに言った。「セリオ、私も同じ。彼女が何者であろうとも私はクララが目覚めたら、もう心配はいらないと言ってあげたい。それに、まだ彼女と薔薇の誓いをしていない。だから彼女が目覚めるのを待つ、何年でも。だって五百年待ったんだ、待てなく、、ないさ」リアナはクララの髪を持ち上げキスをした。
炎のと薔薇の物語を読んでくださって本当にありがとうございます。
このお話を持って第一章は終了いたします。
ありがとうございました!
次話より第二章がスタートいたします。
どうぞ引き続き読んで頂ければ嬉しく思います。
皆様の心地よい一人時間に沢山の幸せが降り注ぎますように。
愛を込めて ねここ




