表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
薔薇と炎の物語  麗しの皇帝様、、私、訳あって男のフリしてますが可愛いリボンが大好きです。  作者: ねここ
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/127

クララとレオン

 会議場に向かうため邸宅の中央階段を降りエントランスに出た。そこで信じられない人を見た。ウーゴとレオンが邸宅の入り口に立っているのだ。階段を降りてきたクララを見てウーゴは騎士が止めるのを振り払いクララの方にズカズカと歩いて来た。ウーゴは公爵家の正装を身にまとい厳しい表情を浮かべクララに向かってくる。クララは恐ろしさに体が硬直した。その様子をみたカルメラはすぐにクララの前に立ちはだかり両手を広げ通せないようにした。しかしウーゴはカルメラを手荒く払い除けクララの腕を掴み床に倒した。そして倒れたクララの両手を後ろに回し手首を自分のスカーフで縛り上げた。そこにレオンも現れ倒れたクララの肩に足を乗せ「偽物め!!」と言葉を吐きクララを強く踏みつけた。

 「ウッ、、」クララは短く声を上げた。カルメラはすぐに立ち上がりレオンの足を払い除けクララに覆いかぶさり叫んだ。「何をなさいますか?!ここはリアナ様がいらっしゃる邸宅!勝手な真似は許されません!!」そう言って縛られ震えるクララを抱きしめ二人を睨みつけた。「一介のメイド如きが何を!」カルメラに足を払われ体制を崩したレオンは顔を赤くし烈火の如く怒り出した。二人を追ってきた騎士がカルメラに前に立った。「タピア公爵様、許可なく邸宅に入る無礼は許されません!今すぐに出て下さい」そう言いながら二人を掴み入り口に戻そうとした時、セリオとリアナが現れた。

 

「一体何事だ?!」縛られているクララを見たセリオはウーゴに強く抗議した。「タピア公爵!!一体何事ですか!なぜ彼女が倒れ縛られているのだ?!」ウーゴはセリオにすごまれ後退りをした。その間にカルメラは縛られたクララの両手のスカーフを外し立てないクララを抱きしめウーゴ達を睨んだ。クララは恐怖で震えている。リアナは震えるクララを見て両手を握りしめウーゴとレオンを睨みつけた。


「リアナ様、セリオ様、、その女は事もあろうにこのタピア家次期当主のレオンになりすましナバス城に潜り込んだ悪女なのです!!レオンに魔法を使い動けないようにし、私たちタピア公爵家を脅し、ミラネス家および各公爵家の跡取りの皆さんを騙し、王家の転覆をはかろうとした魔女なのです!!」

 ウーゴは胸のポケットからハンカチを取り出し額の汗を拭きながら目の前に立ちはだかるセリオに訴えった。クララは震える指先を握りウーゴの言葉に絶句した。実の父から完全に悪役に仕立て上げられたのだ。

「タピア公爵、それは本当なのか?」セリオは両手を組んでウーゴを見下し聞いた。「ま、紛れもない事実、なぜなら本物のレオンはここに居るからです。」ウーゴはセリオの迫力に生唾を飲み込み隣に立っているレオンを見た。「リ、リアナ様、私がレオン・タピアと申します。本来なら私がここにいるはずでしたが、こ、この女の魔法にかかり部屋から一歩も出られずようやくタピア家の本来の力を取り戻しこうしてこの女の悪事を訴えに来ることができました。急な来訪お詫び申し上げます。一刻も早い対応が必要だったため、お、お許し下さい」レオンは言葉に詰まりながらリアナに深々と頭を下げた。リアナは何も言わず冷めた瞳でレオンを一瞥した。

 セリオはウーゴを睨みつけ踵を返し床に座り込み震えているクララに近づき優しく話しかけた。「本当の名前は?」クララはショックと悔しさに両手を握りしめセリオに言った。「クララ・タピアでございます」その瞬間レオンが叫んだ「お前よくも姉上の名前を!!恥を知れ!!」

 クララはその言葉を聞き唇を噛み締めた。ウーゴとレオンが結託している今、私が何を言っても信じてもらえない。実際にクララはレオンになりすましここにいた。その事実だけが真実で現実だからだ。ああ、もう信じてもらえないかもしれない。もう今更真実を話してもダメかもしれない。クララの瞳から涙が落ちた。


 セリオはそんなクララを優しく見つめ静かに問いかけた。「お前の言い分は?」クララは最悪な状況に追い詰められて言葉が出ない。悔しさに唇を噛み締める。何を言っても自分の無実を証明できる方法が無い。だけどなかったとしても言わなければ、、クララは両手をさらに強く握りしめ流れ落ちる涙を拭いもせず言葉に詰まりながら言った。

「私は、父にレオンになりすまし、レオンがタピア家当主として覚醒するまで、、城に入れと言われ、、、か、髪を切りドレスを処分し、、クララ・タピアはその日急病で死んだと、、処理され、、城に参りました。皆さんに、、嘘を言っていたことは事実で変えようのない,,現実。、、毎日後悔や、罪悪感で一杯になっておりました。これからどうして良いのか分からず、、今日まできてしまったのも事実です。どんな罰も甘んじて受けます。けれど私は自分がクララ・タピアである事と、絶対にナバス帝国及び、、ミラネス王家を、各公爵家次期当主様に対して反逆を企てたことは一切ございません。それだけは絶対にありません」クララは嗚咽を堪えながらセリオを見た。

 

 「何を言うか!!この浅ましい女の言うことに騙されないで下さい!!なぜなら私たちタピアはそんなことをする、替え玉を用意しなければならない理由が無いのです!!」ウーゴはクララを指差しながら睨みつけ「私の亡くなった愛しい娘のふりをするとは!悪魔のような女です!」ともう一度強く睨みつけた。セリオはウーゴに言った。「クララが偽物であればこの二年幾度もチャンスがあったにもかかわらずなぜ我々を攻撃しなかったのか?」その言葉を聞きウーゴは口籠った。

 

「タピア家次期当主候補のレオン、そしてクララ、魔法を見せなさい」リアナは一連のやり取りを見て突然二人に言った。

 先程雪山に放った魔法の火球の色は黒に近い赤だった。使う人物によってその色は変化する。あの魔法がクララを雪崩に巻き込んだ。許すわけにいかない。クララをここまで追い詰めたのはこの二人だと明確な証拠が欲しい。平然と嘘を並べるこの厚かましい二人を公的に処分する名目が必要だ。

 

 「ここではまずいですから邸宅の外に出ましょう」セリオが言いウーゴとレオンは早速表に出て行った。クララはカルメラに支えられて立ち上がり表に出ようと歩き出した。「クララ」リアナがクララを呼んだ。クララは涙を拭いリアナの方に振り返った。リアナは自分のローブをクララにかけた。「私は他のコートを着るからこれを羽織って行きなさい」クララはリアナの優しさに心打たれた。こんな状況になっても優しくしてくださる。それに、クララと呼んでくれた。リアナ様は私をクララだと認めてくれた。クララは胸が詰まり苦しくなった。リアナにお礼が言いたいが苦しくて声が出せない。それでも気持ちを伝えたくて深々と頭を下げリアナに感謝した。

 

 私はレオンになりすましリアナ様を裏切っていたのは事実、だけど決して反逆は企てていない。私の忠誠心は誰にも汚せない。それをリアナ様に、セリオ様に、みんなに証明したい。クララは覚悟を決めた。

次話をもちまして第一章を終了いたします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ