秘密がバレた
「う、、」クララは意識を取り戻した。カルメラはクララの手を握っており意識を取り戻したクララをみて涙を流し何も言わず抱きしめた。「、、カルメラ?」クララは状況を把握できず、なぜ自分がベットにいるのかさえわからなかった。部屋は日中にかかわらずカーテンが閉められておりその隙間から白い光が見えた。その光を見つめながら自分に何が起きたのかを考えていた。、、確か雪山に向けて魔法を、、、、、。光を見つめ黙っているクララをみたカルメラは何も言わずにそっと離れそっとカーテンを開けた。眩い光が部屋いっぱいに差し込む。クララはその光をじっと見つめ、それからゆっくりと起き上がった。、、頭が痛い、、。ぶつけた?、、違う、、雪崩、雪崩に巻き込まれた!クララは全てを思い出し目を見開いた。「カルメラ、ここは?」クララは我にかえりカルメラに声をかけた時、自分の服が寝巻きに変わっていることに気が付き絶句した。
、、、ああ、ばれてしまった。
クララは何も考えられなくなりそのまま静かに涙を流した。その姿を見たカルメラはいたたまれなくなりクララに涙を拭くようタオルを渡し、上からクララを優しく抱きしめた。「ご,ごめんなさい、、嘘を、、嘘をついて、、、」クララは声にならない声でカルメラに謝り続けた。
「お目覚めになったと、、報告して参ります。」カルメラは自分の涙を拭い俯き部屋を出て行った。クララは黙ってタオルを目に当て静かに泣いた。
カルメラが出て行ったタイミングでリアナが入ってきた。クララはタオルを外しリアナを見つめた。リアナもクララを見つめている。静かな時が流れクララはリアナに声をかけた。「リアナ,,様、嘘をついて、、申し訳、、」クララは言葉が出なかった。信頼してほしいと言いながらずっと嘘をついていた。裏切らないと言いながらずっと裏切っていた。言い訳もできない、できることは謝ること以外ない。クララは嗚咽を堪えた。こんな形でばれるなど望んでいなかった。毎日罪悪感を抱えながらどうして良いかわからず、こんな結末を迎えてしまった。リアナ様を騙してしまった。もう二度と笑顔を向けてもらえない。私が弱い人間だから裏切り行為に加担してしまった。「、、ご、ごめんなさ、、」言葉にならないほどの後悔と罪悪感で涙が溢れ、その涙はポタポタとタオルを握りしめる手の上に落ちた。激しい後悔で胸が圧迫される。クララは胸に手を当て心臓を掴むように手を握りしめ嗚咽を堪えながらリアナに言った。「ウッ、リ、リアナ様、、嘘を、、ついて、、ごめんな、、さい、、。」顔を上げ流れ出る涙を拭いもせずリアナを見つめた。リアナは何も言わずクララに近づき流れ出るクララの涙をハンカチで優しく拭いそれをクララの手に握らせた。そしてリアナはクララの額にそっと自分の額をコツンと当て、クララの頭をくしゃくしゃと撫で何も言わず部屋を出て行った。
クララは何も言わないリアナの優しさにさらに罪意識を感じた。ごめんなさい、、リアナ様、ごめんなさい。嘘をついていた私に優しくしてくださって、本当に、、ごめんなさい。クララはリアナのハンカチを握りしめ自分の額に当てた。何も考えられない。もう私はここにはいられない。クララは覚悟を決めた。
少ししてセリオが入ってきた。セリオは優しい瞳でクララを見つめ「体調は大丈夫か?」と聞いた。クララは頷き,姿勢を正しセリオを見つめ言った「セリオ様、ずっと、嘘をついておりました、、。話そう,話さなければ、、そう思い今日まで来てしまったこと、お詫びのしようも、、ありません。後ほど、、お時間を頂ければ全てお話ししたいと思います。」クララはセリオに言った。「体調は大丈夫なのか?」セリオはもう一度クララに聞いた。「はい、大丈夫です、ご迷惑を、、おかけしました。着替えてすぐにお話しします,どちらに行けばよろしいでしょうか?」クララは真っ直ぐにセリオを見つめ言った。「、、では今朝集まった会議室で待っている」セリオはそう言って部屋を出て行った。
セリオは全ての辻褄があった事がわかった。彼女は間違いなくレオンの姉、クララ・タピアだ。リアナ様がイフリートの主人ではなかった理由、二歳年上の彼女が先に生まれイフリートは彼女を主人として選んでいたのだ。だから彼女は炎の中焼け死ぬ事なく生きながらえた。全てが導かれているように感じた。二千年前の失敗を、五百年前の後悔を取り戻す時が来たのかも知れない。
クララがベットから出ようとした時カルロスとグロリアとダフネが飛び込んできた。
「あ!!」三人はクララの本当の姿を見て固まった。カルロスはすぐに後ろを向き「失礼」と言った。「レオン、、あなた、、やっぱり女の子だったのね、、」グロリアは瞳を潤ませクララを抱きしめた。「薄々そうじゃないかと思っていた」ダフネもクララを強く抱きしめた。「俺も、実は男にしては柔らかいと思ってた」カルロスが言うとダフネが「カルロス最低!」と言って笑った。「みんな、、嘘ついててごめんね、、私、、」クララはリアナに渡されたハンカチで涙を拭いながら三人を交互に見た。「何も言わなくていい、あ、ちょっと待って」グロリアは自分のメイドに何かを言いメイドは部屋を出て行った。「今まで大変だったね、、」ダフネが言った。クララは首をふりもう一度謝った「嘘を、ずっと嘘をついて、、ごめんなさい、、」涙を見せるクララを見つめカルロスが言った。「俺はお前が女の子だと知ってホッとしたよ。男に色気感じていると悩んだ」カルロスが言うとダフネは呆れ笑いをした。「ほんとカルロスって!!」グロリアは腕を組んでカルロスを睨みつけた。クララはそんな三人に心から感謝した。「みんな、、私は今までずっと騙していたのに、、怒らないでくれて、ありがとう。、、、実は今からセリオ様とお話するの、、」クララはセリオとの話し合いが終わればもう皆に会えないかもしれないと思った。初めて出来た大切な友達。クララは俯き唇を噛み涙を堪えた。その様子を察したダフネが言った。「私はレオンを仲間だと,家族だと思っているから」そう言ってもう一度抱きしめた。「俺も同じ」カルロスはクララの頭をやさしく撫でた。「私も同じ」グロリアはそう言って戻ってきたメイドからドレスを受け取りクララに渡した。「さあ、これを着なさい。」そのドレスは大好きな薄いピンクのドレスだった。嬉しそうにドレスを見つめる様子を見たグロリアはクララを抱きしめ「もっと可愛いドレスあるから、後であげるからね!」と言ってクララの頬にキスをした。「みんな、、ありがとう、」三人はその言葉に頷き部屋を出て行った。
クララはもう制服を着ることは許されないと思っていたところにグロリアがドレスを持ってきてくれた。クララ・タピアが死んだことになった日、タピア公爵家の正装もドレスと一緒に燃やしてしまい何も無くなってしまった。今私が唯一着ることができるのはドレスだけだから。ありがとうグロリアありがとう。ダフネもカルロスも私を家族だと言ってくれた。私のかけがえのない友達。大切な仲間で家族。ありがとう。
その後、カルメラが着替えを手伝ってくれた。「美しいです。」何気なくそんな言葉を言ってくれたカルメラにお礼を言った。「カルメラ、今までありがとうございました。」きっともう会えないから。クララはカルメラの手を握り微笑んだ。
カルメラは瞳を潤ませ下唇を噛み涙を堪え頭を下げた。いつも寂しそうな瞳をしていたレオン様。どんな想いで男の子として生活をされていたのだろう。カルメラはこれまでの日々を思い出し涙が溢れて顔が上げられなくなった。それでも今ここで感情を見せるわけにはいかないと手を握りしめサッと涙を拭いクララを会議室に案内した。
薔薇と炎の物語を読んで下さりありがとうございます。
残り二話で第一章が終了いたします。
ここまでお付き合いくださった皆様に心より感謝いたします。
引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。
ねここ




