表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
薔薇と炎の物語  麗しの皇帝様、、私、訳あって男のフリしてますが可愛いリボンが大好きです。  作者: ねここ
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/127

高熱

 合宿に向けて一行は出発をした。荷物も多く一人一台の馬車に乗り、それぞれのメイドも一緒に付き添い北の山地を目指した。リアナの馬車は前後に近衛兵が五人づつ付き添い、そのほか十人の騎士が馬に乗り付き添っている。目指す場所までは丸一日かかるが実はその近くはタピアの領地がある。タピア公爵家の領地は内陸のみ、他の公爵家は海側なのだ。タピア家は皇室の背後を守る建国当時最も信頼されていた公爵家だった。それがタピア家の誇りだったのだが、五百年前の事件で多くのことが変わってしまった。それでも新生タピア家はミラネス王家、各公爵家の信頼を取り戻しようやくまた4大公爵家として成り立っている。クララはその信頼を守りたいと思っているが、既に死んだことになっている自分ができることは何も無いとわかっている。とても悲しいことだ。


 丸一日かけて北に山の王家所有の邸宅に着いた。


「あー腰痛いわ」ダフネが腰を叩きながら馬車を降りてきた。「ふぁーよく寝た」カルロスは腕を伸ばしながら馬車から飛び降りた。「おつかれ様」グロリアは颯爽と降りてきた。「グロリア疲れないの?」ダフネは腰を叩きながらグロリアに聞いた。グロリアは毛皮のコートを羽織りながらダフネに言った「私の領地、、一番遠いのよ。帝都まで四日、、これくらい平気よ」グロリアは笑いながら言った。「ところで、、レオンは?」ダフネが言った。「どうしたんだろ?」三人がレオンにを探しているとカルメラが邸宅の中から現れ三人に言った。「カルロス様,グロリア様、ダフネ様、、レオンさまは熱が出てしまい先にお部屋で休んでおります。皆さんに申し訳ないと伝えるよう仰せつかり参りました。」カルメラは一礼し三人を見つめた。三人はカルメラに言った。「後で様子を見にゆきます」


 クララは馬車に乗っている時に初めて城に来た時の事を思い出していた。レオンになりきるため髪を短く切らされ、大好きだったドレスやリボンを焼却炉で焼き、馬車に乗せられ半ば追い出されるように城に行った日を思い出していた。皆の前でレオンだと嘘をつき、今でもその嘘をつき続けている。何度も心が揺らいだ。本当のことを言いたい。疑われる日々、本当の自分は死んだと処理され帰る場所も行く場所もない。今でも毎日、罪悪感に苦しんでいる。そんな事を道中ずっと考えていたらとうとう熱が出てしまい早速初日から寝込んでいる。情けない。馬車の中で風邪を引いてしまったのかもしれない。


 眠っては目覚めを繰り返していると、グロリア、カルロス、ダフネが訪ねてきた。「ごめんね、こんな状態で、、」クララは顔を真っ赤にして謝った。「お前熱高いな?」カルロスが真っ赤になったクララの顔を見て言った。「レオン、メイドに行って作らせたスープ飲んで」グロリアがスープを持ってきてくれた。「レオンこれ、、」ダフネはのど飴をくれた。「これはうちの領地で取れるミントで作ったものよ。喉にいいから舐めてね」「あ、俺も、」カルロスは襟巻きをくれた。「風邪をひいた時は首を温めると良いらしいから」クララは病気になっても放って置かれた日々を思い出した。それが普通だったがこうして初めて親切にしてもらえ涙が出た。暖かい。「みんな、、嬉しい、、本当にありがとう、、とても幸せだよ」涙を流すクララをカルメラがハンカチで涙を拭いてくれた。そして冷たいタオル額に当ててくれクララはそのまま眠ってしまった。


 次に目が覚めたとき、目の前にリアナがいた。クララはそれを夢だと思っていた。「夢の中のリアナ様も美しいです」クララはリアナに言った。「フフ、夢だと思う?」リアナは下ろしている髪を片方だけ耳にかけながらクララに言った。

「リアナ様が、、ここにいるなんて、、夢以外ありえないから!」クララは笑顔でリアナに微笑みそっとリアナの髪に触れた。「夢だとこんな事も出来ちゃう!、、、全部、、夢なら、、よかったのに。リアナ様、、嘘を、、ごめんなさい。」クララはリアナを見つめ一筋の涙を流し、瞳を閉じた。


 その頃ウーゴとレオンは既に雪山近くにテントをはり身を潜めていた。「父上、以前から父上は姉上の事を毛嫌いされているように感じていましたが、姉上は父上の娘では無いのですか?」レオンは幼い頃から感じていた疑問をウーゴにぶつけた。

 母親のマカレナは義理の姉でウーゴの前妻だったエルバとクララのことを口にする事を許さず使用人達にも徹底し箝口令を敷いていた。だからレオンも母親に聞く事ができなかった。母の妹で叔母のアマンダに密かに聞こうとしたが、アマンダはマカレナと距離を置いており結婚してタピア家から出て行ってしまった。レオンは誰にも聞く事ができず勝手な想像をし姉は父の子では無いとずっと思っていた。

「レオン、私はクララの母親のエルバとは恋愛結婚だった為タピア公爵家当主となったエルバとの結婚はタピア一族から財産狙いの結婚だと陰口を言われた。彼女は最初こそ私を庇ったが、私がタピア家の為に始めた事業が上手くいき始めると見解の違いからお互い喧嘩をするようになって、私は努力をしてタピア家の為に夜も寝ず働いたがやり方が汚い等罵られ深く傷ついた。大きな事業と言うのは多少強引なことをしなければならない時がある。」ウーゴはそう言ってレオンに頷いた。そこには何をするにでも犠牲は付き物だと言わんばかりの態度だ。レオンも頷いた。「それで無能などと罵られ傷ついた私はそれでもエルバのことを理解しようと努力したがタピア家が火事になり彼女は生まれたばかりのクララを残し死んでしまった。クララを守らなければと無我夢中になっていた私を大きな包容力で受け止めてくれたのがお前の母親マカレナだ。マカレナはクララを自分の子のように育て私を支え愛してくれた。」ウーゴはそう言ってレオンの手を握った。「だけどクララはマカレナはに懐こうとせず我儘を言い嘘をつく子供だった。レオンがお腹にいるときクララはマカレナを池に落としたのだ。危うく流産しかけ二人とも死ぬところだった。私は領地に居なかった為その報告をマカレナから受けた時は衝撃を受けた。すぐに戻りクララを罰しようとした時マカレナはクララを庇った。きっと母親をお腹の子に取られたように感じたことだからと。だがクララはやっていないと一点張りで認めなかった。頑なに自分の非を認めなかったクララをマカレナは残念に思いそれ以来クララと距離を置いたのだ。私もそれ以来性格が悪魔のように歪んでいる人間を娘だと思うことをやめた。だから自分の娘であってもクララに対する感情はレオンと同様にならない。私が愛するにはお前だけだ」レオンはその話を聞き納得した。クララは自分と母を殺そうとした悪女であり、殺されて当然の女だ。あの強い魔力も本来なら自分に与えられるはずだったがクララが奪ったのだと確信した。そんな存在はタピア家の為にならない。自分達を殺そうとしたクララを殺すことは正義なのだ。必ず入れ替わりリアナ皇女と結婚し、タピア家の発展に尽くすとレオンはウーゴに誓った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ