リアナがいない日々
あの日から三ヶ月が経ちクララは自分の気持ちを認めた。
私はリアナ様が好きだと。
女性同士であってもリアナ様が大好き。でも、、本当はいつからか、、リアナ様が女性に見えないなんて、リアナ様に言えないけど言ったら笑われちゃうかな。
でもそう考えると私は男に見えているのかしら?男にしては手足は細くて、力もなくて、、。
、、、あれ以来お父様、ウーゴが何も言ってこない。そんな事ありえるのかな、、。時々タピア家の事を考える。ウーゴは何を考えているのだろう?レオンはどうしているのだろう?お母様は、、殺されたんじゃないか、、なんて、そんな怖い事を考えてしまうほど私はウーゴが嫌いなんだとわかった。幼い頃から厳しくて、何かを失敗すると鞭で叩かれ、優しい言葉などかけてもらえたことは無かった。いつも乱暴な言葉か無関心か。人の目を気にする人だったからドレスや装飾品は買い与えられていた。だけど一切私に興味がなく一緒に食事をした事も無いに等しい。けれどレオンには話しかけ笑いかけいい父親だった。それを横目に育った私は最初は気に入られようと努力をし、無視され続け、最終的には目につかないようにしていた。だけどある日、たまたま夜遅くにバルコニーで魔法を使っている姿を見られ、それから毎日攻撃魔法を練習させられ出来なければ鞭で打たれ、倒れるまで魔法を使わされ、レオンが魔法を少し使えるようになったら私に興味が無くなりレオンに付き添いタピアの当主に指名した。任命の時一族からの反対があったのか無かったのかさえ知らない。けれどある日突然呼び出されレオンの身代わりとしてここに来た。最初は不安で一杯だったけれど今人生で一番幸せな時間だと言える。でもきっとウーゴはこのまま黙っていない。この沈黙の時間が怖い。何を考えているのか不気味で怖い。
いつまでレオンのふりをすればいいの?、、勇気を出して、、本当のこと、、リアナ様やセリオ様、、みんなに言いたい。
「ねーねー、レオン、髪の色変わったよね」グロリアが昼食の後テラスで紅茶を飲むクララの髪をみて言った。「自分でも、、そう思う」クララは少し長くなった襟足の髪をつまんで言った。「人参みたいな色になったなぁ」カルロスが言った。「にんじん、、確かに、、」クララは赤味が少し抜けた髪の色を見て言った。「それに、、なんかレオンって綺麗になったよね」ダフネが言った。「きれい?」クララは首を傾けダフネを見た。「一年前は可愛い男の子に見えたけど今は綺麗な子だよね」「おお、俺同じ男なのに時々ドキっとする時あるんだよなぁ」カルロスは笑いながら言った。「面白い冗談だね!あ、そろそろ授業始まるから行こうよ!」クララは内心焦った。この話題はこれから避けなければ。最近どう頑張っても身体も見た目も男の子に見えなくなってきた。身代わりとして限界が近いのかもしれない。もし、本当の事を言ったらどうなるだろう?王家と各公爵家を騙した当事者として最悪の場合処刑されるかもしれない。でもこのまま皆を欺き続けそのうちレオンと入れ替わってもその後、ウーゴに殺される可能性が高い。クララ・タピアは既にもういない人間だからウーゴに殺されても気がつく人などいない。
どちらを選んでも私の生きる道はない、、。
それなら、どうせ死ぬ運命ならば生まれて初めて幸せを感じさせてくれたリアナ様、本当の親のように心配してくれるセリオ様、幼馴染のように暖かい仲間たちの為に死にたい。
クララは本当の幸せを与えてくれた人の為にこの命を使いたいと思い始めた。
「レオン、何ボーッとしてるんだ?遅刻するぞ!!」カルロスが立ち止まっていたクララの手を引っ張り、四人は走って教室に入った。「ハァハァ、カルロスありがとう、お陰で間に合った!」クララは息を切らしながらカルロスに礼を言い自分の席に着いた。カルロスは返事の代わりにウィンクし言った。「ところでレオン、リアナ様居ないと寂しいな」クララはその言葉に頷き、後ろを降りかえりいつもリアナが座っていた空席を見つめた。
リアナは居ない。三ヶ月間王家の行事があり今日も城にいない。クララは空席を見つめながら寂しく思った。今までもいつも会えていた訳では無かったが、こんなに長くリアナの顔を見れない日が続くことは無かった。図書室に行っても、神殿に行って寂しく感じている。
リアナ様はお元気かしら、、クララは毎日リアナを思い出していた。
「ちょっと聞いて!!ニュースよ!!」ある朝教室でカルロス、グロリアと共に授業の準備をしているとダフネが教室に飛び込んできた。手には手紙を握りしめており興奮気味に三人に声をかけた。「大ニュースよ!」「一体何?どうしたの?!」グロリアが慌てて立ち上がりダフネの方に駆け寄った。「グロリア、以前付き合ってたアルバ・ルオス!あの詩人の男、リアナ様に一目惚れしたらしくこともあろうに手紙を渡したそうで、」その言葉を聞きクララはガバッと立ち上がりテーブルの両端を力一杯掴み言った。「なに?その不届きな男!!」クララはドス黒い嫉妬の炎が心に宿ったのを感じた。「それが、、」ダフネが笑い出した。「なんだよ,早く教えろよ!!」カルロスが言った。「早く!」!グロリアも言った。クララは自分の中の黒い感情に戸惑いながらもその続きが気になりせがむように言った。「ダフネ早く続きを言って!!」ダフネはわかったわかったと言わんばかりに両手の掌を三人に向けながら話し始めた。「それが、リアナ様に求婚したい貴族の令息達が結集してアルバ・ルオスの邸宅に乗り込んでね、彼を素っ裸にして帝都にあるデートスポットのイネス湖に投げ落としたらしいの。あの湖には令嬢達の憧れのレストランがあってそこにいた令嬢達に生まれたままの姿を見られたらしいわよ!あの女ったらし,とうとうバチが当たったわね!笑っちゃう!!」それをきいたグロリアは大笑いを始めた。以前彼と付き合っていたが不誠実な男だった為皆に反対されグロリア自身も冷静になり結局別れた。「いい気味だわ!リアナ様が天罰を与えてくださったわ!」グロリアは大喜びし、それを聞いたダフネは大笑いをしている。その姿を横目にカルロスは「男も怖いな,,おい」そう言ってクララを肘でつっついた。「、、リアナ様ってすごく人気があるんだね、、」クララはリアナの人気を知って複雑な気持ちになった。
「あははは!レオン、お前世間知らずも程があるぞ?!リアナ様は歩くたびに求婚されるって有名な話だぜ?!」カルロスは言った。「、、そうなんだ、、」クララは寂しく思った。自分たちだけのリアナ様じゃ無いんだと思い知らされた気がし俯いた。「さては、、、レオン!リアナ様に惚れてるな?」ダフネは俯いて両手を握りしめるクララを揶揄うように言った。「え?違います!そんな邪な気持ちはありません!」クララは顔を上げムキになって否定した。その頬は赤く染まり誰がどう見てもリアナが好きだとわかる様な有様だ。「ほんとレオンって可愛いわね。」グロリアがクララの頭を撫でた。「なにそれ、、」クララは不服そうに言った。「なんだっていいじゃ無い?!私たちリアナ様の一番近くに居るんだからそれだけで幸せよね!!」ダフネがクララの肩をポンポンと叩きウィンクしながら言った。クララは揶揄われた事は不満だったがそれ以上に皆同じようにリアナを大切に思っている事が嬉しかった。「うん!!」三人はダフネの言葉の同意した。そして四人は団結し、「これからも我々がミラレス王家をお支えするぞ!」と誓い合った。




