フランシスカ?
「次はダフネ!」セリオがダフネを呼んだ。「はい!」ダフネは髪を結びながら草原の中央に立ち標的を見つめた。そして静かに息を吐きだしスッとその場にしゃがみこみ大地に手をついた。「デジエルト!」ダフネが呪文を唱えると地中から砂が湧き上がり瞬きをする間も無いほどの速さで鉄の塊を飲み込んでいった。まるで大きな蟻地獄が蟻を飲み込むように砂が鉄を飲み込み何も見えなくなった。その様子を見届けたダフネは指を鳴らした。蟻地獄の様になっていた池中の砂はパッと消え先程の鉄は一枚の薄っぺらい鉄板にかわっていた。
クララはまるで手品のような魔法に驚きまた拍手をした。カルロスとグロリアもその様子にあっけに取られながらも拍手をした。「意外と上手くいったかな?」ダフネが帰ってきた。「ダフネ、手品のようで不思議で仕方がない。正方形の鉄の塊が一枚の鉄板に変わるとは、なぜああなるの?」カルロスが聞いた。「砂ってすっごく重いんだよ。一粒は軽いけど大量になるとああなる」ダフネがカルロスに説明しているとセリオが言った。「ダフネは賢いから出来るんだ、なかなか砂を扱う魔法はお目にかかれない、初めて見た、、素晴らしい!」リアナも頷いている。「リアナ様のサポートがあり、想像力が湧き上がりました。本当にありがとうございます!」ダフネはクララの肩を叩き「頑張って」と言ってウィンクした。「ありがとうダフネ」クララは立ち上がりセリオを見た。「レオン!」セリオが名前を呼んだ。「はい!」クララは真紅のローブのリボンをそっと触り深呼吸し、草原の真ん中に立った。
風が少しある。草原の草が風になびき心地よくリラックス出来る。クララは片腕を上げ指を軽く握り人差し指を伸ばすと目の前にイフリートが現れた。「ふふふ」クララはイフリートの頭を指先で撫でた。そして標的を見つめ集中し呪文を唱えた。「エバポラシオン!」その瞬間四角い鉄の塊は跡形もなく蒸発し、草原の心地よい風がその場所の草をゆらした。「ありがとうイフリート」クララはイフリートの頭にキスをしみんなのところに戻って行った。
「ただいま!」クララは皆のところに戻った。しかし誰一人クララに声をかけない。あれ?失敗したのかな、、クララは不安になりセリオを見た。セリオは驚きの表情をし言った「次元が、、違うな、、」クララは意味がわからなかった。不安になり眉を寄せ黙っているとリアナがクララに言った。「フランシスカ、、を見たような感覚でした。フランシスカ、、タピアを、、。」クララは尊敬するフランシスカに例えてもらえ心の中で喜びが湧きあがった。喜びを爆発させたようなとびきりの笑顔をリアナに向け一礼をし真紅のローブを脱いだ。(嬉しい!!リアナ様に尊敬するフランシスカに例えてもらえるとは!!)クララはローブを畳みながら喜びを噛み締めていると「おーまーえ!!」突然カルロスがクララの頭をバシバシ叩き、ダフネもグロリアも同じようにクララをバシバシ叩き言った。「レオン!!凄すぎる!!あんた何者???」グロリアはそう言ってクララを抱きしめた。「弱いくせに強い?」ダフネもその上から抱きつき最後カルロスも抱きついてきた。クララは押しつぶされながらも仲間の暖かさに笑いながら感謝した。「今日はここまで!解散」セリオとリアナはそのまま城の方に去っていき、四人はお互いに戯れ合うように喜びお互いの健闘を称えた。
その夜無事魔法が使えた事を神に感謝するためクララは一人神殿に入った。あの日以来時々一人で神殿に入り静かに神と向き合うと心が落ち着き悲しい気持ちが遠のくような気がしていた。無の状態になれる。自分を消滅させ神の導くまま受け入れたら良い。そんな思想に変わってゆく。それが良い事なのか悪い事なのかわからない。だけど生きる意味を考えなくて済む。
今日のリアナ様も素敵だった。あ、私はまだ悟れないわ。無になろうと思っていたのに早速リアナ様の事考えている。「ふふふっ」クララは現金な自分に笑えた。それに皆ともっともっと仲良くなれた。リアナ様とセリオ様に少しだけ信じてもらえるようになってきた。本当に嬉しい。今日も祭壇前の椅子に腰をかけ静かに祈っていた。
「コツ、コツ」誰か入ってきた。クララは今までここで誰かに会うことがなかったので驚き振り返った。そこには入浴を済ませた後なのか濡れた長い髪をそのまま乾かさず、後ろに撫で付け白のコートを着たリアナだった。そんな姿を見たことがなかったクララは驚き一礼し、慌てて神殿から出ようと出口に向かった。すれ違う時にもう一度頭を下げて出口に駆け出した時リアナに手を掴まれた。「まって!」クララはランプの暖かい光に照らされた中リアナの顔をみた。リアナは優しく微笑みながらクララを見ていた。(神、、リアナ様は神にように美しい、、)クララは緊張しリアナに言った「リアナ様、、」リアナは手を掴んだままクララを引き寄せ耳元で言った「やはりあなたはフランシスカの生まれ変わり?」クララはリアナがまるで男性のような力でクララを引き寄せ低い声で言った言葉に心臓が爆発しそうなほどときめいた。驚き答えられないクララを見つめリアナは言った。「今日のあなたは美しかった」クララは倒れそうなほど頭の中が真っ白になった。(そんな風に,,思ってくださったなんて、、、)クララは顔が真っ赤になりながらリアナに礼を言った。「ありがとう、、ございます、、失礼します!」これ以上リアナを見たら死んでしまうほど胸が苦しくなりクララは逃げるように立ち去った。(ああ、もう,,リアナ様が好きすぎて憧れ通り越したかも、、、。)クララはその夜先ほどのリアナを思い出し一睡もできなかった。




