それぞれの魔法
翌日の朝、ダフネとカルロスの魔法実践が始まった。クララは昨夜リアナの事を考え悶々として眠れなかったが、そのおかげでウーゴに対する恐怖は和らいだ。
今日のリアナは髪をハーフアップにし、白いローブを羽織り近衛兵たちと馬に乗り現れた。その姿はクララにとって神が降臨したかのように輝いて見え、真直と前を向いて馬に乗るリアナの瞳にときめいた。これは憧れよ、、クララは時々呪文のように呟きトキメキを正当化しようとした。馬を降り風を受け歩いて来るリアナは一部の隙もないほど凛として美しかった。話す姿も微笑みも上品で威厳がありクララはその全てを守るために命をかけても惜しくないと心の底から思った。
リアナはダフネの魔法をサポートしていた。リアナの目の前に大地の精霊ノームが現れリアナの指示を待っている。ダフネは大地に地震を起こす魔法を唱えた「テレモト!」突如目の前の大地が揺れ始め地面が割れた。そこに、揺れによって不安定になった地面が落ちてゆき大きな地割れは周辺のものを全て飲み込んでいった。ダフネが指を鳴らすとパッと地割れが消え元の大地に戻った。「ダフネの魔法は安定していますね、なかなか良いと思います。」リアナはダフネを誉めた。ダフネは嬉しそうに「リアナ様のサポートのおかげです」と言って頭を下げていた。
クララはそんな二人のやり取りを見ていた。視線をリアナに向けるとリアナと目があった。クララは急に熱が上がったような気持ちになり目を逸らしカルロスを見た。(きゃー目があった!!)クララは意識すればするほど平常心でいられなくなった。平常心を取り戻すまでは出来るだけリアナを見ないようにした。
「リアナ様,よろしくお願いします」カルロスはリアナに一礼し一歩前に進んだ。リアナは頷き風の精霊シルフィードを召喚した。カルロスは風の魔法「ビエント」を使った。柔らかな風が吹き始めたと思った瞬間一気に目の前の草原の草が根こそぎ風に飛ばされて巻き上げられた。一瞬にして目の前の草原が消えた。カルロスは指を鳴らすと元の草原に戻った。「カルロス、さすが瞬発力があります。強いて言えば持続力が欲しいですね、でも素晴らしい魔法でしたよ」リアナはにこやかな笑顔を浮かべカルロスに言った。「リアナ様、私は初級の風の魔法がここまでの力があるとは思っても見ませんでした。持久力を鍛えたらもっと強くなれるでしょうか?」カルロスは風を受け少しずれたローブをなおしながらリアナに聞いた。「もちろんです。今の二、三倍の力が出るでしょう、そのための努力も大変ですがカルロスならできると信じていますよ」リアナはセリオを見た。
「リアナ様、今日はここまでです。ありがとうございました。」セリオはリアナに一礼をした。四人も整列しリアナに一礼した。「では、お先に」リアナは城に向かって歩き出すと近衛兵が馬を連れて現れ颯爽と馬に飛び乗り去って行った。
クララはリアナに見惚れていた。「レオン、話がある。例の場所に来なさい」セリオがクララに声をかけてきた。「は,はい」クララは慌ててセリオの方を向き返事をした。
「レオン、また呼び出しか、、」カルロスは心配そうな顔をしてクララの肩を叩いた。「、、昨日、、父上が城に来ていた、、何か関係あるのかな、、」クララは足が鉛のように重くなった。行きたくない。そんな気持ちの現れだ。「レオン、、家族と、、仲悪いの?」グロリアが遠慮がちに聞いてきた。「、、なんとも、、」クララは答えようがなかった。本物のレオンは家族と仲が良い。けれどクララは違う。「レオン、何かあったら言って、出来ること手伝うし一緒に考えるから」ダフネが言った。「みんな、いつもごめん、ありがとう」クララはこの仲間に対しても命をかけても惜しくないと思った。ナバス帝国、ミラネス王家、この仲間、私の大切なもの。今まで、、タピア公爵家にいた頃は大切な物がなかった。今は違う。お父様が何を言っても私には大切なものがあるからきっと、、乗り越えられる。




