食事会
クララは正装の洋服を手にした。コートはネイビーで装飾品はパールやクリスタルなどキラキラしているが、ドレスの美しさには敵わない。背中には炎と薔薇の刺繍がなされておりこれは美しい。だけど、、やっぱり私はドレスの方が好き。でも、、クララはもう死んだ。、、レオンとして生きなきゃ。クララはもう一度顔を洗い気持ちを整えた。
バスルームを出てソファに腰をかけ、先程セリオに渡された名も無き本を見つめた。
私がイフリートの主人になってしまった事、リアナ様はどう思ったのだろう?初めて会った時、なぜ驚いたような表情を見せたのだろう、、。わからないことばかり。
それにイフリートはいつから私を主人だと認めたのだろう?全てが謎で、少し怖くなった。
そういえば、、みんな十四歳って言っていたけど、、私、、本当は十六歳。これもまずいよね。私がレオンじゃなくて女でしかも年上だなんて、、こんな嘘いつまで通用するのだろう。怖い。、、、レオンはいつまともな魔法が使えるようになるんだろう、、本来公爵家に一人しか魔法が使えない中で私たち姉弟はどうして魔法が使えるのだろう、、。
「レオン様、お時間が参りました。ご案内致します。」カルメラがソファーの横に立ちクララに声をかけ一礼をした。「ありがとう」クララは考える事をやめ、テーブルの上に名もなき本を置き立ち上がった。そして部屋の入り口に設置してある全身が映る鏡にもう一度自分の姿を映し見た。ああ、完全に男の子だわ。テンションが下がるが仕方がない。カルメラから白のグローブを受け取った。「ありがとうカルメラ」クララはグローブを両手にはめて深呼吸をし部屋を出た。
「ご案内いたします」
カルメラは長い廊下を歩き始めた。その速度は早くもなく遅くもなく、メイドという職業の奥行きを感じさせた。徹底してメイド業をこなすと、その存在感さえ無くなるほど主人にとって自然に,違和感なく過ごさせる事ができるのだと目の前を歩くカルメラを見つめ思った。
夕暮れになり城の廊下にあかりが灯されている。一メートルごとにランプが設置してありその位置は床から二メートルほどの高さだ。全体が明るく灯される訳ではなく、頭上からの光は足元に行くほどその範囲が広くなっている。一つのランプが照らす範囲が丁度一メートル位で灯りが無くなりそうになると次の灯りが足元を照らすようになっておりその明暗はどこか情緒を感じさせる。
足元は明るいが、丁度顔の位置は次の灯りまで少し暗闇があり今は夕方で薄ら顔が見えるがきっと夜が更けたらその範囲は暗く顔が見えないだろう。恋人同士が灯りと灯りの間にキスをしても足元だけ照らされているからきっと誰にも分からない。ロマンチックな設計だと思った。
クララは光と暗闇の交互を楽しみながらカルメラについて行った。城の中央、大きな階段がある二階のエントランスに着いた。そこから階段を上がり三階に入った。三階のエントランス近くの一室に案内された。
中に入るとまだ誰も居なかった。
縦長のテーブルと椅子が置いてありクララはリアナ皇女が座る長方形の頂点から一席離れた場所に案内された。カルメラが椅子を引き腰をかけようとした時、カルロスとグロリア、ダフネが入ってきた。
クララは彼らを見て頭を下げ椅子に腰掛けた。
クララは奥の席に腰をかけており、皇女の隣、クララの右側にカルロスが来た。そしてクララの目の前にはダフネ、皇女から見て右側、カルロスの目の前にグロリアが腰をかけた。




