反逆?!
「滅相もございません!!!」
クララは立ち上がり叫んだ。衝撃のあまり声が裏返り、握りしめた両手は震えている。その体も硬直し、顔はみるみるうちに赤くなった。
セリオはその様子を見てレオンの方に乗り出していた体を元に戻した。嘘でもそんなことを考えたく無いという気持ちが表れている。
、、まさかそんな風に思われるとは、、確かに、冷静に考えればリアナ様の精霊を奪い扱える時点で反逆者と思われても仕方がない。でもクララは自分の意思でそうなった訳ではない。そう、何一つ自分の意思は無かったのだ。どうしよう、、クララは震えが止まらない。力一杯握り締めた両掌に爪が食い込む。瞬きもせずセリオを見つめながらグッと涙を堪え震える唇を強く噛んだ。
セリオはその様子をみて言った。
「それを踏まえ、レオン、君はタピア公爵家にイフリートを召喚できると言いたいかな?」
クララはそんなことは死んでも言えないと思った。もしクララがイフリートを召喚できると知ったら、、もしかして、、それを利用し、、王家を、、、、父なら、ウーゴなら,,やりかねない。
「絶対に、、言いたくありません。死んでも言えません。」
我慢していた涙が一筋頬を伝った。これだけはウーゴには言いたくない、例え死んでも、ウーゴには言わない。絶対に隠し通す。クララの意思は固まった。私は絶対に王家を、リアナ様を裏切らない。例え殺されても。クララは唇をギュッと結び、セリオの目を力強く見つめた。
セリオは不安に揺れていたレオンの瞳が意志の力で強く輝いた様子を見て言った。
「うむ、わかった。タピア公爵家には言わない。この王家の秘密を知る前にも知った後にもタピア公爵家にイフリートを召喚出来ると言いたく無いと言った理由、いつか話してほしい。レオンが抱えている事も、、。そしてレオン,時々ここで私と話す時間を設けることにしよう。良いな?」
セリオは初めてクララに微笑んだ。
「はい!セリオ様、よろしくお願い致します。」
クララは立ったまま答え一礼し腰掛けた。セリオの微笑みを見てこわばった体の力が抜けた。セリオ様は何か勘づいているかも知れない。いつか、、本当のことが話せる日が来て欲しい、、。
でも、、それを言ったら、、タピア家は、、存続できないかも知れない。、、、クララは少し俯きまた両手を握りしめた。顔を上げセリオと目を合わせる事ができない。この疾しい気持ちをいつまで持ち続けなければならないの?
「レオン、お前を信じていないわけでは無いが、君がイフリートを召喚できる事実は変えられない。君を監視しなければならないことを先に伝えておく。万が一が起きた時すぐに対応をしなければならないから、、気を悪くしないでくれ」
セリオはクララを見つめ言った。クララはその言葉を聞き、反射的に顔を上げセリオを見た。そのセリオの表情はどこに本心があるのかわからないポーカーフェイスだ。やはり信用されていない。少し淋しく感じた。でも実際、、嘘をついているのはこっちだ。
「はい、セリオ様、心に留めておきます。、、、、、イフリートの主人になってしまい申し訳ありませんでした。」
クララは先程のセリオの言葉を思い出した。王家しか精霊は召喚できない。けれどクララはイフリートを召喚できる。リアナ皇女からイフリートを横取りしてしまったような気がして本当に申し訳なく思った。リアナ皇女の秘密まで教えてもらったのに、、何もお返しができない、、。だから誠心誠意尽くそう。反逆など企てていないと、信じてもらえるように頑張ろう。そう思いセリオに頭を下げた。
セリオは改めて驚いた。レオンは本当に自分がイフリートの主人だったと知らなかった。それはその態度を見たらわかる。リアナ様に申し訳ないと思ったのか、、、。
そして先程監視をすると話した時、とても寂しそうな瞳でこちらを見つめた事も気になった。あの子の本心は何処にあるのだろう、、。そして、あの本の内容、、それに、、なぜリアナ様と同い年のレオンがイフリートの主人となっているのか、どうにも辻褄が合わない。けれど目の前にある現実が全てだ。、、、通常の流れと違う流れ,,その日が、、来るのかも知れない。
「レオン、話はそれだけだ。もう部屋にかえりなさい」セリオはそう言って立ち上がりレオンを退室させた。




