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【完結済み】外れスキルの不遇魔導士、ゴミ紋章が王国軍ではまさかのチート能力扱いだった〜国営パーティーの魔王攻略記〜  作者: たにどおり@漫画原作
【番外・新大陸編】

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3・かつて相対した仇敵との契約

 

 ゴクリと唾を呑むセリカの横で、俺は迷わず口開いた。


「教えてくれ。こいつは......ヴィゾーヴニルは元々ユグドラシルに囚われてる身だった。そんでまた俺に囚われたんじゃなにも変わらないだろ?」


『いや、(わし)は別にこのままでも構わんのじゃが......。ちょっかい掛けるの楽しいし』


 紋章の上に手をかぶせる。


「教えてくれ、このロリババアがいつまでも手にいるとマジで交際が進まん」


『おーい、こらー? 本音と建前が逆になっとるぞー?』


 手の紋章を上から押さえ付け、皮膚もろともつねり上げた。


『痛い痛い痛いやめんかぁ!!! おぬしらが良いムードになったのをぶち壊すのが最近のもっぱらの趣味なのじゃ! だいたい、(わし)を中に入れたのはおぬしの決断じゃろ!』


「こんなクソロリババアだとは思わなかったんだよ! だいたい能力が自我を持ってるってなんだよ! 少しは遠慮してたら俺も寛容だったろうなぁ!!?」


『はぁーっ!? これだから人間は身勝手と言われるのじゃ! 能力よりも繁殖の方が大事なのか!?』


「当たり前だ!!」


『言い切るなぁ!! 悲しくなるじゃろ!』


 閑話休題。

 一通り口論が終わると、アルミナが呆れ気味に笑いながら俺を見ていた。


『そこの魔王とやら! おぬしもエルドが悪いと思うじゃろ!?』


「聞いてた限り、エルドもヴィゾーヴニルちゃんも半々で悪いかなー。つまり両成敗?」


「『両成敗......』」


 ジャッジは下った。

 安易に決断した俺も、ウザさMAXのヴィゾーヴニルも互いに問題に向き合うべしというのが、魔王様の判断のようだ。


「で、少し脱線したッスけど『インフィニティー・オーブ』について話すと不味いんですか?」


 この流れにもう慣れていたセリカが、会話を進めた。


「まぁねー、なんたってわたしたち魔王軍はもとより、王国やミハイル連邦まで手に入れようと画策してるんだもの」

「うわ......、既にヤバそうだな」


 一口水を飲んだアルミナが、イヤラシイ笑みを浮かべる。


「原子や遺伝子まで好きに操作できる、そんな聖遺物が連邦の手に渡ったらどうなるかわかるでしょ?」


「あぁ......なるほどな」


「お察しのとおり、ミハイル連邦は核兵器やクローン兵士を作る気満々みたい。コミュニストに倫理とか関係ないのかしら」


 そんな連邦の動きを察知した王国と魔王軍は、おぞましい目論みを阻止しようと今躍起になってるらしい。


「確かに機密案件だな......」


「わかってくれた? でもそれを使えばエルドからヴィゾーヴニルちゃんを分離できるかもしれない。賭けだけどね」


「いや......可能性があるなら十分だ、それでその『インフィニティー・オーブ』ってのはどこにあるんだ?」


 俺の問いに、魔王アルミナはニヤリと笑った。


「大洋の遙か向こう––––新大陸よ」


「新大陸!? めっちゃ遠いじゃないッスか」


「えぇ、おまけに新大陸のどこにあるかも一切不明。それどころか『連合王国同盟』、果ては『ルーシー条約機構』まで出し抜く覚悟がいるわ」


 ノーリスクというわけにはいかない......っということか。


「だが俺もセリカも忙しい身だ、そんないきなり長期休暇なんて取れないぞ」


魔王軍(わたしたち)が圧力を掛けるから大丈夫よ、ウチに軍事教練へ出向いたってシナリオでたぶんいける」


「そんな上手くいくか?」


「冷戦期における大事な同盟国からの頼みだもの、切羽詰まった王国はきっと聞いてくれるわよ」


「その代わり」と、アルミナは華奢な足を組んだ。


「もし手に入れたら、使用した後に“必ずぶっ壊す”こと......これがわたしたち魔王軍の協力する条件」


「核兵器拡散阻止のため......ってことだな」


「そういうこと、呑んでくれるかしら?」


 なし崩し的にとはいえ、かなりヤバいことになったな。

 しかし......、俺は隣に座るセリカを見て決意を固めた。


「いいだろう、使い終わったらその聖遺物は絶対ぶっ壊してやる。その代わり魔王軍として全力で支援しろ」


「フフッ、交渉成立ね」


 まさか、恋人と分身のため魔王軍と契約する日が来るとはな......。


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