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地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~  作者: 出雲大吉
第3章

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第094話 キャラ作りって大変なんだぞ

 俺とナナポンが冒険を打ち切り、早めに引き返すと、ゲートが見えてきた。


「あれ? 三枝さんがいますよ」


 ナナポンがそう言うのでゲートの周りを見渡してみる。

 すると、確かにヨシノさんがゲート前に1人で立っていた。


「1人で何してんだろ?」

「エレノアさんに用があるんじゃないですか? 今日、ここに来る前にギルド前で会いましたよ」


 ナナポンがヨシノさんと会った?


「池袋のギルド前よね? 話したの?」

「ええ。色々と聞かれました」

「色々って?」

「この前の誘拐事件の事情聴取です。犯人に身に覚えがあるか、とかですね」

「今さら?」


遅くないだろうか?


「あー、あと、エレノアさんのこととギルマスさんのことを聞かれましたね」

「私はわかるけど、サツキさんも? 空き巣のことがバレたのかしら?」

「いえ、自分のことについて、何か言ってないかって聞かれました」


あの人、ホントに気にしてるなー……

 さっさと、土下座でも何でもすればいいのに。


「それだけ?」

「ですね。軽く答えたら後ほど詳しく聞きたいって言って、帰られました」


俺の時と同じような感じか……?

沖田君の次にナナポンを探ろうとしたんだろうか?


「なるほど。帰って、ここに来たということは私に用があるってことね」

「そういうことだと思います」


また、何かを売ってくれって言うつもりかな?


俺は何の用件だろうと思いつつも街道を進んでいき、ゲート前にやってきた。

ゲート前はヨシノさん以外では数人で固まっている1つのパーティーがいるだけだ。


俺とナナポンがゲートに向かって歩いていると、ゲートのすぐ近くにいるヨシノさんと目があった。

 というか、ヨシノさんの方が俺をガン見しているのだ。

 しかも、俺の目でなく、身体全体を隈なく見ている。


「…………あなたもここでお仕事?」


俺はヨシノさんの視線が気になり、自分の方から声をかける。


「そうだな……人と待ち合わせてるってところだ。そっちは?」

「帰りね。あ、ここを紹介してくれてありがとう。ウチの子でもやれそうだわ」


俺がいつの間にか俺の後ろに回ったナナポンをチラッと見ると、ヨシノさんもナナポンを見た。


「その子は? 護衛のような格好をしているのに主人を盾にしてるけども……」


ナナポンは内弁慶だからなー。


「私の弟子。かわいいでしょ。エージェント・セブンって言うの」

「いや、横川だろ」


まあ、前にも言ったし、さっき会ったわけだし、わかるよね。


「本人がエージェント・セブンと呼べって言ってるのよ」

「偽名か……変装しているようだし、まあ、そうか?」

「前にも言ったと思うけど、まだ学生さんだし、この前のこともあるから変装させたの。それで? 何か御用でもある? ないなら帰るけど」

「いや特にはない……ないが、近いうちに大事な話をすると思う」


大事な話?

何かの取引だろうか?


「ふーん。じゃあ、待ってるわ。エージェント・セブン、行くわよ」

「はーい……やっぱり名前変えようかな……」


ナナポンでいいじゃん。


俺とナナポンはヨシノさんに別れを告げると、ゲートをくぐり、ギルドに帰還した。




 ◆◇◆




 ギルドに戻ると、ナナポンを連れて、カエデちゃんのもとに向かう。

そして、サツキさんに話があると伝えると、カエデちゃんと共に支部長室に向かった。


「サツキさん、いるー?」


 俺は支部長室をノックしながら声をかける。


「いるぞー。勝手に入れ」


 サツキさんから許可を得たので3人で部屋に入ると、サツキさんがソファーに寝ころびながらスマホを弄っていた。


「また、ソシャゲ?」


 俺は部屋に入り、ソファーに近づきながら聞く。


「まあなー……よっこらせ」


 サツキさんがおっさんみたいな声を出しながら身を起こしたため、俺達はソファーに座ることにした。

 いつも通り、サツキさんとカエデちゃんが並んで座り、俺とナナポンがその対面に座る形だ。


「暇そうねー」

「まあな。オークションも終わったし、平和なもんだ」

「じゃあ、忙しくしてあげる。はいこれ」


 俺は帰る前に作っておいたレベル3の回復ポーションをテーブルに置く。


「灰色……か」


 サツキさんはポーションの色で察したようだ。


「知ってるの?」

「まあな。見たことがある」


 サツキさんはそう言って、俺があげた鑑定メガネを取り出し、テーブルの上にあるポーションを手に取った。


「確かにレベル3だな……ほれ」


 サツキさんはポーションを鑑定し終え、メガネを外すと、隣に座っているカエデちゃんにポーションを渡す。


「…………いつかは来ると思っていましたが、早かったですね。そのうち、レベル4とかも作れそうです」


 カエデちゃんが受け取ったポーションをじーっと見ながら言う。


 現在、レベル4の回復ポーションは数個しか確認されていない。

 そして、レベル5の回復ポーションはまだ見つかっていない。


「それでどうした方がいいと思う? 本部長に売る? それともオークション?」


 俺はカエデちゃんからポーションを返してもらいながらサツキさんに聞く。


「そうだなー……まずはレベル2の回復ポーションがあるだろ。そっちをさっさと売れ」


 まあ、そうなるわなー。


「わかった。クレアを急かすわ」

「そうしろ。その後、本部長にレベル2の回復ポーションを売ったらレベル3の回復ポーションをオークションにかけよう。レベル3の回復ポーションはここ数年、市場に出ていないし、値段がつけられん」

「じゃあ、1個ね。皆さんに値段を決めてもらいましょう」


 その後に売ればいいか。

 本部長かクレアが買うだろ。


「そうしよう。あ、それとお前、オートマップっていうのが作れるようになったんだったな?」

「オートマップ? ああ、あれね。まだ作ってないけど」

「すぐに作れるか?」

「材料は紙とコンパスと鉛筆だからね。作れるわよ」


 相変わらず、安価だわ。


「ちょっと作って、見せてくれないか?」

「別にいいけど、何に使うの?」


 どっちみち、作ってみるつもりではあったから問題はない。


「まだわからん。実は国がとある測量会社に依頼を出したんだ」

「とある測量会社?」

「フロンティアを測量し、地図を作製する専門の会社だな」


 フロンティアにはモンスターが出るため、普通の会社では仕事ができない。

そのため、そういう専門の会社があるのだ。


「新エリアでも見つけた? それとも、もらった?」

「まだわからん。だが、普通の入札方式ではないし、何かがあることは確かだ。私が探って売り込んでみようと思ってる」

「ふーん、じゃあ、今度、作って持って来るわ」


 よくわからんが、サツキさんに任せればいいだろう。


「頼む…………ところでナナポン、その格好は何だ? はっきり言うが、お前はチビだから似合わんぞ」


 言っちゃった……

 そんなんだからナナポンがサツキさんに懐かないんだろうな。


「ひどい!」


 ナナポンがショックを受ける。


「かわいらしいじゃないの」


 一応、庇っておこう。


「エレノアさん……」


 ナナポンが目を潤ませながら俺を見てくる。


「本当のことを言え、沖田君」

「コスプレしたガキだよな?」


 俺はサツキさんに促されたため、正直に言った。


「私、沖田さんのことが嫌いです」


 ついにはっきりと言われてしまった……


「いや、あなた、自分でも似合ってないって思ってるでしょ。杖もひどかったし」


 SPみたいな見た目で杖を持つのは変すぎる。


「言っておきます。変装でその姿を選んだあなたが何を言っても私の方がマシです」


 言ってはならんことを……


「カエデちゃんは私とナナポンだと、どっちがダメだと思う?」


 俺はカエデちゃんに聞いてみる。


「先輩です」


 カエデちゃんが即答した。


「えー……」

「沖田君、誰に聞いても無駄だと思うぞ。正直、私は口調や立ち振る舞いを速攻で切り替えるお前のポテンシャルの高さに引いている」

「私もです。さっきまで普通にしゃべっていたのにエレノアさんになると、急に人が変わるんですもん」


 ひっで。


「じゃあ、いいよ。普通にしゃべる。サツキさんが切り離せっていうから頑張って練習したのに引くんじゃねーよ」


 一生懸命、アニメを見て、練習したのに。


「私は沖田さんのポテンシャルに興味がないのでエレノアさんのキャラを崩さないでほしいです」


 こいつら、めんどくせーなー……


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― 新着の感想 ―
[一言] そもそも普通の人はTSしないしそれっぽく成りきったりもしないからね
[一言] 沖田君かわいそう (´・ω・`)
[気になる点] 「オートマップ」の材料のコンパスって 文具か方位磁石かどっちなのでしょう… なんとなく方位磁石だと思って読んでたけど違うのかな…?
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