表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~  作者: 出雲大吉
第3章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

92/283

第092話 エージェント・ナナポン


 俺は夕食の鍋を食べ終えると、ナナポンにヨシノさんのことやリンさんのことを説明し、今後のことを話し合った。

 そして、遅くなる前にはタクシーを呼び、ナナポンを家に帰すと、俺とカエデちゃんはまったりと過ごし、就寝した。


 翌日、昼前に起きた俺は準備をし、カエデちゃんが用意してくれた昼食を食べると、家を出る。


 タクシーに乗り、ギルド裏口に回ると、そのままギルドに入った。

 いつものように受付裏から入り、ロビーに出たのだが、今日は冒険者の数が多かった。

 いつもは多くても10人程度なのに今日は20人以上いる。

 さすがは休日である。


 俺は不自然にスマホを取り出す有象無象を無視し、カエデちゃんのもとに向かうことにした。


「こんにちは」


 俺はカエデちゃんの受付に行くと挨拶をする。


「はい、こんにちは」


 カエデちゃんはやっぱり50パーセントの笑顔だ。


「ミレイユ街道ね」

「はい。あのー、後ろでスマホを構えている人が何人かいるんですけど……」


 カエデちゃんが俺の後ろを見ながら教えてくれる。

 多分、俺の長い髪とお尻を盗撮しているんだろう。


「無視よ、無視。サツキさんに取り締まるように言っておいて」

「そうします……これはちょっとひどいです」


 まあ、仕方がないことである。

 俺がちょっとコンビニに寄ると、こうなるもん。

 盗撮ばっかり。

 まだ声をかけてきて、握手してくださいの方が可愛げがある。

 こちとら、サイン色紙まで用意しているというのに。


「じゃあ、行くわ。もうちょっとしたらナナカさんが来ると思う」


 今回からは俺が先にフロンティアに行くことになっている。

 ナナポンを先に行かせるのは危険だからだ。


「ちょっと怖いですけど、わかりました。気を付けて行ってください」


 俺もナナポンがどんな格好で来るのかがちょっと怖い。

 さすがにひょっとこや骸骨のお面はないと信じたい。


「はーい」


 俺はカエデちゃんに手を振ると、後ろを見た。

 すると、数人がサッと不自然に動く。


 うっぜ……

 いや、待て!


 そうか……

 これが昨日のおっぱいを見る俺へのヨシノさんの気持ちなんだ。

 これは嫌われるわ。


 俺は今度から気を付けようと思いながら盗撮冒険者を無視し、ゲートに向かった。


 ゲートをくぐると、昨日と同じく、ミレイユ街道へとやってくる。

 ただ、冒険者は昨日より少なく、3パーティーしかいない。

 しかも、その3パーティーはシートを広げ、昼ご飯を食べていた。


 冒険者達は地図を見ながら何かの相談をしているようだったが、すぐに注目が俺に集まる。

 だが、すぐに相談に戻っていった。


 やっぱり中級は民度がいいな……

 まあ、後で話題にするんだろうけど。


 俺はナナポンを待つことにし、誰もいない端に避ける。

 そして、しばらく待っていると、1人の女性がゲートから出てきた。


 その女性は金髪であり、肩より少し下くらいのロングヘアーである。

 そして、その金髪を後ろに1本にまとめていた。

 格好は黒ずくめのスーツを着ているうえ、サングラスまでしている。


 どこぞのエージェントか?

 というか、見たことある服装だな……


 見覚えがあるのは当たり前である。

 ナナポンを攫ったあの雑魚共とまったく同じ格好なのだ。


 俺はその女を見て、さすがに呆れた。

 何故なら、その女はそんな格好をしているのに見覚えのある可愛らしいうさぎのリュックを背負っているからだ。


 ナナポンじゃん……


 そのナナポンらしき女はまっすぐ俺の所に来ると、俺の前で止まった。


「どうです?」


 ナナポンはサングラスをしているが、ドヤ顔をしていることだけはわかった。


「あなた、よくそんな格好ができるわね……あなたを縛って攫ったヤツらと同じじゃないの」

「ひょっとこや骸骨の仮面よりかは良いじゃないですか。これならギリセーフです」


 まあ、冒険に行くのにスーツはどうかと思うが、SPに見えないことはない。

 小っさいし、弱そうだけど。

 というか、こいつ、チビだから全然、似合ってない。


「その金髪は?」

「ウィッグです! エレノアさんとお揃いにしました! 弟子ですから!」


 何の弟子だよ。


「ふーん、カエデちゃんは何て?」

「何も。ただ、ため息です」


 めんどくさくなったんだな。


「一応、聞いておく。あなた、これからもそれで行くの?」

「そうなります。あ、エレノアさん、透明化ポーションをください」


 まあ、必要だろうね。


「後であげるわ。とりあえず、行きましょう。ここは人が多い」


 さっきまで作戦会議をしていた冒険者達もさすがに俺とナナポンをガン見している。


「わかりました。あ、私のことはナンバーセブンと呼んでください」

「何それ?」

「7番目の弟子です」


 6人もいねーよ!

 いや、ナナカだからセブンなんだな。


「あなたって、この一週間でそれを考えてたわけ?」

「そうなります。エージェント・セブンとどっちがいいです?」


 こいつ、マトリック○を見たな……


「ハァ……まあ、何でもいいわ。行くわよ」

「はい」


 ナナポンはまったく似合っていない背中のうさぎのリュックから杖を取り出した。


「杖?」

「そら、そうですよ。魔法使いですもん」


 真っ黒のスーツに金髪なのに、可愛らしいうさぎのリュックと杖……


「26歳にもなってジャージで美容院に行った私だけど、言わせて…………ダサいわよ」

「仕方がないでしょ! 他の候補が邪教徒かパピヨンマスクだったんですから!」


 ナナポンが顔を真っ赤にして怒った。

 まあ、確かにその選択肢だと黒ずくめのスーツになる。


「じゃあ、それでいいわよ。人のこと言える格好をしていないしね」

「そうですよ。さあ、行きましょう!」


 ナナポンが意気揚々と街道を進んでいったため、俺もあとを追った。


 俺達は2人で並びながら街道を歩いている。

 今日もとてもいい天気である。


「昨日、聞きましたけど、ハイウルフとグレートイーグルですっけ?」


 隣を歩くナナポンが聞いてくる。


「そうそう。そんなに強くないけど、注意して」

「エレノアさんのそんなに強くないは微妙に信用できないです……」

「大丈夫だって。あなたの魔法と相性が良いし、危なくなったら助けるから」

「おねがいしますよー。ここでは私の透視が役に立たないんですから」


 まあ、開けた平地だし、透視するものがないもんね。


「大丈夫よ。あ、あなたにこれを渡しておくから定期的に飲みなさい」


 俺はナナポンに強化ポーション(防)を渡した。


「あー、言っていた防御力が上がるポーションですね。効果はどんなもんです?」

「検証が難しくてね。一応、私とカエデちゃんで試してみたんだけど、竹刀で叩いても大丈夫だったわ」

「…………え? 朝倉さんを竹刀で叩いたんですか?」


 ナナポンがドン引きしている。

 まあ、そうだろう。

 俺も自分で言ってて、何を言ってんだって思ったもん。


「私だって叩く気はなかったわよ。カエデちゃんに叩いてもらったんだけど、その後、自分も試してみたいって言うから…………」

「ごめんなさい。ちょっと怖いです。私の頭の中には暴力を振るう彼氏しか浮かびません」


 奇遇だな。

 俺もだよ。


「やったのは沖田君じゃなくて私だけどね」

「何してんですか……」

「悪いけど、この件は忘れて。私も思い出したくない。とにかく、結構、防げると思うから一応、飲んでおいて。効果は1時間」

「お腹がタプタプになりそうですね」


 俺は沖田君と冒険したくないっていうお前のためにTSポーションを飲んで、透明化ポーションを2つも飲んで、ここに来ているんだぞ。

 感謝しろ。


「大怪我するよりは良いでしょって……あ、ほら、空に鳥が飛んでるわよ」

「あ、ホントだ……え? あれって、グレートイーグルでは?」

「そうね」


 俺が頷くと、ナナポンは急いで強化ポーション(防)を飲み干した。


「よーし! えーっと、エレノアさんが引き付けて攻撃し、グレートイーグル避けて、上空に逃れたところで私が魔法を使うんですっけ?」


 この辺は昨日、鍋を食べ終えた後に打ち合わせをしたのだ。


「そうそう。じゃあ、私が挑発でヘイトを集めるわね」

「ざーこ、ざーこって言ってみてくださいよ」


 カエデちゃんだな……


「嫌。いくつだと思ってんのよ。10年遅いわ……おーい! そこの雑魚鳥ー、こっちにおいでー!」


 俺がグレートイーグルに向かって叫ぶと、上空を旋回していたグレートイーグルが俺に向かって、滑空してきた。


「おー! 来ましたね。私は下がります」


 ナナポンが俺の後ろに下がったため、俺はカバンから剣を抜く。


「さあ、来なさい!」


 俺は剣を構える。


「エレノアさん、かっこいい!」


 ナナポンが俺を褒めていると、グレートイーグルが俺に向かって突撃してきた。

 俺はタイミングを合わせて剣を軽く振ると、グレートイーグルは昨日のリンさんの時のように剣を躱し、上空に羽ばたいていく。


「エージェント・セブン!」

「はい! ファイヤー!」


 俺がナナポンに指示をすると、ナナポンが得意の火魔法を放った。

 ナナポンが放った火の玉がまっすぐ飛んでいき、グレートイーグルに命中する。

 すると、火の玉が一気に燃え広がり、グレートイーグルが炭となった。

 そして、上空からひらひらと1枚の羽根が落ちてくる。


「エージェント・セブンは言いにくいからやめるわ」


 長いし。


「私もむず痒いんで人がいない時は今まで通りで良いです」


 ナナポンがひらひらと落ちてくる羽根をキャッチしながら言う。


「よーし! 次に行くわよ、ナナポン」

「ナナポンはやめろ。エレノアさんでナナポンと呼ぶな」


 マジギレされたし……

 こいつの基準がまったくわからん。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】
宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

【新刊】
~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)

週末のんびり異世界冒険譚 1 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

~漫画~
廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 1 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【販売中】
~漫画~
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~(1)
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~(2)
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~(3)

~書籍~
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~(1)
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~(2)
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~(3)
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~(4)

【現在連載中の作品】
その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【漫画連載中】
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~
がうがうモンスター+
ニコニコ漫画

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~
カドコミ
ニコニコ漫画

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua
― 新着の感想 ―
挑発のレベルを上がるのを嫌がっていたが挑発するんだ! 使い続ければ人妻剣士を超えるぞ♪~(´ε`)
エージェント・セブンって言うから「エージェント・47」の方かと思ってしまいました。
[一言] セブンうぜえー
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ