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地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~  作者: 出雲大吉
第2章

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第058話 ナナポンは少なくとも2億円以上の価値がある


 俺はギルドに着くと、クレアと話し、すぐに支部長室にいるサツキさんのもとに向かった。


「うーん、ナナポンがねー……お前、エレノアの姿であいつに会ったか?」


 俺がスマホのメッセージを見せ、事情を説明すると、サツキさんが聞いてくる。


「一度、タクシーで送ろうとしたぐらいね。ほら、例の誘拐事件の時」

「その時に見られたか?」

「それだけで私とナナカさんが親しいとはわからないわよ。多分、別の線ね」


 たかがタクシーに一緒に乗ろうとしただけで誘拐はしないだろう。

 ハリーとクレアにも言ったが、同じギルドにいる数少ない女性同士が相乗りすることだってあるし、いくらなんでも強行的すぎる。


「別の線? 何か思い当たる節でもあるのか?」

「ナナカさん、昨日の今日で時計を見にいったらしいわ。しかも、あげた100万円の内、すでに20万円も使っている」


 100万円をあげてからまだ10日も経っていない。


「あー……たかが大学生が急に金回りが良くなったわけか。しかも、エレノアと同じギルドに所属しているヤツが……そら、怪しい」

「元々、私と同じ昼間にしか来ない子だしね。まあ、そのあたりでしょ」

「その辺を注意するように言えばよかったな」

「私もカエデちゃんも言ったわよ。でも、ダメだったみたいね。さすがに2億で浮かれた様子だったし」


 気持ちはわかる。

 俺だって、昨日、カエデちゃんと浮かれまくったし。


「とんでもない額になったしなー」

「そうね。まあ、良い薬でしょ。今後は注意すると思うわ」


 誘拐されたらさすがに自重するだろ。


「今後ね……あるといいな」


 こら、ナナポンを殺すな。


「すぐに助けるわよ。どこぞの誰か知らないけど、剣の錆にしてあげるわ」

「まあ、ほどほどにな。私も行こうか?」

「私1人で来いとは言われなかったけど、大丈夫よ。あなたはオークションの仕事があるでしょ」

「Aランクの実力を見せてやろうと思ったのに……」


 嘘でも『私もナナポンを助けたい』って言えや。


「とにかく余計なことはしないで。それよりもナナカさんは1人だった?」

「らしいぞ。1人で来て、1人でダイアナ鉱山に向かったそうだ」


 1人ねー。


「クレアみたいなユニークスキル持ちかしらね?」

「多分、そうだろう。姿を消せるとかか? お前のポーションみたいに」

「それでしょうね。裏口からの侵入は?」

「ない。警備員も誰も通ってないって言うし、防犯カメラも不審な人物は見つかっていない」


 やはり何かあるな。


「前にもこんなのがあったわね」

「ステータスカードの保管室に侵入された空き巣事件な。私もそれと同一犯だと思う」


 間違いないだろう。


「このことは上とやらに報告するの?」

「相手次第だな。とりあえずは保留」


 これは報告する気がないな。

 まあ、報告したら空き巣のこともバレるか。


「了解。じゃあ、捕らわれのナナポン姫を救ってくるわ」

「お前、随分と余裕だな」

「目的はわかってるしね。それに最悪は首ちょんぱよ」

「人質になっているナナポンは?」

「惜しい人を失くしたわ」


 何が大事で、何を切り捨てるか……

 俺にとって大事なのは金とカエデちゃん。

 ナナポンはその次だ。


「お前はヒーローにはなれんな」

「魔女に何を言っているの? あと、今はヒロインね」

「まあ、出来たらナナポンも救ってやってくれ」


 サツキさんが俺の剣と杖と刀を渡してくる。


「そうするわよ」


 俺は待たしたら悪いと思って、剣と杖をカバンに入れると、刀を収納し、立ち上がった。


「じゃあ、報告を待ってて。首いる?」

「いらない。早く行け」


 俺は支部長室を出ると、受付の中を抜け、受付を通さずにまっすぐゲートに向かった。

 今日はカエデちゃんがいないし、サツキさんから許可を得ているのだ。


 俺はゲートの前に来ると、立ち止まり、一度、大きく息を吸い、吐く。

 そして、ゲートをくぐった。




 ◆◇◆




 ゲートをくぐると、いつもの岩山に囲まれた薄暗い平地だった。


 ここに冒険に来る時はいつもナナポンが先に来て、エレノアさんを待っている。

 そして、笑顔で駆け寄ってきていた。


 だが、今日は違う。

 小屋の前にいるのはナナポンでなく、黒づくめのスーツにサングラスをかけた怪しい男である。

 その男はズボンのポケットに手を突っ込み、ぼろいテーブルの前に立ち、俺を見ていた。


「お前が、エレノア・オーシャン、か?」


 ナナポンがメッセージで言っていたように確かに日本語が少し変だ。


「母国語でどうぞ。わかりますし、通じるでしょう?」


 俺は翻訳ポーションを飲んできているのだ。


「またその言葉か……動画でもそうだったが、直で聞くと、より一層、気持ちが悪いな」


 男は流暢な言葉でひどいことを言ってきた。


「気持ちが悪いは傷つくわね。お母さんにレディーに対する言葉遣いを習わなかった?」

「習ってないな。そんなものは必要ない」


 ダメだわー。

 これはモテませんわ。

 俺みたいに紳士にいかないと!


「寂しい人……」

「くだらないおしゃべりをするために呼んだわけではない」

「だったら用件を早く言いなさいな。私も暇ではないの」


 買い物に行かないといけない。

 そして、あの家とのお別れパーティーをするのだ。


「アイテム袋を作る方法を教えろ」

「輪ゴムで作れるわね」

「ふざけているのか?」


 実は本当だったりする。


「ふふっ、アイテム袋の作り方と言われても困るわよ。そんなものは知らないし」

「では、あのアイテム袋はどうしたものだ?」

「公表してるわよ。ス、ラ、イ、ム。ふふっ」

「…………答える気はないようだな」


 いや、もう答えてる。

 輪ゴムが正解。

 まあ、誰も信じんわな。

 俺だって、いまだにもっと他にあっただろうって思ってるもん。


「どうして見返りもなしに答えないといけないの?」

「こっちには人質がいる」

「いないわよ? あなた1人じゃないの。死んだ? 殺した?」


 ナナポン、生きてるー?


「おい!」


 男は小屋を向くと、声をかけた。

 すると、小屋の裏から布で猿轡をされ、縄で拘束されたナナポンがこの男と同じようなサングラスに黒いスーツの男にしょっ引かれて現れる。


「あら? まだ生きてたのね」

「人質は殺さん。お前が素直だったらな……」

「優しい。私ならどっちみち殺すわ」


 俺はそう言って、ナナポンを見る。


 ナナポンを見るに特に暴行された跡は見えない。

 まあ、ナナポンも抵抗はしなかったのだろう。


 ナナポンは涙目を浮かべ、俺を見ていたが、ふいに視線を左に向けた。

 俺はナナポンの視線の先をチラッと見たが、そこには何もない。


「こいつを殺されたくなければ吐け」


 ナナポンを拘束している男がナイフを取り出し、ナナポンの首に当てる。


「なんで私がその子のために動かないといけないの?」

「こいつがお前の仲間であることはわかっている。こんなガキがこんなに金を持っているわけがない」


 男はそう言いながらポケットから札束を取り出した。

 ナナポンの80万円だろう。


「ふーん……実はそうなの。その子にちょっとお手伝いしてもらっててね。その代わりにオークションのあがりの1割を渡すことになってるの。でも、死ねば2億を渡さなくても済むわ」

「ふん。こいつがお前の弟子なことは聞いている」


 ナナポンはすぐにバラすなー。


「弟子? ああ、弟子。ナナカさん、魔女になりたいのよね?」


 俺がそう聞くと、ナナポンがうんうんと頷く。


「弟子みたい。やっぱり殺さないであげて」


 金儲けの弟子だけどね。


「だったら言え」

「あー……ごめんなさい。ちょっと待ってくれる?」


 俺は話を切った。


「待つ?」

「モンスターが出たみたい」

「…………そんなものはいないが?」


 男は周囲を見渡す。


「あなたは外国人でここのことを知らないものね。ここにはハイドスケルトンって言うモンスターが出るの」

「なんだそれ? スケルトン? 骸骨か?」

「そうそう。しかも、透明で見えないの。それがそこにいる。話の邪魔だから処分ね」


 俺はそう言うと、カバンから剣を取り出し、先ほど、ナナポンが視線で教えてくれた方向に踏み込んだ。


「――ま、待て!!」


 男が慌てて俺を止めるが、俺の剣は止まらない。

 俺の剣は不自然に地面の砂が動いていた場所に向けて振り下ろされた。


 俺の手には明らかに骸骨ではない肉を斬った感触が残り、血しぶきが舞う。

 そして、俺が振り下ろした剣の先で男が倒れた。


「あら? 誰? ハイドスケルトンじゃなくてハイド人間? まあ、モンスターよね」


 じゃあ、問題ないね!


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― 新着の感想 ―
[良い点] やんでますね。
[一言] > 俺は翻訳ポーションを飲んできているのだ。 ふと思ったのだけど、24時間経たないうちに沖田くんがしゃべっているのをマルチリンガルな人に聞かれたらアウトだって、わかっているのかな? きっと…
[一言] うーん、もしや剣術lv5てランスで言うところの剣戦闘Lv2くらいはあるのかな
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