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地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~  作者: 出雲大吉
第1章

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第025話 不人気すぎワロタ


 カエデちゃんと騒ぎまくった翌日はカエデちゃんのスマホの目覚ましで目が覚めた。


「はい……はい。すみません、ゴホッ! ちょっと風邪を引いたみたいで…………え? 家ですよ? はい、私の家です、ゴホッ! すみません…………そういうことなんで休みます。はい、明日は大丈夫だと思います。はい、失礼します」


 カエデちゃんが電話を切った。

 カエデちゃんは演技も上手だわ。


「誰? サツキさん?」

「です。めっちゃ疑われてましたけどね。お前、先輩の家だろうって言われました」


 まあ、合ってるね。


「昨日がオークションだからね。一緒に見てたって思うだろうよ」

「多分、それです。あー、頭が痛いです」


 俺もちょっと痛い。

 二日酔いもあるが、床で寝てたせいもある。


「はい、飲みな。俺の研究では二日酔いにも効く」


 俺は回復ポーションを取り出し、渡す。


「研究?」

「水代わりに飲んでるから」

「50万をですか? 頭がおかしいですね。そのうち回復ポーションで風呂とかやりそう…………」


 もうやったよ…………


「まあまあ、ホントに効くから飲みなって」

「頂きます。50万の酔い醒ましってすごいですねー」


 カエデちゃんはそう言いながらも回復ポーションを飲み始めた。

 俺もちょっと頭が痛いので回復ポーションを取り出して飲む。

 すると、スーッと頭の痛みや重さが消えた。


「すごいですね。一瞬で治りました」

「でしょ、でしょ」

「ありがとうございます」


 カエデちゃんはそう言って空きフラスコを返してくれる。


「カエデちゃんはこれからどうする?」

「さすがに帰ります。お風呂に入りたいし、眠いです」


 そうだわな。

 昨日ははっちゃけすぎた。


「駅まで送ってくよ」

「いえ、大丈夫です。先輩はどうされます?」

「俺も風呂入って寝るかな」


 今日はもう無理だ。

 動きたくない。


「明日は来られますかね?」


 もちろん、ギルドのことだろう。


「明日は冒険する。レベルを上げたいし」

「わかりました。では、明日、お待ちしています」


 カエデちゃんはそう言って立ち上がると、玄関に行く。

 俺もついていくと、カエデちゃんが靴を履き、こちらを振り向いた。


「では、先輩、昨日はありがとうございました」

「ううん、楽しかったよ。勝ち組になろうね」

「ですね。じゃあ、また明日」

「うん。ばいばーい」


 カエデちゃんは手を振りながら扉を開けると、帰っていってしまった。


 俺は部屋に戻り、空き缶を片付けると、シャワーを浴び、布団を出して、眠ることにした。

 そして、昼過ぎに起きた俺は昨日の残り物を食べながらスマホでネットニュースを見た。


【アイテム袋が5200万円で落札!】


 こういうニュースをちらほらと見かける。


「やっぱり話題になったか……」


 アイテム袋のこともだが、エレノア・オーシャンについての話題もそこそこ見かけるし、話題性は大きかったようだ。


「明日は俺の姿でいこう」


 明日は物を売らずにレベル上げをするだけだし、エレノア・オーシャンで行く意味はない。

 むしろ、人が多そうだし、目立たない沖田ハジメで行った方がいいだろう。

 きっと、カエデちゃんもそっちの方が喜んでくれる。


「ということはそっち用に換えないとな」


 俺は沖田ハジメとエレノア・オーシャンの荷物を完全に分けた。

 服は当たり前だが、財布を始め、カバン、靴、ハンカチ、何もかも別のものを用意してある。


「よし! 今日は家から出るのをやめて、カエデちゃんとの同棲の部屋を探そう!」


 部屋探しの楽しみが増えたのだ。


「…………でも、あれ、本気かな?」


 冗談だったらどうしよう?

 飲んでたし、あとで『この部屋でどう?』って、提案して、『は?』って拒否られたら泣くな……


 俺はスマホのメッセージアプリを起動し、カエデちゃんに連絡を取ることにした。


『今、引っ越し先の部屋を探しているんだけど、いっぱいあって悩むわー』


 よし!

 これで様子見しよう!


 俺はこの文章を送ると、すぐに既読がついた。

 どうやらカエデちゃんも起きているらしい。


『別にルームシェアは冗談で言ったわけではないので探りにかからなくても大丈夫です。そういうのは一緒に探しましょう。それと部屋を探す前にカニが先です』


 うん!

 よかった!

 心を完全に見透かされている気もするが、よかった!


『休み、教えてー』

『明日、出社して有給申請をします。明日、飲みながら決めましょう。ですのでギルドには午後から来てください』


 やったぜ!

 カエデちゃんとご飯だ!


 俺はテンションが上がったので意気揚々と北海道のカニ屋やホテルを探していった。

 …………さすがにホテルの部屋は別だろうな。




 ◆◇◆




 翌日、俺は家を出て、お店でランチを食べると、池袋のギルドに向かう。

 ギルドまでやってくると、カメラを持った取材陣がギルドの前でたむろっているのが見えた。


 うわー……

 エレノア関係だろうなー……

 俺は沖田君、沖田君……


 俺は心の中で関係ありませんよーと思いながらギルドに入ろうとする。


「すみません、ちょっといいですか?」


 俺がこそーっとギルドに入ろうとすると、女性の声がした。

 俺は反射的に振り向くと、テレビで見たことがある美人の女子アナさんが俺を見て、ニコッと微笑んだ。


「俺っすか?」

「はい。このギルドに所属する冒険者の方でしょうか?」

「えーっと、はい」

「エレノア・オーシャンという冒険者をご存じで?」


 やっぱりそれか……


「ニュースとかになっているやつですよね。俺はあんまり詳しくないっす」


 ホントはめっちゃ詳しい。

 好きな食べ物も嫌いな食べ物も知ってる。

 家族構成も知っている。

 好きな女の子まで知ってる。

 だって、俺だもん。


「見たことは?」

「あー、ないですね。俺、あんまり活動してないんで…………それにここって、言っちゃあなんですけど、不人気ギルドなんですよ。ですので、渋谷とかの方がいいですよ。あっちの冒険者ならフロンティアで交流があるかもですし」


 訳:どっか行け。


「なるほど……確かに朝からここにいるんですけど、このギルドに来た冒険者は数人ですね」


 少ね。

 いくら平日とはいえ、不人気すぎ。


「いっつもそんなんですよ。ここで張るなら夕方以降ですね。その時間帯ならまだ人も来ます」

「なるほど……情報提供をありがとうございます」


 女子アナさんは丁寧な人らしく、頭を下げて、お礼を言ってきた。


「いえいえー。では」


 俺は手を挙げて別れを告げると、さっさとギルドの中に入っていく。


 よーし!

 これでエレノアの姿で昼間に来ても大丈夫だ。

 俺って、やっぱり頭が良い気がする。


 俺は自分の賢さに満足しながらギルドに入ると、まっすぐカエデちゃんの受付に向かう。


「やっほー」

「やっほーです。外はどうでした?」


 カエデちゃんが片手を上げて、挨拶を返し、聞いてくる。


「なんかいたね。ここは不人気だから渋谷に行った方がいいって言っておいた」

「まあ、不人気は事実なんですけど、それ、ギルド職員に言います?」


 言葉を選ぶべきだったか。


「まあいいじゃん。カエデちゃん、今日、どこ行くー?」

「真っ先にそれですか…………この前行ったところに行きましょうか。ですので、5時には帰ってきてください」

「了解。じゃあ、今日も…………今日からクーナー遺跡に行くわ」


 わかってるから睨むなや。

 沖田君は初めて行きます。


「いってらっしゃい。これがステータスカードです」


 カエデちゃんはそう言って、ステータスカードと俺の刀を渡してくれる。


「ありがと」

「大丈夫でしょうけど、気をつけてください。多分、クーナー遺跡には冒険者が殺到しています」


 あー……そうかも。

 今後はその辺も考えないとな。


「わかった」


 俺は頷くと、ステータスカードをカバンにしまい、刀を腰に装着する。

 そして、奥に進み、ゲートをくぐった。


 さあ!

 …………何回目かのフロンティアだ!


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