表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~  作者: 出雲大吉
第7章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

209/283

第209話 騒がしいクリスマス


 12月24日。

 この日は特別な日であると思う人とそうでない日と思う人の2種類に別れる。


 去年の俺にとっては特別な日だった。

 何故なら、残業で日をまたぎ、コンビニの売れ残りのケーキを買い、会社で1人で食べながら泣いたからだ。


 だから今年は普通を望んだ。

 カエデちゃんという最高のキャバ嬢を隣につけ、高いワインを飲みながらリビングの端にある金の延べ棒タワーを眺めるという勝者になるつもりだった。


 だが、現実は…………


「じゃあ、じゃあ! お隣さんは?」

「お隣さんはご夫婦だと思いますけど、チキンを食べてますねー」

「じゃあ、下は?」

「下…………え!? あわわ!」


 うるせー弟子達だよ…………


「人の家を覗くのはやめなさい。最低よ」


 俺はソファーでアルクとはしゃいでいるナナポンに苦言を呈する。

 もちろん、エレノアさんの姿だ。


「そうしまーす…………そっか、クリスマスだもんね」


 どうやらナナポンは刺激の強いのを見たらしい。

 なお、そういう知識が皆無なアルクはポカンとしている。


「大人しくピザを食べてなさい…………ったく」


 俺はソファーにいるチビ2人から目線を切ると、正面を向く。

 俺の正面にはヨシノさんがリンゴジュースを片手にショートケーキを美味しそうに食べていた。


「せっかくワインを用意したのに」

「言っただろ。私は飲めないんだ。ワインなんか飲んだら即、ばたんきゅーだ」


 ばたんきゅーって懐かしいな。

 年齢を感じる……

 怒るだろうし、こっちにもダメージが来るから言わないけど。


「まあ、リンゴジュースはいっぱいあるから好きなだけ飲みなさい。アルクががぶ飲みするし」

「わかる。私の家のストックがあっという間に消えた」


 アルクはヨシノさんの家に寝泊まりしているが、ヨシノさんが忙しくて昼間はいないのでこの家に入り浸っている。


「あいつ、虫歯になればいいのに。ルネサーンス!」


 俺は隣に座っているカエデちゃんにワイングラスを向ける。


「ルネサーンス!」


 チンッとガラスの音が響いた。


「君達も楽しそうだな」


 ヨシノさんが俺とカエデちゃんを見て、苦笑する。


「まあね。それよりも今日は大丈夫だったの? このところ忙しそうだったけど」


 以前からクリスマスに打ち上げを兼ねたパーティーをするということでヨシノさんに声をかけていたのだが、どっかの魔女がフロンティアのエリアをオークションにかけるという暴挙に出たため、ヨシノさんは激務だったのだ。


「もう私の仕事は終わったから大丈夫」


 俺のためにすまんね。

 まあ、ヨシノさんも10パーセントもらえるんだから許してくれ。


「ということはオークションの開催は決まった?」

「ほぼな。君がアメリカに手を回したおかげでスムーズに決まった」

「なんのことかしら?」


 エレちゃん、わかんなーい。


「皆、知ってるぞ。ギルドの連中はアメリカが魔女の手先になったって言ってたらしい」


 手先なわけねーじゃん。

 友達よ、友達。


「まあ、ギルドのケツを叩いてくれたらどこでもいいんだけどね。たまたまクレアがいただけ」

「私的にもなんでもいいな」


 お金が入ればなんでもいいよね。


「具体的にはどんな感じに決まったんですか?」


 カエデちゃんがヨシノさんに聞く。


「まずは一度、話をしたいらしい。そこでオークションの打ち合わせをする」


 まあ、そこは俺も必要だとは思っている。

 これまではサツキさんに投げっぱなしだったが、今回はそういうわけにもいかないだろう。


「誰と打ち合わせをするの? ギルドのお偉いさん?」

「本部長」


 ん?


「いまだによくわかってないんだけど、本部長さんって正式にはギルドの人間じゃないんじゃなかったっけ?」

「そうだね。所属は政府だ。とはいえ、ギルドの人間は誰が悪い魔女と協議するかで揉めた。そこで魔女が所属している支部の支部長に投げたんだ」


 別にいいけど、俺は悪い魔女じゃねーよ。


「サツキさんってこと?」

「そうなる。そして、サツキ姉さんは魔女と繋がっていると思われているから本部長が間に入ることになった。あの人は元新宿支部長でギルドからの信頼も厚いからな。だから今度、池袋支部でサツキ姉さんと本部長で打ち合わせをする。ちなみにだが、私はその場に行けないので3人で打ち合わせしてくれ」


 3人ねー……

 まあ、知ってる2人だし、本部長さんはまともな人だから建設的な打ち合わせができるだろう。

 ここに進藤先生みたいな人がいたら最悪になる。


「了解。適当に日程を決めておいて。私は年末年始でもいいから」


 カエデちゃんは実家に帰るし、どうでもいいわ。


「年末年始は嫌だろうな。明日は…………日曜か。じゃあ、月曜にでも調整するよ。また連絡する」

「お願い。それともう1個、あなたにお願いがあるのよね」

「私に? なんだ?」

「まあ、たいしたことではないわ。王様に頼まれていたポーションができたから納品にいく。一応、ついてきてちょうだい」


 1人で行くのはちょっとね。


「それなら喜んで行く。あそこの料理を食べたいし、山積みになった金の延べ棒を拝みたい」


 気持ちはものすごくわかる。


「私も行ってみたいなー」


 カエデちゃんもフロンティアに行きたいようだ。


「アルク、3人で行くから」


 俺はソファーでナナポンとオセロをしているアルクに決定事項を伝える。


「えー……3人もー?」


 アルクが渋っている。

 まあ、引きこもり王家はあまり人を招きたくはないんだろう。


「2人も3人も一緒でしょ」

「まあいっかー…………カエデは男の趣味以外はまともだし」


 ワインの空瓶をあいつの頭にぶん投げてーな。


「私は!? 私は!? 私も行きたいです!」


 ナナポンも行きたいらしい。


「ナナカ、悪いけど、君は無理。君だけは絶対に無理」


 俺もそう思う。


「なんでぇ!?」

「さすがに透視持ちは無理だよ…………」


 いくら窓のない地下の屋敷だろうが、ナナポンの透視の前では無意味だ。

 全部、見えてしまう。


「ガーン! 有能すぎて出禁になってしまった!」


 自分で言うな。


「おみやげを持ってきてあげるからさ」


 アルクがナナポンを慰める。


「ぐぬぬ。またお留守番…………」


 ナナポンは悔しそうだ。

 前回、連れていってやればよかったかな?

 でも、透視を持っていることがバレたら何をされたかわからんな。

 重要なことを知ってしまったら最悪は殺されていたかもしれん。

 俺とヨシノさんは知らぬ存ぜぬを通すが、ナナポンはさようならだ。

 さすがに可哀想。


「仕方がないでしょ。アルク、王様の用事を聞いておいて。行く日取りを決めるから」

「いつでもいいと思うよ」


 王様って暇なのかい?


「じゃあ、明日」

「明日はマズいね。まだ買い物を終えてない。冷凍ピザを買わないと」


 今日はクリスマスだからと思って、出前のピザを用意している。

 アルクはピザに大興奮していた。

 なお、王様にも送ったらしく、すぐに買ってこいと言われたらしい。


「じゃあ、いつならいいの?」

「明日、明後日は出かけるから…………3日後?」


 自信なさげだな。

 どんだけ買うつもりなのだろう?


「4日後にします。ヨシノさんとカエデちゃんもそれでいい?」

「私はもう仕事はないから大丈夫」

「私もですね」


 まあ、ヨシノさんはともかく、カエデちゃんはそうだろうね。

 暇そうにしてるもん。


「アルク、4日後ね。それまでに用意しなさい」

「買うものを絞らないと…………」


 アルクが悩みだす。


「どうせまだ滞在するんでしょ?」


 食っちゃ寝するんだろ。


「うん。君のオークションが終わるまではいるよ。まあ、たまには帰るし、それでいいでしょ」

「じゃあ、適当に買って帰りなさいよ。ところであなたの仕事はないの?」

「今、仕事中。フィーレの調査」


 ピザ食べながらオセロするのが仕事らしい。


「どうでもいいけど、本当に太るわよ。運動くらいしなさい」

「運動ねー……」

「剣術を教えてあげましょうか?」

「ボコボコにされそう……」


 子供にそんなことをするわけないだろ。

 俺はスパルタが嫌いなんだ。


「別に剣術じゃなくてもいいわよ」

「うーん、まあ、スキルや魔法を使ってるから大丈夫」


 ん?


「そうなの?」

「うん。魔法やスキルはエネルギーを使うからね」

「そういえば、MPとかがないわね……」


 俺の錬金術もナナポンの魔法もMPが足りなくて使えなくなったっていうことはない。


「MP? よくわからないけど、魔法やスキルを使うと疲れるだけだよ」

「じゃあ、私は錬金術を使って、アイテムを作っていれば、下っ腹が出ることはないわけ?」

「そうなんじゃない? 君はお酒を飲みすぎな気もするけど、摂取したエネルギー以上に消費してそうだから問題ないでしょ」


 ほうほう。

 良いことを聞いたぞ。


「私もスキルを使うか……」

「私も……」


 俺とアルクの話を聞いていたヨシノさんとカエデちゃんが神妙な顔で頷いた。


「ナナカさんも使っておきなさいよ。あなたはまだ若いけど、あっという間だからね」


 この前まで大学生だったのにあっという間にアラサーになってしまった。


「いつも透視を使っているんで大丈夫です」


 さすがはナナポン……

 むっつりストーカーだ。


「下の部屋は終わった?」

「ええ、さっき……!」


 ナナポンの顔が真っ赤に染まっていく。


 ほらね。

 オセロをしながら覗いてやがった。


本作の第2巻が来週の12月28日(木)に発売となります。

皆様の応援のおかげで2巻を出すことはできました。

この調子で3巻も出せるように頑張りたいと思いますので引き続き、応援して下さいますようお願い申し上げます。

買わない方もカリマリカさんが素晴らしい絵を描いてくださいましたので是非とも書影だけでも覗いてみてください。(↓にリンク)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】
宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

【新刊】
~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)

週末のんびり異世界冒険譚 1 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

~漫画~
廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 1 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【販売中】
~漫画~
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~(1)
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~(2)
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~(3)

~書籍~
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~(1)
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~(2)
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~(3)
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~(4)

【現在連載中の作品】
その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【漫画連載中】
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~
がうがうモンスター+
ニコニコ漫画

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~
カドコミ
ニコニコ漫画

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua
― 新着の感想 ―
[良い点] いや、眠り薬を飲まされてたこともあったのに本部長って。 クズなところが一貫していてよくぶれないなと思います。 [気になる点] 金だろうがなんだろうが、今はこのお話の中では円が強いんですよね…
[一言] (━_━)うーむ  王が買い物に医薬品や医学書を第一候補として挙げてないのは生体機能が違う別種の生物だからなのかな?  だとしても、ヒトと猿とか程度の差だったら、元は同種だったりするのか…
[一言] さすがの覗き魔
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ