第437話 推薦者
クリスさんを探していると、見えてきたのは集団に囲まれているアールジャックさんの姿。
背が高いこともあって、囲まれていてもすぐに発見できた。
声を掛けようか迷っていると、急に真横から声を掛けられた。
「佐藤さん、久しぶりじゃな」
「あっ、ガロさん。お久しぶりです。今回は模擬戦大会に参加して頂き、ありがとうございました」
視線が上に向いていたため、声をかけられるまでガロさんに気付かなかった。
「わしらこそ急に参加して悪かったのう。色々と大変じゃったろ?」
「そんなことありませんよ。お陰様で盛り上がっていますし、参加してもらえて良かったです」
「ふぉっふぉ。それなら安心したわい」
本当はめちゃくちゃ大変だったものの、話題性を考えたらありがたすぎることに間違いはない。
今もこうして、目立つアールジャックさんは囲まれているしね。
「ガロさんは1人でやってきたんですか?」
「いいや、アールジャックとスピンと一緒に来たんじゃ。酒場での一件以降、アールジャックとも酒を飲む関係になってな」
「へー。それで、ギナワノスの闘技大会組で来てくれたんですね。模擬戦大会での活躍も期待していますね」
「優勝を期待してくれ――と言いたいところじゃが、いやはや強敵揃いじゃな。特に酒造の近くにおった奴らは貫禄があったのう」
「酒造の近くですか? ……誰だろう。ちょっと気になるので見てきますね」
ガロさんの言う、貫禄のある方たちが気になってしまったため、会話も程々に切り上げ、酒造に行ってみることにした。
可能性としては、蓮さんたちか従魔の誰か。
最近進化ラッシュがあったこともあり、従魔たちの貫禄も凄まじいからね。
私は期待しながらやってきたんだけど……酒造の近くにいたのは見知らぬ方たちだった。
「あれ? 佐藤じゃない。こっちまで来たの?」
予選突破者でもなかったため誰だか分からなかったんだけど、立っていた2人の後ろからクリスさんが出てきたことで察した。
多分だけど、この2人はクリスさんの推薦者の方だと思う。
「クリスさん、おはようございます。ついさっき、酒造の方に貫禄のある方がいるという情報を聞いてやってきたんです。その方たちがクリスさんの推薦者さんですか?」
「そんな情報まで出回るのね。本当は試合開始まで隠しておきたかったんだけど……ええ、そうよ。この2人が私の推薦枠。イリマ、ミルキー、挨拶して。この方が総責任者の佐藤さん」
クリスさんに背中を押されて前へと出てきた2人。
素人の私から見ると、貫禄はないように見えてしまう。
「はじめまして。ワタクシはラックダーヴ法国からやってきました、ミルキーと申します」
「ボクはイリマ! 同じく法国からやってきたの!」
ミルキーと名乗った方は、貴族っぽい格式高い服装をしており、ド派手なお化粧を施している。
イリマと名乗った方は、140センチくらいの小柄な体格で、モコモコのパジャマのようなものを着ている。
ミルキーさんは厚すぎる化粧で、イリマさんは中性的な見た目をしているため、男性か女性かの判別がつかない。
まぁ日本ではジェンダーレスという言葉が広まりつつあったし、気にしない方がいいのだろう。
「ミルキーさん、イリマさん、はじめまして。佐藤と申します。今日はよろしくお願いしますね」
「こちらこそよろしくお願い致します。ワタクシの華麗な戦い方で楽しませてあげます」
「ボクもがんばるよー!」
「はい、期待しています」
ふわふわとした感じの2人に、穏やかな気持ちになる。
ガロさんは貫禄があると言っていたけど、まずは1回戦突破を目標に頑張ってもらいたいところだ。
「……ねぇ佐藤、何か失礼なことを考えていない? この2人は本当に実力者だからね。わざわざ私が他国から招致したのよ?」
「失礼なことなんて考えていませんよ。本気で期待していますので。それではまた後でよろしくお願いします」
図星を突かれてしまったため、私は早々に退散することにした。
見た目で判断してはいけないとは言われているけど、流石に難しいと思ってしまったなぁ。
とはいえ、全員応援することに変わりはない。
参加してくれたことが本当に嬉しいし、わざわざ隣国からやってきてくれたわけだしね。
私は来た道を戻り、他の参加者への挨拶回りを再開することにした。
挨拶回りを終え、いよいよ模擬戦大会本戦が始まる。
ルール説明と大会の賞品については事前に説明済みのため、さっそく1回戦が行われるようだ。
本当は開会式で盛り上げたかったものの、時間の都合上切らざるを得なかったのは致し方ない。
大会は参加者の方に試合で盛り上げてもらうとして、私はさっそく1回戦第1試合を観戦させてもらおう。





