第414話 力と力の戦い
自己紹介も済んだことだし、何があったのかを聞きたい。
「ゴさん、1つ質問してもよろしいでしょうか?」
「ん? なんだ? 何でも聞いていいぜ!」
「何か揉めていたように見えたんですが、何をしていたんでしょうか? 遠目からだと、リザードマンとの抗争が行われているのかと思いまして……」
「んー、抗争に向けた準備ってところだな! 指揮官を務めていたルーが怪我をしちまったから、その代わりとなる指揮官を武力で決めようとしていたんだわ!」
模擬戦大会のようなことをしていた、ということだろうか?
だとしたら、平和なのに揉めているように見えたのも納得。
「そうだったんですね。かなり激しく争っているように見えたので、巨人族の村に入るかどうか迷ったくらいでした」
「……主にヤトがごねてた」
「ガッハッハ! わりぃな! 戦いってことになると、いくら仲間だろうと負けたくねぇって思う奴が大勢いるからな! 本気でやってたら、とんでもなく盛り上がったって感じだ!」
「それなら良かったのじゃ! で、誰が優勝したのじゃ?」
「まだ決まってねぇよ! これから決勝戦が行われるんだが、見るか?」
「いいんですか? ぜひ見てみたいです」
「わらわも見たいのじゃ!」
「なら、案内するから広間まで来てくれ!」
ゴさんに案内され、巨人族が集まっている広間へとやってきた。
すさまじい熱気で、その中心には2人の男性が立っている。
おそらく輪の中心にいる人が勝ち残った者たち。
身長的にはゴさんより低いものの、アールジャックさんと同じかそれ以上の大きな体躯の2人だ。
「おーう! 待たせちまって悪かったなぁ! ヤト様たちも呼んできたから、もう決勝戦を始めようぜ! ボもラーも準備はいいかぁ?」
「いつでもいいぜぇ? 滾りっぱなしだからよぉ!?」
「私も大丈夫です! いつでも始めてくださーい!」
坊主の強面の方がボさん、サラサラ長髪の方がラーさんのようだ。
ゴさんのときから思っていたけど、巨人族は変わった名前の方が多い気がする。
名前は1文字が良い、みたいな美学があるのだろうか。
名前についてそんなことを考えていると、早速決勝戦が始まった。
初っ端から力と力のぶつかり合いで、太い棍棒がしなりながら鈍い音を立ててぶつかり合っている。
技術なんて一切ないド迫力の戦いに、呼吸を忘れるほど見入ってしまう。
「すごいのじゃ! 模擬戦大会とは様相が違うのう!」
「本当にすごいですね。棍棒の破片が飛び散ってますよ」
「……ターン制の戦いみたい。力比べに近い感じ?」
「我慢比べじゃないでしょうか?」
興奮する私とヤトさんに対し、少し冷めた目で見ているローゼさんとアシュロスさん。
確かに、実戦を想定した戦いというより、交互に殴り合う“肩パン対決”に近いかもしれない。
技量が影響しない分、素人の私が見ても非常に面白い。
棍棒で殴り、棍棒でガードし、また棍棒で殴る。
そんな熱い肉弾戦が続いていたのだが……勝負は唐突に幕を閉じた。
ボさんの一撃を受けたラーさんが肩を痛めたようで、次の攻撃が不発。
続くボさんの一撃を、痛めた肩をかばうように受けたことで、逆の腕も痛めてしまったらしい。
棍棒すら握れなくなり、膝をついたところで、ゴさんが勝者の名を告げた。
「ラー、戦闘不能! 今回の暫定指揮官決定戦の優勝者はボだ!」
「うおおおおおおおーーー!!」
ボさんの雄叫びに、観戦していた巨人族の面々も雄叫びを上げ、爆音と熱気の渦に包まれた。
模擬戦大会もギナワノスの武闘会もすごい盛り上がりだったけど、声量や個々人の熱気なら今回の方が上かもしれない。
「うわー、うるさいのじゃー! 耳がおかしくなる!」
「……うるさい」
「一度退避しましょう」
決勝戦しか見ていない私たちとでは熱量の差も大きく、テンションについていけない。
いったん広間を離れて、落ち着くのを待つことにした。
「すごい殴り合いでしたね。盛り上がりにも驚きました」
「本当にすごかったのじゃ! パワーだけならアシュロス以上じゃ!」
「『パワー』だけなら、ですが。戦ったら負けません」
「……私もあまり好みじゃない戦い方でした。面白みがなかったです」
やはり、アシュロスさんとローゼさんには刺さらなかった様子。
ライムの戦いはかなり興奮して見ていた記憶があるし、玄人なだけに変則的な戦い方のほうが好みなのだと思う。
「それで、この後はどうなるんですかね?」
「落ち着いたら、ゴが来ると思うのじゃ! それまで、勝手に村を見て回るのじゃ!」
「さすがにそれはまずいんじゃ……って、ヤトさん!?」
私が止める前に、ヤトさんは走り出していってしまった。
アシュロスさんとローゼさんは慣れっこのようで、少し呆れた様子ながらもついて行っている。
私も勝手に村を回っていいのか疑問に思いながら……ヤトさんを追って、巨人族の村のほうへ向かったのだった。





