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38歳社畜おっさんの巻き込まれ異世界生活~【異世界農業】なる神スキルを授かったので田舎でスローライフを送ります~  作者: 岡本剛也
第4章

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第407話 ふつつかもの


 クリスマスパーティーはその後、例年どおりにスマブラ大会が開かれた。

 経験者部門では、休み時間の大半をゲームに注ぎ込んでいたソアラとルナ、ルーチアさんを抑え、シーラさんが悲願の優勝を果たした。


 今大会は間違いなく過去最高レベルで、この世界にゲームが存在しないとは思えない腕前の方ばかり。

 そんな中で優勝したシーラさんは流石と言わざるを得ない。


 初心者部門では、サムさんが初参加で優勝。

 決勝のサムさん対クリスさんは、何とも言えない緊張感が漂ったものの、最後は握手で締めくくられ、こちらも見応えのある一戦だった。


 昨年の優勝者ヤトさんはというと、経験者部門に回されたことであっけなく敗退。

 優勝候補の風格で乗り込んだのに初戦負けだったため、負けてからは終始ぽかんとした表情のままだった。


 ボードゲーム部門では、昨年、無類の強さを見せたローゼさんが、まさかのクリスさんに手のひらで転がされていた。

 さすがに超がつく商人だけあって、クリスさんは心理戦が大得意のようで、まさに無双といった結果。


 そんなクリスさんが唯一苦戦したのが、まさかのヤトさん。

 裏表のない分かりやすい立ち回りが逆にやりづらかったようで、大富豪でいう“スペードの3”のような存在感があり、ヤトさんがクリスさんを翻弄する姿は見ていてとても面白かった。


 総合優勝は言うまでもなく、スマブラ初心者部門準優勝+ボードゲーム部門圧勝のクリスさん。

 2位は今年もシーラさんで、完全にシルバーコレクターと化している。


 やはりゲーム大会は大盛り上がりだし、参加人数が増えるほど、人読み的な要素も薄れて純粋に面白くなる。

 いずれ、ボードゲーム単独の大会も開きたいところだが……まずは普及するところから始めないと話にならないのがネック。


 クリスさんやサムさんのように飲み込みの早い人ばかりならいいんたけど、あの2人は間違いなくスペシャル枠。

 まずは『サトゥーイン』の宿泊客に無料でボードゲームを体験してもらい、ゆくゆくは大会につなげられたらいいなぁ。

 そんな夢を抱きながら、今年のクリスマスパーティーも大盛況・大好評のうちに幕を閉じた。



 ――そして、翌日。

 お祭り気分は残っているものの、いよいよ来週から新年度が始まる。


 気持ちを切り替えて、新年度に向けた準備をしなくてはいけない――とはいっても、やることは特にない。

 貯めていたNPの使い道はすでに決めてあり、スキル強化に全ベットする予定となっている。


 まずは畑の拡張、成長速度と品質の底上げはマスト。

 それから、購入できる種や苗のラインナップもそろそろ増やしたい。


 栽培は安定してきたけど、同じ作物ばかり育てていては飽きが来るし、NP効率の良い作物に出会うことができれば貯蓄ペースも上がるため、悪くない選択だと思う。

 一日100NPしか使っていないとはいえ、魔力量の上昇にもNPを割いてしまったぶん、私は働いて取り返さないといけないからね。


 ひとりで気合いを入れていると――。

 部屋から出てきたシーラさんがリビングに入ってきた。


「ん? 佐藤さん、どうしたんですか? なんだか今日はいつもより覇気がありますね」


 頭の中で気合いを入れていただけで、声に出したわけでもポーズを取ったわけでもない。

 それなのに心情を見抜かれてしまい、少しだけ恥ずかしい気持ちになる。


「そ、そうですかね? 来週からの新年度に向けて色々考えていたので、そのせいかもしれません」

「私はまだクリスマスパーティーの余韻に浸ってましたが……たしかに来週から新年度ですね! 一気に目が覚めました」

「シーラさんも楽しみにしてくれているなら良かったです」

「もちろん楽しみですよ。年々できることが増えていきますからね。最初が楽しさのピークだと思っていたのですが、毎日“楽しい”のピークを更新してます」


 笑顔でそう言ってくれるシーラさんに、私はいつも救われている。

 この世界に転移した日から、ずっと支え続けてくれたシーラさんには、感謝してもし切れない。


「シーラさん、本当にありがとうございます。私は、ポジティブなシーラさんにずっと助けられています」

「きゅ、急にどうしたんですか? 改まったお礼はやめてください! 新年度なのに、なんだか終わりみたいな空気ですよ?」

「はは、たしかにそうですね。これまでを振り返って、支えられっぱなしだったなぁと思って、ついお礼を口走ってしまいました」

「そもそも、感謝するのは私のほうです。くすぶっていた私に、こんな素晴らしい世界を見せてくれたのは佐藤さんですから。しかも、今もまだ夢の途中で、ワクワクしっぱなしです。私の生きている意味を教えてくださって、本当にありがとうございます」


 お返しと言わんばかりに面と向かって感謝を伝えられ、顔が一気に熱くなる。

 もちろん嬉しいんだけど、さすがに照れくさい。


「嬉しいですが……たしかに恥ずかしいですね。顔がすごく熱いです」

「ふふ、私の気持ちが分かってもらえました? お返しの気持ちもありますが、感謝の気持ちは本心です。佐藤さん、ふつつかものですがこれからもよろしくお願いします」

「こちらこそ、至らない点は多いと思いますが、これからもよろしくお願いします」


 なぜか結婚の挨拶みたいになり、お互い照れながら頭を下げ合った。

 朝から中々に恥ずかしかったけど、シーラさんとの絆を改めて確かめられた気がして、来週から始まる新年度がますます楽しみになったのだった。



ここまでお読み頂き、本当にありがとうございました!

第407話 みんなの笑顔 にて第6章が終わりました。


そして、皆様に作者からお願いがございます。

本作の第1巻が12/5に発売されております!

本作を少しでも応援したいという方がおられましたら、どうか書籍版をご購入頂けたら作者は泣いて喜びます!

web版の執筆モチベ向上につながりますので、何卒よろしくお願い致します<(_ _)>ペコ


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