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38歳社畜おっさんの巻き込まれ異世界生活~【異世界農業】なる神スキルを授かったので田舎でスローライフを送ります~  作者: 岡本剛也
第4章

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第404話 杖の種類


 私は店の奥からこちらを見ているシャノンさんに声をかけた。


「シャノンさん、お時間があるなら杖について――」

「もちろんいいですよ! 私が分かりやすく教えてあげます!」


 食い気味の返事とともに、早足でこちらへやって来てくれた。

 なんとなく察してはいたけど、好きな分野になると語りたくなる――いわゆるオタク気質に近い感じだと思う。

 まぁシャノンさんは仕事だし、同列に語るのは失礼かもしれないけどね。


「ありがとうございます。魔法を扱いやすい杖はどれなんしょうか? 杖ごとの違いも教えてほしいです」

「任せてください! 杖は大きくなるほど、魔法を扱いやすくなると言われています! なので、扱いやすさだけで選ぶならロッドがおすすめですね!」

「なるほど……。ちなみにロッドのデメリットはあるんですか?」

「大きいぶん動きにくくなることと、値段が高いことです! ロッドは魔法を扱いやすくするために魔石などの装飾が施されているので、スタッフと比べてもだいたい5倍以上は高いですね!」


 言われて値札を確認すると、確かにロッドは群を抜いて高価だ。

 白金貨100枚というものまであるし、ロッドはお金に余裕がある人向けなのかもしれない。


「なるほど。小さくなるほど動きやすくはなるけど、その分扱いやすさは落ちる……ということですね」

「その通りです! ダンジョン攻略をする魔導士は、基本的にワンドを使っています。スタッフは、悪く言えば中途半端で、人気は1番低いかもしれません!」


 詳しく聞けば聞くほど悩ましい。

 将来的にはダンジョンにも挑みたいけれど、まずは魔法をしっかり扱えるようになるのが先。


 そう考えると……スタッフかロッド。

 とはいえ、この“魔法熱”がいつ冷めるか分からない。

 値段の安いスタッフにして様子を見るのが無難かな。


「詳しい説明をありがとうございました。人気は低いと聞きましたが、今回はスタッフを買おうと思います」

「えっ? ロッドじゃなくていいんですか? お金は心配いらなさそうですし、ロッドでもいいと思いますよ」

「ロッドを買って熱が冷めたらもったいないですから。素手でもある程度形になっていた気がしますし、まずはスタッフにしたいと思います。もし続けられそうなら、改めてロッドを買いに来ます」

「いいと思いますよ! 金銭面ではおすすめしやすいですしね!」

「ちなみに、スタッフの中でおすすめはありますか?」


 ここまで来たら、有識者であるシャノンさんに頼るのが早い。


「手前にあるシンプルな作りのものは、最安値のわりにきちんとしていて、コスパは1番です! それから、奥の黒いスタッフは1番人気。少しお高めですが高スペックです! ほかは……属性ごとにおすすめが変わりますね。主に火属性ならレリック製、水ならカラーバー材質がおすすめで――」


 だんだん早口になっていき、最後の方は聞き慣れない単語も混ざって、正直ついていけない。

 まだ得意属性も分からない段階だし、ここはコスパか人気のどちらかで選ぼう。


 ロッドより安いとはいえ、最安値でも金貨3枚と十分に高い。

 1番人気は白金貨1枚。値段だけで見るなら最安値だけど――。


「詳しい説明をありがとうございました。長々と教えていただいておいて何ですが……こちらの最安値の方でもいいですか?」

「えっ? 最安値でいいんですか? せっかくなら1番人気を買いましょう。お金には余裕があるんですし」

「でも、続けられなかったらもったいないので」

「そのときはモージかヘレナにあげればいいだけです。シャノンさん、こっちの1番人気のスタッフをお願いします」

「ありがとうございます! 帰り道に傷がつかないよう、しっかり梱包しますね!」


 私が異議を唱える間もなく、シャノンさんは1番人気のスタッフを抱えて奥へ消えた。


「魔法をろくに使えない初心者が、1番人気のスタッフなんて使っていいんでしょうか?」

「もちろんです。何事も形から入るのが大事ですから。ささ、他の商品も見ていきましょう」


 このあと、スタッフの手入れ道具と魔力ポーションも購入して、“魔導士入門セット”が揃った。

  本当にこれで良かったのかという不安もあるけど……それ以上にワクワクが勝っている。


 私はゴルフはやってこなかったけど、新しいクラブを買ったときの高揚感は、きっとこんな感じなんだろう。

 浮き立つ気持ちのまま『マジックキャビネット』を出て、来るときに見かけたパン屋で遅めの朝食を取り、大通りで買い物をしてから別荘へ戻ったのだった。



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