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38歳社畜おっさんの巻き込まれ異世界生活~【異世界農業】なる神スキルを授かったので田舎でスローライフを送ります~  作者: 岡本剛也
第4章

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第402話 冬明け


 ヤトさんとアシュロスさんからスペルリングの使い方を習ってから、約3ヵ月が経った。

 冬の間は基本的には暇だったものの、魔法の練習のお陰で退屈せずに過ごせたと思う。


 とはいえ、魔法を扱える時間が少ないこともあり、基本的には魔力操作の練習が中心だった。

 シーラさんからの許しも貰えたとはいえ、結局この3ヵ月間で端数だった6200NPを費やしてしまったし、自分では抑えていたつもりでも、トータルで見ると結構な出費になってしまったと思う。


「あっ、佐藤さん。おはようございます。外を見てください。カラッとした気持ちの良い天気ですよ」

「シーラさん、おはようございます。今年は冬が明けるのが早かったですね。雪も残っていませんし、この天気ならもう農業を再開できそうです」

「えっ! それでは今日から始めますか!?」

「いやいや、始めませんよ。まだ冬休み期間でもありますし、5日後のクリスマスパーティーを終えてから本格的に再開する予定です」

「そうですか……。残念です」


 農業を始めるかもしれないと聞いて目を輝かせ、始めないと知ってしょんぼりするシーラさん。

 農業を好きになってくれたのは嬉しいけど、少し気が逸りすぎだと思う。


「近いうちに始まりますし、今は休日を楽しんでください」

「もう十分休みは満喫しましたからね。休みだからといって特別やれることがあるわけでもありませんし、冬は好きではありません」

「もう雪が解けていますし、遠出をしてもいいんじゃないでしょうか?」

「えっ!? 佐藤さんも一緒に行きますか?」

「いえ、私はちょっと今日は用事がありまして……すみません」

「なら、私も行きません」


 少し拗ねた様子のシーラさん。

 拗ねた表情を見て、こんなことを思うのは申し訳ない気もするけど、最近は色々な表情が見られるようになって嬉しい。


「それでは明日からはどうですか? 今日はジョルジュさんと一緒に酒蔵に行かないといけないんですが、明日は何もありませんので」

「明日ですか? もちろん行きたいです!」

「それでは明日、どこかに行きましょうか」

「はい! 佐藤さん、ありがとうございます。一気に休日が楽しくなりました」

「私も同じ気持ちですので、お礼はいりません」


 ということで、冬休み最後の遠出が急遽決まった。

 クリスマスパーティーの準備もしなくてはいけないため日帰りになると思うけど、非常に楽しみだ。



 翌日の早朝。

 シーラさんが早めに出発したいとのことで、私もいつもより早く起床して準備を終わらせた。

 部屋を出ると、既にシーラさんがリビングでスタンバイしているのが見える。


「シーラさん、おはようございます。待たせてしまいましたか?」

「いえ、ちょうど準備が終わったところです。佐藤さんも準備は終わっていますか?」

「はい。いつでも出発できますよ」

「それでは早速行きましょうか?」


 皆を起こさないよう静かに移動し、別荘を出発。辺りはまだ暗い中、アッシュの馬車に乗って出た。


「久しぶりの二人旅ですね。目的地は決めてあるんですか?」

「はい。まずはランゾーレの街に行きたいと思っています」

「ということは、『マジックキャビネット』に行くんでしょうか?」

「そういうことになります。佐藤さんが魔法にハマったと聞いてから、ずっとランゾーレに行きたいと思っていましたし、目線も変わっていると思うので、きっと楽しいですよ」


 行き先もすべてシーラさん任せだっただけに、ランゾーレと分かってすごく嬉しい。

 近々行きたいと思っていたし、シャノンさんにも挨拶したかったからね。


 ダンジョン攻略の話を聞きながら、馬車に揺られること約3時間。

 早朝に出発したこともあって、朝のうちにランゾーレの街へ到着した。


「久しぶりですが、あまり変わっていませんね」

「ふふ、街なんてそうそう変わるものじゃないですよ。それより、人が少ないのがいいですね」

「冬明けだからでしょうか? 確かに人が少ないですね」


 入城検査待ちの馬車は1台もなく、転移者の特権を使わずともすぐに入門検査を受けられた。

 危険物の持ち込みもしていないため、すぐに通され、アッシュには待機してもらって『マジックキャビネット』へ向かう。


「まだ朝ですからね。お店は開いているか不安です」

「開いていなかったら朝ご飯にしましょう。朝食は食べていないので、お腹が空いてきました」

「あっ、私もです。佐藤さん、ナイスアイデアです」


 シーラさんもお腹が空いていたようで、ルンルン気分で朝食が食べられる店を探し始めた。

 喫茶店がいくつか開いているのを見かける中、行列のできているパン屋さんを発見。


「あのパン屋さんから良い匂いがしますね。あそこにしますか?」

「いいと思います! ……とはいえ、まずは『マジックキャビネット』からですよね?」

「私はどちらでもいいですよ? シーラさんは今すぐにご飯にしたいですか?」

「……い、いいえ。まずはオープンしているか確認しに行きましょう。開店したばかりのほうが、シャノンさんの迷惑にもならないと思いますからね」


 シーラさんのお腹が小さく鳴ったことに気づいたものの、女性にとって恥ずかしいであろう部分に触れる勇気はなく、黙って決定に従うことにした。

 先に朝食の方がいいのではないかと、『マジックキャビネット』へ向かいながらも思ってしまうけど……まだオープン前であることを願うしかなさそうだ。



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