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38歳社畜おっさんの巻き込まれ異世界生活~【異世界農業】なる神スキルを授かったので田舎でスローライフを送ります~  作者: 岡本剛也
第4章

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第401話 能力強化


 シーラさんの許可は取りたいところだけど、今はダンジョン攻略に行っているからなぁ。

 まぁ、シーラさんは絶対に怒らないだろうけど。


「どんどんは注ぎ込めません。冬は長いですし、春に使う分も貯めていますからね」

「ですが、少しくらいなら大丈夫なのではないでしょうか? 少しで魔法を使えるようになるかは分かりませんが、試してみる価値はあると思います」

「アシュロスの言う通りじゃな! 試してみるのは悪いことではないのじゃ!」

「うーん……。分かりました。本当に少しだけ能力を上げてみます」

「やったのじゃー! ワクワク!」


 ヤトさんが能力強化を見たいだけのような気もしてきたけど、アシュロスさんまで同じ表情をしている。

 冷静なシーラさんがいれば止めてくれたかもしれないけど……かくいう私も、能力を上げてみたい気持ちはある。


 ということで、とりあえず魔法力を1だけ上げてみることにした。

 他のものを買う時と同じように、魔法力をポチり。


 よし。100NP消費されたし、これで購入はできたはず。

 ――ただ、何も変化していないため、実感は一切ない。

 反映されているのかどうかすら、私にも分からない。


「買いましたので、これで能力が上がっている……と思います」

「ほえ? もう終わったのかのう! なーんにも変わっておらんのじゃ!」

「まぁ魔法力が1から2に上がっただけですからね。倍にはなっていますが、大した変化ではないと思います」

「変化がないのはつまらんのじゃ! せめて10まで上げてみてほしいのじゃ!」


 一瞬悩んだものの、10までなら問題ないと判断して、私は魔法力をさらに8上昇させた。

 必要NPは変わらず100で、10に上がった今も100のまま。


 てっきり値段が上がっていくと思っていたけど、もしかしたら100で固定なのかもしれない。

 まぁ初期能力が低すぎるから、ある程度まで上がったら高くなる可能性は十分にあるけどね。


「これで一応10までは上がったと思います。微差かもしれませんが、先ほどの10倍にはなっているはずですので……」


 そこまで言ったところで、先ほどは数秒で気絶したわけだし、10倍になっても1分持たないのでは、という発想に行き着く。

 ここまで来たのなら、せめて1分は持たせたいという欲が出てきてしまった。


「すみません。もう10だけ上げます」

「急にどうしたのじゃ!?」


 ヤトさんが焦っているのを横目に、私はさらに魔法力を10上昇させた。

 これで2000NPを使ってしまったことになるけど、まぁまだ許容範囲内だと思う。


「佐藤さん、大丈夫でしょうか?」

「はい。これでちょっと試してもいいですか? 気絶してしまったら助けてください」

「もちろん! わらわに任せるのじゃ!」


 ヤトさんの頼もしい返事を聞いてから、私は先ほどと同じ要領で魔力を使ってみることにした。

 数秒とはいえ、なんとなくのコツは掴んだため、今回はあっさりと魔力を集めることに成功。


「魔力が右手に集まったと思います。ここからどうしたらいいのでしょうか?」

「まずは“熱さ”をイメージしてください。具体的であればあるほど良いです」


 アシュロスさんに言われた通り、右手に熱をイメージする。

 イメージを重ねるほど、生ぬるかった感覚が徐々に熱を帯びていくのが分かる。


 手で触れられないほどの熱さになったところで、私はそのまま“火”を連想した。

 すると、右手の人差し指の先から、小さいながらも火が灯る。


「おおー! 佐藤、凄いのじゃ! 魔法を使えておるぞ!」

「こ、これが魔法なんですね……!」


 自分の体から火が出ている恐怖はあるけど、それ以上に楽しさと高揚感に包まれる。

 ついこのまま火球を作り、『ファイアボール』を唱えそうになったけど、ここが別荘内だと思い出し、火のイメージを止めた。


「素晴らしいですね。まさか一発で形になるとは思いませんでした」

「佐藤は魔法の才能があると思うのじゃ! 今回は魔力切れも起こしておらんしな!」

「才能があるなら嬉しいんですけど……疲れが凄まじいです」


 魔力切れは起こさなかったものの、精神的な疲労がすごい。

 あのまま『ファイアボール』まで行っていたら、確実に気絶していただろうし、単純な魔法力不足はやはり否めないなぁ。


「毎日練習すれば、きっと安定して使えるようになりますよ」

「魔法力も毎日ちょっとずつ上げていけば、シーラにもバレないじゃろ! ぬっふっふ、スペルリングが役に立って良かったのじゃ!」

「ヤトさん、アシュロスさん。魔法練習を手伝って頂き、ありがとうございました。とても有意義でしたし、何より楽しかったです」


 私は2人に頭を下げてお礼を言い、疲労回復のため自室で休むことにした。

 魔法は絶対に扱えないと思っていただけに、こうして希望が見えただけでも本当に嬉しい。


 魔法が使えれば、またダンジョン攻略にも参加できるかもしれないからね。

 私は清々しい気持ちで、一眠りすることにしたのだった。



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