表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38歳社畜おっさんの巻き込まれ異世界生活~【異世界農業】なる神スキルを授かったので田舎でスローライフを送ります~  作者: 岡本剛也
第4章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

409/424

第394話 悪役


 意識を失ったスピンさんはすぐに担架で運び出され、勝者であるガロさんは歓声を浴びながら、ゆっくりと控室へ戻っていった。


「ガロさん、強いですね。相手の力を最大限に利用した戦い方……感服の一言です」

「避け主体で勝ち上がってきた中で、最速の攻撃だからな。対戦相手は不運だったと言わざるを得ない」


 ルーアさんの言葉に、みんなが同意してうなずく。

 そして、次はいよいよライムの登場。


 アールジャックさんも底を見せていないため、非常に怖い一戦。

 会場の雰囲気的にも、アールジャックさん対ガロさんを見たい空気がビンビンで、ライムがヒールのような立ち位置になってしまっている。


 私が不安を覚える中、姿を現したライムは普段と変わらない様子。

 ポヨンポヨンと跳ね、実に楽しそうだ。


「いつもと変わらないライムがすごいです! 僕なら緊張でガッチガチになりますよ!」

「それはジョエルが甘ちゃんだから――と言いたいところだけど、私も緊張はしそうな場面だね。会場の雰囲気が嫌すぎる」


 ライムの登場にもかかわらず、応援の声量はアールジャックさんのほうが大きい。

 そしてアールジャックさんが姿を見せた途端、会場が割れんばかりの大歓声に包まれた。


「すごい歓声。これ、アールジャックも嫌なんじゃないの?」

「普通の人なら影響が出そうですね。ただ、もう慣れていると思いますよ」


 シーラさんの言う通り、片手を上げて堂々と歩いている。

 緊張しているようにも見えないし、ライムもアールジャックさんもメンタルが強すぎる。


 互いに定位置につき、すぐに試合が始まるようだ。

 私の心の準備が整わないまま――審判が試合開始の合図を告げた。


 先に動いたのはライムだったが、体を引き伸ばした状態での待機。

 アールジャックさんは開始地点から一歩も動かず、互いに出方待ちの状態。


 時間にしたら数秒だろうけど、長い沈黙に感じる。

 私が生唾を飲み込んだタイミングで、アールジャックさんが動き――出したのと同時に、ライムがぶっ飛んでいった。


 金色の体があっという間にアールジャックさんへ衝突。

 バチンという物凄い衝撃音が響いたものの、なんとアールジャックさんはライムを受け止めていた。


 両手で抱え込むようにして捕まったライム。

 一見ピンチにも見えるが、ゼロ距離のため攻撃へ転じるのは意外と難しいと思う。


 予想通り、抱えたライムを思い切り地面へ投げつけたものの、叩きつけられる直前にライムは硬化を解いて、スライムボディへ戻した。

 ボールのようにポヨンポヨンと転がりはしたが、ダメージはほとんどないように見受けられる。


 対するアールジャックさんは、真正面から突進を受けたためか体が赤くなっており、鼻からも軽い出血をしていた。

 投げ飛ばされたライムはすぐ体勢を立て直し、攻撃が有効と見て再び体を引き伸ばし始める。


「やっぱりライムってすごいですね。まだ序盤ですが、絶対王者を押していますよ」

「体の硬さを自由に変えられるのって強いですね。あの攻撃方法を教えたのって、ベルベット様ですよね?」


 初耳の情報に驚く。

 てっきり自分で考えついたのかと思っていた。


「ええ。マンガを見て、私がライムに教えたの。あれは……スラスラのピストルってところね」


 ドヤ顔で言い切るベルベットさん。

 確かに似ているが、まさか海賊漫画の技をもろパクリしていたとは思わなかった。


「そんな背景があったんですか。言われてみれば似ていますね」

「ちなみにだけど、他の技も教えてあるわよ。ライムが使えるかは分からないけど」


 違う技が出るかどうかも見どころになりそう。

 そんな話をしている間に、ライムは再び突撃。


 アールジャックさんは距離を取り対策してきたものの、またしてもバチンという強い衝撃音。

 コロッセウムという場所の性質上、距離を取るにも限界がある。


 本来はアールジャックさんの庭のはずなのに、ライムが有利に思えてきた。

 ただ、二度目もしっかり受け止めており、次はアールジャックさんの攻撃ターン。


 投げ飛ばしが薄いと分かったはずなので、次はどんな攻撃かと見ていたところ――

 捕まれていたライムの体が、急に膨張した。


 抱えきれなくなり、アールジャックさんはライムを手放す。

 至近距離で再びチャンスを得たライムは、体を硬化させたのち、回転しながらの体当たりをぶちかました。


 回転で威力は上がったが至近距離だったため、威力自体はそこまで高くなさそうだと思ったんだけど――それでもこの攻撃。受け止められず、アールジャックさんは軽く吹き飛ばされた。

 圧倒的なライムペースに、先ほどまで大盛り上がりだった会場が静まり始め、その空気を受けて、ライムがドヤ顔しているように私の目には映った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  ▼▼▼ 画像をクリックすると、販売サイトに飛びます! ▼▼▼  
表紙絵
  ▲▲▲ 画像をクリックすると、販売サイトに飛びます! ▲▲▲ 
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ